若狭敬一のスポ音

山田久志「騒ぐことじゃない」と断言。プロ野球「投高打低」のふたつの理由

今年のプロ野球は開幕から完全試合、その後もノーヒットノーランを達成する投手が続出しています。

8月13日放送のCBCラジオ『若狭敬一のスポ音』では、元中日ドラゴンズ監督で野球解説者の山田久志さんが、プロ野球界における「投高打低」の理由を冷静に解説しました。

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ボールに変わりはない

山田「メジャーでもそうだし、日本のプロ野球の野手から出ているんだけども、ボールが飛ばなくなっているような感じがするっていう話が出てるよね」

今年はノーヒットノーランを達成する投手が多くいます。
4月には佐々木朗希投手が完全試合。その後5月にソフトバンクの東浜投手、6月にはDeNA今永投手とオリックス山本投手がノーヒットノーランを記録しました。

実はアメリカのメジャーリーグでもノーヒットノーラン達成者が増えています。
メジャーリーグでは昨年から、飛ばないボールに変えています。こうした影響があるとすれば、問題となりそうです。

ところがメーカーが調べたところ、ボールの跳ね返りやすさを表す「反発係数」は規定範囲内に収まっていたそうです。
それではいったい「投高打低」の原因は何でしょうか?

ピッチャーの規制緩和

山田「ひとつはピッチャーに対する規制が非常に甘くなってきた。フォーム自体が、2段モーションや3段モーションに近いような人もいるからね」

一度上げた足を止めたり、上げ下げする投球フォームは2006年に禁止されました。そのため多くの投手が投球フォームの変更を強いられました。
しかし2018年にはこれらのフォームが解禁され、どんな投げ方でもできるようになりました。

なおセットポジションで投球する際には、完全に静止しなくてはならない、というルールがあります。
完全に静止した状態からの投球は、バッターからするとタイミングが取りやすいんだそうです。

しかし最近はその静止時間についてジャッジが甘めといいます。

山田「ほとんど止まってない時でも、今は言わない」

余程おかしな投げ方をしない限りボークの判定はありません。
いわば規制緩和がピッチャーへの追い風になっているようです。

タイミングをずらす投球

山田「そしてもうひとつは、ランナーがいなくてもクイックで投げてみたり、とにかくバッターのタイミングを外す方向に走ってるピッチャーが多いんですよ」

1チームに12~13人いるピッチャーが、それぞれフォームを工夫しています。対戦するバッターは大変です。

山田「ただ、ノーヒットノーランとか完全試合やった人は、そういう投球はしてないんだよね。この人たちは堂々と投げて記録を作ってるんだよね」

佐々木投手、東浜投手、今永投手、山本投手、そして幻の完全試合があったドラゴンズの大野雄大投手も策を弄するタイプではありません。

タイミングをずらす投手と対戦する中に、正攻法なパワーピッチャーが登板すると、これはこれでバッターも大変です。

ストライクゾーンが上がった

山田「私が取材したところによると、高めのストライクゾーンがちょっと上がった。高めを取るアンパイアが増えてきた」

今は、ツーシーム、カットボール、フォークボール、スプリットなど、下へ下へと行くボールが主流。
低めに目をつけているところに、今まで見送っていた高めもストライクとなると、バッターは意識を変えなければいけません。

今までは低め主体の配球。高めの球はピッチャーにとって見せ球的な使い方でした。

山田「いま違うの。反対なの。最初から落とすボールなの」

例えば、低めの球で攻めていって、決め球を真ん中高めに投げてくるという配球も見られるようになったというのです。

高めをホームランにできるのは?

山田「難しいだろうね。いまホームランバッターでも高めをうまく打つホームランバッターは少ないよ」

低めのボールを打とうと思うと、アッパー気味のスイングになります。そこへ高めのストレートが来ても、バットの起動とボールの軌道に接点がなく対応できません。

ライオンズの山川選手は低めのボールをかち上げるイメージ。
ジャイアンツの岡本選手は外側低めをライトスタンドへ運ぶイメージ。

山田「敢えて高めのボールを逆方向に打てるのは村上(宗隆・ヤクルト)ぐらいだね。村上は振り遅れてるように見えてるんだけども入るんだよ。彼の場合はパワーだ」

騒ぐことじゃない

山田「高めってのは、本当は打ちにくいボールなんだ。だけど前は、みんなそこに投げてた。だからそこを打つ練習をしてたわけだ」

以前は、速い高いボールもそれなりに打たれていたわけですが、今は低めが主流。それをいかに打つかに意識が行くところへ高めのボールが来ると、バッターは手が出ません。

山田「打たれたから、ピッチャーは落ちるボールだとか、タイミング外すとか工夫してきて今があるんだ。
何年かしたら逆の打高投低になる。これは決まり切ってるもん。この繰り返しなんですよ。だから騒ぐことじゃないって言ってるの」

ピッチャーとバッターの戦いに終わりはありません。 
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
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2022年08月13日14時29分~抜粋

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