ドラ魂キング

CBC宮部アナが回想・あの落合博満が興奮した夜

CBCラジオ『ドラ魂KING』で水曜MCを担当している、宮部和裕アナウンサー。

今年6月、実況アナと解説者という立場でタッグを組んだのはあの三冠王・落合博満さんでした。

その落合さんがドラ戦士だった頃、プロ野球史に残るほどのインパクトの強いエピソードを、宮部アナが回想し、自らペンを執りました。

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巨人・斎藤の夢を砕いたサヨナラ弾

「打ったのは、真ん中ストレート」

巨人斎藤雅樹投手のノーヒットノーラン達成の夢を打ち砕く、サヨナラ3ランホームランを放った落合博満選手のお立ち台での言葉です。

1989年8月12日、灼熱のナゴヤ球場でのナイトゲームは、速いテンポで試合が進み、3対0で巨人リードの土壇場9回裏ワンアウト、大記録まであとアウト2つ。打席には、音重鎮選手。

「代打の音、内角を打ったー、ライト線、初ヒットになった!」

これで試合の流れが変わります。川又選手が四球、仁村徹選手にタイムリーが出て、斎藤投手は、もはや別人。
打席には、4番落合選手。

「二球目を打った、打球はセンターへ、クロマティー下がる、見上げた、入ったホームラーン、落合、第20号、サヨナラ逆転のスリーラン!」
 

珍しく興奮した落合選手

斎藤投手にとっては、まさに天国から地獄。
ただ彼は、この年すでに15勝2敗という抜群の成績、この悪夢があっても、シーズン20勝を挙げたということからも、この試合の駆け引きの凄さが思い出されます。

実は、この超一流同士の土壇場対決には、伏線がありました。

この日の二打席は、斎藤投手の速球にいずれもポップフライ。それを踏まえ、中尾捕手は最後の打席でも、速球で押せるという狙いがあったそうです。

そこで投じられたのが、落合選手自身が語るこの言葉。

「真ん中真っ直ぐ。斎藤のストレートはいつもより速かったけど、そんなに合わないわけじゃなかった」

いつもより饒舌な殊勲の落合選手、珍しく興奮を露わに。
そもそも、あれだけ多くの活躍の彼が、ヒーローインタビューに応じること自体が希少だったのです。
 

「真ん中真っ直ぐ」という言葉選び

当時、落合選手は試合中のホームラン談話やシーズンオフのインタビューなど、いつ何時も「真ん中真っ直ぐ」というコメントを繰り返しました。

本音を明かさず、次の対戦への材料にさせたくないという駆け引きです。
安売りして何の得があろうか…これぞプロフェッショナルの神髄です。

この駆け引き、投手と打者の間の取り合いについて、11月28日放送の『ドラ魂KING』のコーナー「憲伸流、プロ野球観戦術」で、野球解説者の川上憲伸さんに伝授いただきました。

川上「一流のピッチャーは、自分の間を持っている。岩瀬さんならマウンドの周りで汗を拭ったり、ロジンバッグに触れたり。山本昌さんなら、身体のいろんな部分をペロペロ舐めながら。

スタンド観戦されるとわかるのは、しぐさで言うなら、気合入り過ぎてきてるなあと感じるのは、前のめりになってきて、マウンドより前に出てボールを受け取る姿、ちょっと弱気になってるなあというのは、投手板の後ろでボールをもらい始める」
 

一流同士の駆け引き

じゃあ逆に、この投手は自分のペースに入ってきたなあと見えるのは? 

川上「それは、マウンドから後ろを振り向いて、野手に向かって指差し確認をジェスチャー付きでやりだすと、その投手はもう、試合を牛耳ってますね。王様の域です。

それと、間というのは、例えば打者の一本足のタイミングを崩すため、モーションに変化をつけてやろうなどというのとは違います。はっきり言って、一流選手はやりません。B級投手です。

一流同士の対決とは、動きの駆け引きではありません。お互い、餌まきといいますか、ウソに付き合う、読み合うのが醍醐味です。内角へ行くぞと見せかける仕掛け、ボクなら外角カットボールがあるといっても、そのまま一流打者に投げたら、カポーンといかれちゃいます。そこに投げそうで投げない面白さなんです」

駆け引きの妙ですね。

 

星野仙一さんの「持っていけ」

そして、スタジオで聴き入ったと言えば「ドラ魂インサイドストーリー」です。
ドラゴンズを支える裏方さんに話をうかがうこのコーナーでは、一軍用具担当、平沼定晴さんの続編。

サダさんは、世紀のトレードあり、死球をめぐり清原選手とのやりとりあり、打撃投手として中日復帰ありと、プロ野球に関わって35年というチームの兄貴分。

今回は、あの星野仙一さんが「これ、持って行け」と自身の引退試合で履いたスパイクを受け取った、というナゴヤ球場の風呂場でのやりとり。

「自分が履いた方が、星野さんに喜ばれるのでは」と次の日の試合で着用したところ、コーチに怒鳴られたというくだり。
それならばと平沼さんは、スパイク側面の星野という名前の刺繍をほどいて、ばれないように履き続けたそうです。

現在は、奥さまの実家に飾ってあるという刺繍穴で分かる星野の文字入りスパイク、貴重です。

実は憲伸さんにも、新人で初勝利、初完封の時に二度、星野監督からいただいた品があるそうです。
監督室に呼ばれると「好きなの持っていけ」と言う星野さん。
机上に目をやると、ずらりと並んだ高級腕時計。

『ありがとうございます!』と迷う間もなく思わず手に取った品、こちらも家宝ですね。
(CBCアナウンサー・宮部和裕)
 
 
CBCラジオ「ドラ魂キング」(毎週水曜午後6時放送)ほか、ドラゴンズ戦・ボクシング・ラグビーなどテレビ・ラジオのスポーツ中継担当。
生粋の元少年ドラゴンズ会員。
山本昌ノーヒットノーランや岩瀬の最多記録の実況に巡り合う強運。早大アナウンス研究会仕込みの体当たりで、6度目の優勝ビール掛け中継を願う。
 
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2018年11月28日18時32分~抜粋

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