若狭敬一のスポ音

初回5点の大量リード。こんなとき実は投げにくい?投手の気持ち

2024年09月17日(火)

スポーツ

今から1ヶ月前の8月9日、バンテリンドームで行われた中日×巨人戦では、ドラゴンズが初回から大量得点しました。こんな時の投手はどのような心理状況なのでしょう?

9月14日放送のCBCラジオ『若狭敬一のスポ音』では、この試合を実況した榊原悠介アナウンサーが、ドラゴンズの選手に「セーフティーリードとは?」と尋ねました。

セーフティーリードは何点?

一般的に「セーフティーリード」は、満塁ホームランを打たれても追いつかれない5点の差だと言われます。

榊原が実況を担当した試合には、1回が終わった時点で「今日は勝った」と思った試合があったそうです。
それが8月9日、バンテリンドームで行われたジャイアンツ戦です。

ドラゴンズは初回ら猛攻を見せ、細川選手の先制3ランホームラン、続く木下選手が2ランホームランで1回が終わり5対0。
しかもこの日の先発は左のエース、小笠原投手が登板していました。

榊原「勝った。もう間違いない!これぞセーフティーリード。あとは小笠原投手が抑えて勝つだけ。よっしゃ!実況していて思いましたね」

小笠原投手の場合

この日の解説は牛島和彦さん。当時の録音を聞くと、5対0で浮かれる榊原アナ私を横目に、難しいピッチャー真理を冷静に解説していました。

牛島「僕は前半にドーンと点を取ってもらうと、『勝たなきゃ』という気持ちが強くなって苦しかったですねえ」

一挙に5点よりも1イニングに1点ずつ、5イニング取ってくれた方が楽だったそうです。この時の小笠原選手に対して「5点リードと言う意識は外して、0対0のつもりで投げた方がいい」とアドバイスを送りました。

その言葉通り、5点取った直後の2回に小笠原投手は満塁のピンチを招きます。牛島さんは、小笠原投手がいつもと違うことを感じていたようです。

牛島「本来の積極的に攻めて行くようなピッチングではないですね。ストレートも少ないし」

この時の小笠原投手には闘争心がなく、なんとか凌ごうという投げ方に見えると指摘していました。

5点もらった投手心理

小笠原投手は2回の満塁のピンチをなんとか0点で凌ぎました。
続く3回も先頭バッターにヒットを許し、この時点で早くも5本目のヒットを打たれていました。

牛島「みなさん、5点もあって何してるんだ?と思われますけど、でもそういうもんなんですよね。イニングが過ぎて行くとスイスイと行けるようになってくるんですけど。これが難しいとこですね」

なまじ5点のりーどがあるだけに、いつもと同じようにやってるつもりでも、「勝たなきゃ」「抑えなきゃ」という意識で、知らず知らずのうち身体に力が入るんだとか。

牛島「それと普段あんまり点取ってもらってないのに、いきなり5点取ってもらうと、いつもとリズムと違うわけですよね」

ファンの期待を感じる

後日榊原アナウンサーが、この試合について小笠原投手に聞くと「1回に5点入ったことで投げにくさがあった」との答え。

榊原「私も1回から勝ったと思いました。ラジオの前の皆さんもそう思った方がほとんどだと思うんですね。球場にいるお客さんももちろんそういう気持ちだったと思います」

小笠原投手によると、マウンドでは、バンテリンドームに詰めかけた3万人のお客さんがみんな勝った気になっている雰囲気を感じたんだそうです。

小笠原投手にとって理想を言うならば先制、中押し、ダメ押しと、1点づつ取っていくのが理想とのこと。これは牛島さんが話していたことと同じです。

5点のリードを実感

3回裏、ドラゴンズはさらに1点追加して6対0。ここでようやく牛島さんの表情が崩れて、大丈夫だという雰囲気になったと振り返る榊原アナウンサー。

牛島「次の追加点を味方が取ってくれたので流れがぐっとよくなります。これで小笠原は楽に放れる様になると思います」

小笠原投手の心理としては、5対0の時点でまだは0対0。6対0になったところで、ようやく5点差を受け取ることができたようです。

この試合、ドラゴンズは9対2で勝利。
小笠原は投手は8回2失点。ヒット10本打たれましたが勝ち投手になりました。

榊原「ピッチャーそれぞれで精神状態は違うのでしょうが、牛島さんと小笠原投手に聞いた話がぴたりと一致しました。初回の5点というのが意外と厄介ということでした」

空腹を感じたらセーフティーリード?

榊原アナウンサーは「セーフティーリード」について、松葉投手、福谷投手、福投手、藤嶋投手、かつての守護神・岩瀬仁紀さんにも話を聞いていました。
先発、中継ぎ、抑え。またベテランかそうでないかでも、それぞれ違った見解を持っていたようです。

榊原アナウンサーは、野手の考えをレジェンド・荒木雅博さんにも尋ねました。
「現役時代の本拠地ナゴヤドームなら3点あれば大丈夫だった」とのこと。
さらに「お腹が空いてきたらセーフティーリードだと思った」と続けます。イニング間に何か食べようかなと言う考えが出てきたら勝てると感じたんだとか。

榊原「5対0。ファンから見るとこれ以上ない安心した展開なんですが、その雰囲気をピッチャーに伝えてしまうと、投げにくくなってしまうかもしれない。と考えると球場での見方も少し変わってくるかもしれません」
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
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2024年09月14日12時30分~抜粋
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