健康ライブラリー 2017年12月31日

健康ライブラリー / ライフ・ヘルスケア

●教えてドクター 

★12月のテーマ「介護予防・・・たかが転倒されど転倒」  

名古屋大学医学部附属病院 地域包括医療連携センター 病院講師 
名古屋逓信病院 老年内科  
廣瀨 貴久 先生  
  
 転倒に関して予防法はたくさんありますが、結局一つだけの予防法ではいけません。総合的にアプローチしていくというのが転倒予防の特徴であります。まず一番に浮かぶのは栄養と運動です。適切に運動することによって歩行能力を高めたり、バランス能力を高めたりすることがいわゆるフレイル(虚弱)高齢者でも可能になっています。日頃から栄養不足に気を付けて、筋肉を効率的につけるような状況をつくり、運動して筋力を高めることが大切です。そうすることで下半身が安定して転倒しにくくなるフレイルを克服した体を手に入れることができます。また、歩くときは少し速足で歩く方が体全体の能力の上昇にはいいと言われています。それから、ふらつきを助長する薬を服用していないか、本人だけでなく周囲の人も注意することも大切です。さらに今回は詳しくは触れませんでしたが、総合的なアプローチの一つとして万が一転んでしまっても、折れない骨を持っておくということも非常に重要なことになります。骨粗鬆症対策もしてください。そして、転ばないための体作りも大切ですが、転倒しない環境つくりも重要です。実は転びやすい場所は大体決まっています。まずは庭です。庭を含め家の周囲に出て転んでしまうことを実臨床でもよく経験します。ある日、患者さんの家族が「この前、旦那さんが外へ出て行って転んで帰ってきました。」と言われるので「どこで転んだの?」と聞くと「すぐそこの庭」と言われました。内閣府の「平成22年度高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果」でも、転倒が多い場所は、庭が圧倒的に多く、次いで居間・リビング、玄関・ポーチ、階段、寝室と生活上多くの時間を過ごす場所が多くなっていました。これらの場所に対して危ないという自覚を持っていただいて、伝えることが転倒予防の啓蒙に役立つと思います。また、少しの段差につまずきやすいというのが、フレイル高齢者の特徴でもありますので、段差をなるべくなくすことや部屋の整理整頓なども気をつけていく一つのポイントとなります。最後に、体の元気と共に鬱等お年寄りがなりやすい心の落ち込みも含めて、トータルにサポートしてあげることで食欲も出て運動する気もおこります。そうすることでフレイルを脱する生活ができていくのではないかと思います。

●医療コラム ~イギリスで見た超高齢社会への取り組み

論説室 後藤 克幸

大晦日の放送ということで「スマイルリポート」はお休みして、今回は、一年を振り返って「医療コラム」をお届けします。 
今年の10月、私は、イギリス北部のアバディーン市という街を取材しました。人口23万人。認知症のお年寄りの支援センターなどを訪問したほか、介護のさまざまなプログラムを提供するケア施設のリーダーとの情報交換にも参加しました。 
急速に進む「超高齢社会」は日本だけの問題ではありません。 
イギリスも日本とたいへんよく似た状況の中、お年寄りの健康を支えるさまざまな取り組みが進められています。日本と共通する悩みもあれば、日本とは違った取り組みもありました。 

12月のテーマ「介護予防・・・たかが転倒されど転倒」 

◆イギリスの医療現場を取材?今なぜ? 

65歳以上のお年寄りが人口に占める割合が今後急速に増加。住み慣れた地域で楽しく過ごせる地域医療の仕組みづくりが重要課題に・・・これは、日本もイギリスも共によく似た状況に直面しています。 
また、医療制度の面でも、民間保険で格差社会が深刻なアメリカとは違って、イギリスの医療は、NHS(ナショナル・ヘルス・サービス)という国の機関が運営していて、国民皆保険で国の税金も投入されている日本の医療とよく似ています。日本の医療の今後を考える上で、共通課題が多く参考になることも多いのです。 

◆「病院」中心の医療から、「地域」中心の医療へ・・・ 
従来の医療は、病気になったりケガをしたりして「患者」になって初めて「病院」に行く医療でした。しかし、超高齢社会の医療は、年をとっても「住み慣れた地域」で健やかな暮らしを続けたいと願う人たちを支える医療がとても重要になってきます。具体的には、病気の予防や生活習慣の改善が重要な医療分野になります。病気やケガをした「患者」だけでなく「健康人」も医療の重要な参加者というわけです。 
イギリスでは、身近な街の中の薬局で、さまざまな医療サービスが受けられる仕組みになっています。例えば、アバディーン市のショッピングモールの中にある薬局で、NHS(ナショナル・ヘルスサービス)が推奨している禁煙外来の指導が受けられます。また、生活習慣病の代表格である「糖尿病」の自己管理を支援するサービスなども、街の薬局で提供されています。日本では、禁煙外来も糖尿病の指導も病院で行なわれますが、イギリスでは、地域にある薬屋さんがクリニックに近い機能と権限を持って市民の健康を見守る・・・「病院」中心から「地域」中心の医療へ・・・という新しい医療のカタチが作られていました。 

◆「認知症」対策も日英共通の重要課題! 
認知症のお年寄りを支援する施設を訪問しました。認知症のお年寄りが通ってきて、さまざまなイベントプログラムに参加する・・・日本のデイサービスセンターのようなところです。そこで驚いたのは、プログラムの多様さでした。日本のデイサービスでは、「手芸」や「合唱」など女性向きのプログラムが多いため、男性のお年寄りは参加したがらない人が多い・・・というのが課題になっています。 
ところが、イギリスの施設では、女性も男性も共に楽しめようにさまざまに工夫を凝らしたイベントプログラムが、毎日たくさん用意されていました。とくに興味深かったのは「サッカーの思い出を語ろう!」というプログラムで、往年のサッカー選手やサッカーチームの活躍について語り合おう・・・というものです。このプログラムは男性に大人気で、男性のお年寄りたちは、これを楽しみに嬉々として施設に通ってくるそうです。日本なら「相撲」や「野球」をテーマに、こうした男性向けのプログラムを作ったら良いのでは・・・と思いました。男性も楽しくデイケアに集まってくれるようになることが期待できそうです。 

◆イギリスでは、独自の財源確保への努力も・・・ 
もうひとつ、日本も参考になると思ったことがありました。訪問した認知症の支援施設では、アバディーンの街の中に「チャリティーショップ」を何カ所も開設していて、さまざまなグッズを売ったり、チャリティーイベントを開催したりして、市民から寄付金を集める努力をしています。この認知症施設では、建物の提供と数名の正規職員の雇用は公的資金から支出されていますが、日常の運営費のほとんどは、市民や地元企業からの寄付で賄われています。ボランティアの人たちも多数参加していました。 
こうした独自の財源確保のための努力は、日本の介護施設にとっても大いに参考になるのではないでしょうか?介護保険や税金などの公的財源だけに頼りすぎていては、できることが限られてしまいます。お年寄りたちのために、工夫を凝らした多様なサービスを提供するためには、地域の人たちに対してもっと情報発信をして、応援してくれるサポーターを増やす取り組みが、日本でもこれからどんどん盛んになっていくと良いですね。 
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