若狭敬一のスポ音

元中日ドラゴンズ監督・山田久志「監督時代のトレード話」続編

元中日ドラゴンズ監督で野球解説者の山田久志さんは、CBCラジオ『若狭敬一のスポ音』の「栄光に近道なし」というコーナーを担当しています。

10月1日の放送では、「山田監督時代のトレード話2弾」として中村武志さん、山﨑武司さんのトレードのさらなる裏話を語りました。
聞き手は若狭敬一アナウンサーです。

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風当たりは台風並み

歴史を紐解くと、必ずしも中日のOBだけが監督になっているわけではありません。
いわゆる「外様」(とざま)、外から来た監督が思い切って血を入れ替えたという歴史もあります。

しかし、山田さんのように全く中日に関係ない人が2、3年コーチを担当して、そのまま監督になったのはレアケースでした。
当時の山田さんへの風当たりもキツかったそうです。

山田「最初はそよ風だったんだ。気持ちいい風だったんだ。それが谷繁を獲得するぐらいから、異様な感じになっていった。最後は台風に近いぐらいの風やったね。本当キツイ」

中村と谷繁のトレード

2001年オフには、ベテラン正捕手だった中村武志選手が試合出場機会を求めてトレードを志願し、横浜ベイスターズからFA宣言していたキャッチャーの谷繁元信選手を獲得しました。

ちなみに谷繁さんがFA宣言した時には「メジャーに行くのでは」「巨人が獲得に動くかも」など様々な噂が流れました。
これは、事を有利に進めようとする選手自身と、周りの作戦なんだそうです。

山田「巨人が取るわけないもん、阿部がいたのに」

阿部慎之助選手は2001年に新人で開幕スタメン。新人捕手としては、田淵幸一選手以来の二桁本塁打を打つなど大活躍の年でした。

山﨑と平井のトレード

山田「山﨑の場合は、じゃあ相手は誰だってことで、平井を取ったんですね」

2003年1月、山﨑武司選手とオリックスの平井正史選手のトレードが成立しました。

平井選手はピッチャーで、肘を手術をしてから「使い物にならない」と言われていたように、1999年から勝ち星がありませんでした。
そのため「山﨑武司という名のある選手なら、もっとトレード候補がいるだろう」と批判されたそうです。

山田「私は平井っていうピッチャーを、入った時から知ってるから。肘さえ治ったら、コイツはやるぜってわかってたんですよ」

何かの縁

山田さんは、平井選手の肘を手術した先生やオリックスのピッチングコーチや監督に、平井選手について聞き回ったそうです。
すると「肘が治れば活躍するだろうが、以前ほどではないかも」という釈残としない内容だったそうです。

山田「私もやっぱり不安だったんだ。でも俺がもう一回、平井を使うのは何かの縁だと思った」

実は平井選手が近鉄バファローズ(当時)へとプロ入りした時のピッチングコーチが、山田さん本人でした。
その時、仰木監督から「育ててくれ」と預けられ、山田さんは平井さんをプロで通用する投手にします。

山田「1年目から抑えで活躍して、そして投げすぎて肘を故障した。そこでプロ野球人生が終わるのは、あまりにも可哀そうじゃないですか」

復活と解任

とはいえ、手術をしてからほとんど投げていない選手を、普通なら獲得しないもの。

山田「平井で行こうって、あれは私の独断。会社も周りも『平井?もう終わったんじゃないの?』って言うね。大手術だったもんね。今の手術と違うしね」

若狭「そう考えると、監督というのは決断する仕事。嫌われる仕事。大きく変える仕事。なんか辛いですね」

山田「それでうまくいってくれればいいけど、うまくいくことってそんなにないからね。称賛されるのは勝った監督だけだからね」

平井選手はトレードで中日に移ると、規定投球回数を自身初めて達成。12勝を挙げてカムバック賞を受賞しました。
防御率は、リーグ2位の3.06と活躍しましたが、平井選手がプロ初完封勝利を挙げた9月9日は、皮肉にも成績不振で山田さんの監督解任が決まった日でもありました。

これぞ男の仕事

山田「称賛される監督は、セ・リーグの優勝チームの監督と、パ・リーグの優勝チームの監督、2人しかいない。あとは、みんな何やってんだよってなるんだよ。そういうもんだよ監督って。」

若狭「聞くと辛い仕事だと思います」

山田「だけど監督ってやっててね、『これぞ男の仕事』と思う時もあるよ。やっぱり気持ちいい時がある」

それは選手の成長を見た時だそうです。試合中でも目頭が熱くなる時があったようです。

山田「私がそういうタイプなのかもわからんけども、グッときた。みんなは私の厳しいとこしか知らないけどね」

若狭「いまだに落合英二さんも岩瀬仁紀さんも、伊良湖を死ぬほど走らされたと言ってます」

トレードの理想

話はトレードに戻ります。

山﨑武司さんが自身の本にも書いたように、山田さんとの関係はいま一つ。
そんな山田さんが、山﨑さんとの関係についても話しました。

山田「トレードの後、風当たりが強けりゃ強いほど、監督というのは燃えるんだね。今に見とけと。必ずチームにプラスになる確信を持たなきゃトレードは成立しないですよ。トレード怖いもん」

出した選手が活躍すれば、当然監督は叩かれます。理想はトレードした選手双方が活躍することです。

「だから山﨑武司の場合はいろんなことがあったけども、彼はオリックスから楽天へ行って、野村(克也)さんの元で大活躍した。だから、過去にこだわる必要はないんです」

山﨑さんについてこう語る山田さんでした。 
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
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2022年10月01日14時29分~抜粋

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