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葉真中顕『ブルー』

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★内容紹介
・書き出しの「平成が始まった日に生まれ、終わった日に死んだ」人物はのちに殺人犯になる。
・物語の最初の舞台は平成15年。東京で一家五人惨殺事件が起きる。だがそのうち風呂場で死んでいた三十代の次女だけは外傷がなく、覚醒剤の多量摂取による死亡と判明。この次女が他の家族を殺したことは間違いないと思われた。ところが現場には、共犯者の痕跡があった。
・さらに物語の中盤で、平成31年に起きた別の殺人事件が描かれる。平成元年に生まれた男の生い立ちと、15年の一家殺害事件、そして31年の殺人事件が一本の糸で結ばれる──という犯罪小説。

★読みどころ1)平成の風俗史になっている。
時代が行き来しながら平成初期から末期まで語られるため、その場面ごとに時代のわかる描写が多い。たとえば15年の殺人現場には『世界にひとつだけの花』のCDがあったり、その家の子供のゲームボーイアドバンスがあったり。それより前だと、千葉の人工スキー場ザウスに行った話や、コギャルとか、たまごっちとか、2度の震災や仮設住宅、リーマンショックといった言葉、雑誌の名前やテレビ番組、ヒット曲などの具体的な名前がたくさん出てきて、その時代が浮かび上がる。

★読みどころ2)平成の社会事件史になっている。
文化風俗だけではなく、この「平成とともに生まれて死んだ男」がどうして殺人者になっていったのかを追う過程に、平成の社会問題が登場する。 特に大きいのが児童虐待、女子高生ビジネス、子どもの貧困、生活格差、外国人労働者の人権侵害といった問題。平成になって特にクローズアップされたこれらの問題が、ひとりの男を殺人者にしてしまったという流れ。
・二転三転する事件と意外な結末という犯罪小説としてもとても面白いが、平成という時代を俯瞰することで、あの時代から私たちは何を学ばなくてはならないのかを再確認させてくれる物語。

葉真中顕『ブルー』
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