今季の中日ドラゴンズは盗塁が少ないと言われています。開幕39試合で見ると、成功した盗塁は6つです。
5月18日放送のCBCラジオ『若狭敬一のスポ音』では、パーソナリティの若狭敬一が、この盗塁数について中日OBで野球解説者の荒木雅博さんに尋ね、その回答を紹介しました。
盗塁の数と勝敗の関係など、興味深い話になったようです。
昨年との比較
今年のドラゴンズは盗塁が少ないと言われています。
5月16日の試合消化時点で39試合中、盗塁成功6、盗塁失敗7、企図数13です。
ちなみに昨年は39試合消化時点で、盗塁成功9、盗塁失敗5、企図数14となっています。
一方16日時点での他チームを見てみましょう。
読売ジャイアンツと横浜DeNAベイスターズが20、東京ヤクルトスワローズ15、広島東洋カープ14、阪神タイガース13となっています。
若狭「中日は6ですから、そりゃあ少ない。これは例年通りだからもともとです。ただ一応『盗塁は少ない』としときましょうか」
もっと数字を見てみよう
盗塁がチームの成績にどう影響しているのでしょうか?
39試合消化時点で、今年は16勝19敗4引き分け、借金3で4位タイ。首位とは4ゲーム差です。
昨年は、39試合消化時点で13勝26敗です。借金13で最下位。首位とは11.5ゲーム差でした。
若狭「今だから言いますが、昨年はこの時点で終わってましたね。昨年の方が盗塁は多いんですが、5月の半ばで終わってた」
さらに39試合消化時点での得点を比べると今年は107。昨年は103。厳密に言うと盗塁の少ない今年の方が得点が多いのです。
39試合消化時点での得点圏打率は今年が2割3分6厘。昨年は2割4分7厘。昨年の方が得点圏打率が高く、盗塁が多い。にもかかわらず得点は今年の方が多いわけです。
病気を克服せよ
あらためて「今年の中日は盗塁が少ない」に関する若狭の見解です。
若狭「私の結論は『大した問題じゃないので騒がないで』って話です」
若狭が実感するのは、ドラゴンズファンは「隣の芝生は青い病」が染みついていることだと言います。負け始めると「他球団のように走らないから負ける」と騒ぎ出すそうです。
若狭「冷静に盗塁以外の数字を見るとドラゴンズの盗塁少ない問題は大したことじゃない。それよりも皆さんに染みついてしまった『隣の芝生は青く見える病』を克服しませんかと言いたい!これは私の素人の話です」
流石、解説者
プロ通算で378個もの盗塁をしている脚のスペシャリスト、元中日ドラゴンズの荒木雅博さんの話です。
荒木さんは「他球団と比べて少ないのは寂しいが、メンバー的には仕方がない」との見方をしているようです。
そして「長打力のある選手が多いので、走ってアウトになるリスクを考えれば、ランナー一塁のままバッテリーに警戒させて、失投を誘発する方が得策ともいえるでしょう」と続けたそうです。
若狭「言葉選んでますねえ、さすが解説者ですねえ。私なんかは、騒ぐな、大した問題じゃねえだろってついつい放送でも言うんです。でも、だいたい本音で大したことないと思ってるんでしょう」
盗塁が少ない2つの理由
それでも今年、盗塁が少ない理由を荒木さんは2つ挙げました。
1つ目は岡林勇希選手が開幕からいなかったこと。
昨年、39試合消化時点で9つの盗塁がありましたが、そのうち5つが岡林選手が決めています。今年6つの盗塁で岡林選手が決めたのは0です。
2つ目が、バッターのレベルが上がって空振りが減ったことだそうです。
今年と昨年が違うわけ
スリーボール、ツーストライクからラン・エンド・ヒットという作戦がよくあります。
一塁ランナー、スタート。ピッチャーが投げて、バッターはストライクなら打ちます。ヒットになれば一塁、三塁が作れるハイリターンな作戦です。
同じような作戦でヒット・エンド・ランがありますが、こちらはバッターがボール球でも打たないといけません。
両方とも空振りすると三振ゲッツーという最悪な事態になります。
昨年の中日はこのような作戦が出るとよく空振りしていたそうです。
しかし、一塁ランナーのスタートが良かったり、相手のキャッチャーが悪送球をしたりで、たまたまセーフになったラッキー盗塁も結構あったそうです。
作戦としては失敗ですが、ラッキー盗塁があったのが昨年です。
今年、ラン・エンド・ヒット、あるいはヒット・エンド・ランをかけてバッターがちゃんと打つようになったためラッキー盗塁が減少。バッターはレベルが上がり、ちゃんと作戦を遂行しているので盗塁にはならないわけです。
将来の盗塁スペシャリスト
荒木さんは最後に「脚で生きていく選手に限っては、もっと技術を磨く必要があるのでは?」と付け加えたそうです。
長打、犠打などバッターにはそれぞれ期待される役割があります。脚のスペシャリストは、どのチームにも必要で、ここで脚を活かしてくれという場面があります。
荒木さんはルーキー、尾田剛樹選手のスピードをキャンプで見た瞬間に、脚で生きていく選手になれる可能性を感じたそうです。
そうなるために、尾田選手は帰塁の技術を学ぶ必要があるそうです。
帰塁の技術
盗塁の技術にはスタート、スピード、スライディングの3Sが必要だそうです。
注目されるのは次の塁を狙う3Sですが、荒木さんは牽制で一塁ベースに戻る帰塁の技術こそが大事だと言っていたそうです。
帰塁を簡単に解説します。
一塁に出ると、中腰でリードしている左側にファーストベースがあります。牽制球が来た時に、左の一塁ベースに向かってヘッドスライディング。
一塁に向かって斜め下に向かって戻るように見えますが、実はそうではないそうです。
荒木さん曰く、中腰の体勢から一度、キャッチャーの格好になり、そこから低く飛ぶ感覚だとか。
なぜそうするかというと、牽制球が来た時、ファーストがタッチしてくるファーストミットと背中の距離を空けるため。
やればできる
若狭「背中とファーストミットの距離があるのでタッチの時間が0.何秒遅れる、その瞬間に帰るんです。衝撃的でした」
1回低くなってから飛んだ方が時間がかかりそうに思えますが、1回体勢を低くしながら飛ぶことを何回も訓練することで克服できるそうです。
荒木さんはアマチュア球界にも指導に行っています。「これ、結構みんなできるそうなんですよ。知らないだけ。やればできる」と話していたそうです。
昨年1年間取り組んで、現在は帰塁のスペシャリストになっているのが三好大倫選手。
若狭「ぜひ尾田選手にもこの技術を磨いてもらって脚のスペシャリストになって欲しいと思います」
(尾関)
若狭敬一のスポ音
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2024年05月18日12時30分~抜粋