多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N

畠中恵『わが殿』(上下巻)

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★内容紹介
・舞台は天保年間の越前、大野藩。藩主・土井利忠納める大野藩は赤字財政に苦しんでおり、歳入が1万2千両のところ、借金は9万両。利息が毎年1万両。参勤交代の費用すら賄えないという超赤字。
・この財政立て直しを命じられたのが、内山七郎右衛門という藩士。破綻寸前の藩の財政を立て直しただけでなく、黒字にしてみせた史実をもとにした物語。
★読みどころ1)どうやって赤字を埋めていったか?
まず藩が持つ銅山の再開発。新しい鉱脈が見つかれば一気に収入が増えるので、半ば博打で幕府からさらに3万両を借りて再開発に挑み、見事優良な鉱脈を引き当てる。ところが江戸での火災や、藩主が学校や病院、洋式軍隊が欲しいなどと言い出し、次々と物入りに。そのひとつひとつを、七郎右衛門は知恵で乗り切る。特にすごいのは、大野藩の特産品の直営店を大坂に作ったこと。藩士が自ら商売に乗り出し、それを成功させて大坂以外にも直営店を増やしていく。
★読みどころ2)そんな七郎右衛門が命を狙われるはめに
七郎右衛門はその手腕でどんどん出世するが、すると周囲から嫌味や嫌がらせ、ついには命を狙われるようになる。理由は出世へのやっかみだけではない。軍備が洋式になったこと、藩の若者が藩校で蘭学を学んでいること、家柄ではなく才能で登用されるようになったことなどの、時代の変化に対する反発が、七郎右衛門に向かった。何かが変化するときにどうしても生まれる軋みと、それにどう対応するのかが、この物語の最大のテーマ。
★読みどころ3)ほっこりする読み心地
もともとほっこり系の作品が多い著者。厳しいテーマでも過剰にシリアスにならずコミカルに綴っているので、読み心地がいい。赤字対策の痛快なアイディアはもちろん、時代に乗れるものと乗れないものの心情を細やかに綴りつつも、後味のいい物語。

畠中恵『わが殿』
文藝春秋から上下巻それぞれ1540円で販売中です。
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