2017年10月10日(火)

日本の選挙報道姿勢を斬る!内田忠男のジャーナリスト魂

石塚元章 ニュースマン!! / トーク

ジャーナリスト・石塚元章がパーソナリティを務める番組『石塚元章 ニュースマン!!』。
10/7のゲストは、ジャーナリスト界の重鎮、国際ジャーナリスト・内田忠男さんです。

内田さんはジャーナリスト歴50年以上の78歳。ニューヨークには通算21年拠点を置き、そこから世界各地を取材してきました。
『ニュースステーション』(テレビ朝日)など様々なテレビ番組で、その穏やかな語り口調でわかりやすく解説する姿を見た方も多いでしょう。

そんな内田さんに「アメリカの今・日本の行方」について伺いました。

マキュリアルとは?

まずは今のアメリカの状況について。

つい最近もニューヨークに出向いたという内田さん。政治学者、経済学者、ジャーナリスト、銀行の上層部など、“意識の高い層”がトランプ大統領をどう見ているか取材したそうです。

その中で複数の人から聞いた言葉が「mercurial politics(マキュリアル・ポリティクス)」。あまり耳慣れない言葉ですね。

マキュリアルは、「mercury(マーキュリー)」が形容詞化されたもの。ではそのマーキュリーとは?
水星の英訳?その意味もありますが、この場合は違います。
ローマ神話に登場する神?それは「Mercury」と頭文字が大文字になります。
クイーンのボーカル?それはフレディ・マーキュリー。
『美少女戦士セーラームーン』の水野亜美ちゃん?それはセーラーマーキュリー。

この場合のマーキュリーとは、「水銀」のこと。マキュリアルは「水銀のような」。水銀は金属だけど液体であり、流動性が強い物質です。つまり、「変わりやすい・移り気な」という意味で使われるのです。

よって「マキュリアル・ポリティクス」は、「言う事がコロコロ変わる政治」ということ。

トランプ大統領が何を言い出すかわからない、政治の見通しがつきにくい。それは各界にとって非常に困ったことなのだという心境を、マキュリアル・ポリティクスという言葉が如実に表しているのですね。

大統領と側近との確執

しかしながらアメリカという国は、良かれ悪しかれ一旦選ばれてしまった大統領は、“自分たちの大統領”だという認識になるんだとか。なので、ただ批判して叩いて引きずり降ろそうという考えは、アメリカ国民の第一選択肢では無いんだそう。
選んだ以上はついていかざるを得ないということです。

ただ、そんな状況の中でも、トランプ大統領の取り巻きにほころびが見え隠れしています。

NBCテレビは先日、ティラソン国務長官がトランプ大統領を「バカ」呼ばわりしたと報じました。
アメリカでは「バカ」を表す言葉に「stupid(ストゥーピッド)」「idiot(イディオット)」「foolish(フーリッシュ)」などいろいろありますが、その時使われたとされるのが「moron(モロン)」。
これは悪意が軽めな方だそうですが、軽めと言っても結構な侮蔑ですけれども。

さらにNBCテレビは、ティラソン国務長官が辞意を示したとも報じましたが、長官本人が記者会見で辞任報道を否定。
しかし大統領へのバカ呼ばわりには触れなかったそうです。否定しなかったということは、実際に言っていたのでしょう。

「真っ当な考え方を持っているティラソンさんがそう言うのだから、意識・教養が高い人たちが扱い方に困っているのが現状です」と内田さん。

大統領を罷免する裏ワザ

そんなトランプ大統領ですから、どんどん孤立して、辞めさせられることはないのでしょうか。

大統領を辞めさせるには、議会による弾劾裁判の他に、裏ワザがあると内田さんが解説します。
「大統領自身が指名した閣僚の半数以上が、『この人は大統領の資格がない』と判断して、それをまとめて宣言にして、上下両院議長に渡せば大統領の資格が停止になるんですよ」

これは元々、大統領が重病になってしまい執務が不可能になった場合を想定して作られたシステムだと思われますが、流用することは法律上可能なのだとか。

実際にこの裏ワザが使われる可能性は今のところ低いという内田さん。
ただ、ティラソン国務長官の他にケリー主席補佐官、マティス国防長官、マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官と、こういう人たちがしっかりした考え方を持っていて、彼らのおかげで今のアメリカが動いていると内田さんは思っているそうです。

今は彼らがトランプ大統領を必死になだめすかしながら、正道に戻す努力を続けていくのでしょうが、なにぶんトランプ氏の負けず嫌いは相当なもの。どこまで妥協できるかは期待しづらく、もしかしたら前述の裏ワザがいつか発動されるかもしれません。

日本のメディアよ、目を覚ませ!

一方ここからは、日本のメディアの報道姿勢に対して、内田さんは一石を投じます。

「日本は政治ジャーナリズムがどんどん劣化しているように思えてならないんです。新聞社にしろテレビ局にしろ『政治部』なんて言うでしょ。私は彼らは『政局部』だと思うんですよ。政局に何か悶着が起きることだけを喜んで、そればかりに力を入れて報道している。
本来政治部というものは、政策についてわかりやすく伝えなきゃいけないもの。与党や野党の主張していることをキチンと並べ挙げた上で、有権者の判断基準になるような解説が必要なんです」

アメリカのメディアは、政局も報道しますが、政争の時はちゃんとそれぞれの考えを対比させながら、自らの考えもハッキリ言っています。
日本では「肩入れせず中立の立場」を取らなきゃいけないので、そこまではできませんが、「政策の中身を吟味する」というプロセスは日本でもできるはず。そこができていないことに内田さんはいら立ちを隠せません。

「選挙になると『どこが勝つか!?』ということばかり関心がいってしまう。だけどどこが勝つかは有権者が決めること。有権者に判断の材料を与えることがメディアの役割なんだということを、忘れないでほしいです」

このようにジャーナリスト魂をたぎらせる内田さんなのでした。
(岡戸孝宏)

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