ダイノジ・大谷ノブ彦が音楽、映画、名古屋のグルメ、和菓子、中日ドラゴンズなど、好きなものをアツく語る番組『大谷ノブ彦のキスころ』。
11/5の放送では、オープニングに渡辺美里の「My Revolution」がかかりました。1986年1月発売の、4枚目のシングルです。
ドラマ『セーラー服通り』主題歌
大谷が大好きだというこの曲。渡辺美里の代名詞と言ってもいいでしょう。
ちなみに大谷は本人に会った時、「美里さん、『My Revolution』を嫌いになったことはないんですか?」と不躾な質問をしたのだとか。
突出した代表曲のあるアーティストに、大谷はよくこのような質問をぶつけるんだそう。そればかり求められる心境ってどうなんだろう、ということですね。
それに対して「そういう時期もあったけど、途中から『これは誰かにとってのMy Revolutionなんだ』と思うようになって、好きになった」と答えたそうです。
大谷にとってこの曲は要所要所で心を奮い立たせるもの。なぜか心の中にスッと入っていくナンバーだといいます。
それは、渡辺美里というボーカリストが、歌手というものの凄みを感じさせる、性別を乗り越えて人間として身体性が高いから。そういうシンガーが歌うから、ズバッと刺さるんじゃないかと、大谷は分析します。
美空ひばりや、ちあきなおみに通ずるものがあるとも。
さて、なぜこの曲が流れたかというと、リリースされた1986年が大谷にとって思い出の年だからです。
大谷を育てたアリス
大分県在住の大谷の母親により1986年にオープンした「スナック アリス」が、先月10/31をもちまして、31年間の歴史に幕を下ろしました。
大谷の母親も年齢を重ね、ヒザを悪くするなど病気がちになり、客足も昔と比べて減るなどの要因がありまして、残念ながら店をたたむことになったのでした。
実は大谷、閉店前日の10/30に店に寄ったそうです。
店じまいすることをツイッターでつぶやいたら、それを知った地元の客も結構集まってきてくれていたとか。
幼い頃に父親が家族を捨てていってしまい、ずっと母子家庭で育ってきた大谷。小学校2、3年の時に母は夜の仕事にちょくちょく行き始め、小5の頃には夜の仕事一本になり、2人の息子(大谷と弟)を育てていったのでした。
今でこそ感謝している大谷ですが、当時は母親が水商売をやることがすごくイヤだったといいます。
そして大谷が中2となった86年、スナックを開店します。それからバブル景気が始まり、地元の自衛隊の人々などが夜の街を賑わせ、おかげでムリだと思っていた高校・大学への進学が可能となったのでした。大谷の青春を支えたのはこのスナック アリスなのです。
ちなみに店名の由来は「お客様を不思議な国へと誘う」かららしいですよ。
電話帳に男名前で書いてある
母子家庭というコンプレックスを抱えながら、非常に貧しく苦しい生活が続く中、大谷が唯一のアイデンテティーだと、自分が自分であることの証だと思っていた、誇らしきことがありました。
それは、電話帳に自分の名前が載っていたことです。
父親が家を出ていってから、大谷宅の電話番号の名義は、母親の名前ではなく、なぜか大谷の名前にされていました。男性の名前の方が何かと面倒がないと、大谷母は思ったのでしょうか。
とにかくそれで、自分が認められたような気がして、大谷はとても嬉しかったのだそうです。電話帳に自分名義で載るなんて、子どもではまず体験できませんから。
しかし、それが崩される時が来ます。
スナックをオープンするにあたり、店の電話が必要になるわけですが、新たに電話を引くには当時は今より高額な費用がかかるため、自宅の電話を店舗用にするということになりました。
それで名義が「スナック アリス」に変わり、大谷の自尊心は奪われたのでした。
店なんかできても全然嬉しくない。心が荒んだ中2の大谷少年。こんな所にはいたくないと、家出をします。
まあ、空腹に耐えかねて夜8時には帰ってきちゃったそうですけれど。
「あら、遅かったわね」なんて、母親から言われたりして。単に外で遊んできたと思われたんでしょう。
そんな、甘酸っぱい思い出のある1986年であり、スナック アリスなのでした。
スナックもフェスもみな同じ
バブル期は繁盛したスナック アリスも、最後の10年は客足もすっかりまばらになりました。
そんな状況でもなぜここまで持ちこたえたのか?それは、大谷が店に寄った10/30、常連客の人々から聞いて明らかになります。
彼らはお店にお金を落としに来てくれていたのです。
「ボッタクリだよ、こんな店!」と冗談を言いながら、1万円くらい使っていってくれていたのです。
そういう地域のコミュニティーによって成り立っていたんだなと、大谷は改めて思ったといいます。
そして、こんな古き良きスナックの関係性が、逆に今っぽいなと感じるのでした。
「ネット社会になってきて、人と人との結びつきが希薄になっているからこそ、イベントとかフェスなどの現場に人が集まってくるじゃないですか。そこで人とつながっていく様子が、昔の人間の関係性に似てるんですよ。
今、マンションで隣りに誰が住んでるかわかんない時代になってますけど、昔はお隣さんと醤油の貸し借りをやってたじゃないですか。ああいうつながりが現場で起こってきてるんですよね」
現代人は人とのつながりに飢えている。だからこそ、フェスやイベントには、お目当てのアーティストに会うことの他に、「アイツが行くから自分も行く」「いつもの仲間に会えるから行く」という目的が増えているというのです。
「知らない人が入ってきて、知らない曲を歌っても、ムリして拍手して盛り上げたりする。仲間との待ち合わせ場所になっている」関係性。
スナックもフェスも同じなんだと、時代の移り変わりをしみじみと感じる大谷なのでした。
(岡戸孝宏)
CBC
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2017年11月05日13時02分~抜粋