若狭敬一のスポ音

松井稼頭央から村上宗隆まで。逃した魚はデカかった。元スカウトのボヤキ

この時期のプロ野球界では、将来活躍しそうな選手を見抜くスカウトの仕事に注目が集まります。

10月8日放送のCBCラジオ『若狭敬一のスポ音』に、中日ドラゴンズの元スカウト部長、中田宗男さんが出演し、スカウトの難しさを語りました。
聞き手は若狭敬一アナウンサーです。

[この番組の画像一覧を見る]

中田元スカウト、こんな人

中田宗男さんは元中日ドラゴンズの選手でした。
大阪府和泉市出身で現在65歳。
上宮高校から日本体育大学で、ピッチャーとして活躍し、1978年(昭和53年)のオフにドラフト外で中日ドラゴンズに入団。プロ5年で7試合に登板し、1勝0敗。

現役引退後の1984年からは、四国と関西地区のスカウトに就任。
高校時代の立浪和義現監督、高橋周平選手をスカウトしました。
2003年から編成部長、2013年からスカウト部長を担当し、昨年中日ドラゴンズを退職しました。
 

逃した魚はメジャー級

中田さんによれば、スカウトした選手が他球団に取られてしまい、その後大活躍して悔しい思いをした選手がいたそうです。

「自分が担当してる時に、PL(学園)から西武に入った松井稼頭央君。見てたら、めっちゃくちゃ良いんですよね」

PL学園の関係者から「ショートをやらせたら抜群に良い選手がいる」と知らせを受け、視察に行ったのが松井選手。
他チームのスカウトは来ていない様子だったので、ドラフト会議の5~6位で取れると踏んでいたところ、西武が3位で指名してしまいました。

「その時はね、どうしても欲しい選手であったのは間違いないけど、ま、仕方ないよね、で終わった。そしたらアレですわ」

松井さんは、西武ライオンズからメジャーリーグ数球団を渡り歩き、日本球界に復帰。
現在は西武のヘッドコーチです。

未だ残るトラウマ

「あの時、高木守道さんが監督で、守道さんが言ってくれたんですよ。『あんたが、そんだけエエ言うんやったら、3位で行きゃエエやないか』って」

この時中田さんは「いやいや、3位で行くような選手じゃないですよ」と言ってしまったんだそうです。「3位で推す意志が弱かった」と悔やみます。

「自分がせっかくチャンス貰ってるのにもかかわらず、推薦しなかった。意気地なしやなあって自分に思ったですね」

さらに「あんたが、そんだけエエ言うんやったら」という高木さんの言い方も、未だに耳にこびりついて離れないそうです。

スカウトのエアーポケット

「他にもいっぱいありますよ。中村ノリちゃんとかね」

中村紀洋さんにも惚れこんでいたという中田さん。
中村さんは、渋谷高校の時に2年生ながら4番を打っていました。どうしても取りたくて自宅にも行ったそうです。

この時、東海地区のスカウトが絶賛していたのが愛工大名電の鈴木一朗選手、イチローさんでした。

「だから、鈴木君を指名するから、中村君を諦めないかんなと思ってたんです。結局、他の選手を指名して、鈴木君も中村君も指名できなかった。エアーポケットそのものですね」

中村さんとイチローさんは、比較的早い時期から有望選手として知られていたそうです。
しかし結果は、中村さんが近鉄から、イチローさんがオリックスから、ともに4位で指名を受けました。
各球団の事情と駆け引きの中にできた、まさにエアーポケットでした。
 

村上も目をつけていた

今年三冠王を獲得したヤクルトの村上宗隆選手について語り始める中田さん。

「一番のショックは村上君ですね。こんなんなるとわかったら行ってますよ」

実は中田さんは、村上選手を高校に入る前から知っていたそうです。
村上選手の母校である九州学園の監督が、中田さんの後輩にあたるそうで「強烈なバッターが入って来ますよ」と知らせがあったそうです。

ちなみに村上選手は、日本ハムの清宮幸太郎選手と同学年です。
当時の清宮選手はすでに球界でも話題になっていたとか。

「じゃあ3年後頼むで」と中田さんが後輩の監督に言葉を返してから3年経ちます。

村上選手を指名しなかった理由

「東の清宮、西の村上」と話題になった2017年ドラフト。

しかし当時の中日首脳陣が欲しがっていたのはキャッチャーでした。
村上選手もキャッチャーをしていたそうです。しかし…。

「最後はやっぱり肩。キャッチャーじゃ無理だなとなって広陵高校の中村君。で、外れて、ピッチャー行ったんです」

当時の中田さんが重視していたのはキャッチャーなら肩。
星野監督時代のキャッチャーだった中村武志さんを獲得した理由も、肩の強さに驚いたからだそうです。

中日は1位指名で中村奨成捕手を指名しましたが、広島と重なり、くじ引きの結果、交渉権を逃しました。
ちなみにこの年、1位で入団したのは鈴木博投手です。

スカウトより確実な目

村上選手は、ヤクルト、巨人、楽天が1位指名し、ヤクルトへ入団します。
ちなみにヤクルト連覇の理由は、打者の素質のある選手ならポジションに関わらずどんどん取っていることだと語る中田さん。

「だから、ポジションこだわらず、打ちゃあいいっていうタイプなら、村上君も可能性はあったかなと思いますけども、良いとは思ってましたけど、高校の時、あんなんやったかな?」

村上選手の成長速度の速さに驚いたという中田さん。
身体が柔らかくパワーよりも瞬発力で打つタイプ。スイングの可動域が非常に広く、ヘッドの走り方が強烈。回転軸で打つ真似のできない打ち方、と評価しました。

「一番よく見てる人。村上君であれば監督ですよね。『これまで見てきた中で、物が違いますよ』と言うのは、やっぱり本当ですよね。こっちは『いや、清宮の方が上やろ』と言ってたんだけど。
俺にもうスカウトしちゃいかん、と決めさせたのは村上君です」

スカウトの苦労は「こんなんなるとわかったら行ってますよ」の一言に尽きます。
中日ドラゴンズの元スカウト部長、中田宗男さんによるスカウト裏話でした。 
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
この記事をで聴く

2022年10月08日15時57分~抜粋

関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報