日本郵政グループ女子陸上部に所属する東京オリンピック女子マラソン代表の鈴木亜由子選手が、CBCラジオ『若狭敬一のスポ音』のインタビューを受けました。
パーソナリティの若狭敬一アナウンサーとは名古屋大学の先輩後輩の間柄。
聞けそうで聞けない禁断の質問にも、しっかり答える鈴木選手です。1月30日放送分から。
徳之島で合宿中
鈴木亜由子選手は1991年10月8日生まれ。愛知県豊橋市出身で、愛知県立時習館高校から名古屋大学経済学部を経て日本郵便に入社。
日本郵政グループ女子陸上部に所属する東京オリンピック女子マラソン日本代表選手です。
今は徳之島で合宿中の鈴木選手。
「疲労は着実に溜まっているんですけれども、継続して練習が出来ています」とのことで、現在は土台作りの練習だそうです。
徳之島合宿を開始したのは昨年12月28日から。徳之島を選んだ理由は暖かい気候に加え、アップダウンがあるため、そこを走り込むことで強靭な脚を作ることが目的だそうです。
オリンピック選手の練習
鈴木「今のところ40キロ走1回で、30キロ走は3~4回入れられているので、今のところは順調なのかなと思っています」
日によって違いますが、多い時は一日、50~60キロ走ることもあるそうです。
流石に一気に50キロではありませんが、朝練習で40キロ走をやって、午後の練習もアップダウン含めて50~60キロになることもあるんだとか。
4日練習して1日休む、4勤1休のペースで行っているとのこと。
長距離選手の朝は早い
リスナーの質問にも丁寧に答える鈴木選手。
「体調管理で最も気をつけていることは何ですか?」(Aさん)
「しっかり練習して、しっかり食べれて、しっかり寝れて、の3つのサイクルがしっかり回っていけば良いのかなと思います」
現在は朝5時に起床だとか。
「長距離選手の朝は割と早いんですよね。夜は9時から10時の間に寝るっていう感じです」
寝ているように走りたい
3月14日に開催される名古屋ウィメンズマラソンについてです。
「目標タイムはどれくらいなのでしょうか?」(Bさん)
「まだ設定していなくて、これからの練習の出来次第かなと思っています」
「フルマラソンを走る2時間ちょっとの間、鈴木選手はどのようなことを考えているのでしょうか?私は四時間半ほどかかってしまうので、最後の1時間くらいは、飽きと辛さを振り払うため、今までの人生を振り返ったり、現実逃避な妄想をしています」(Cさん)
「苦しい時は、あんな練習したなって思い返すことがありますね。あの練習が出来たから、今日も乗り越えられると思えば最後、すごく力になると思います」
練習で一段壁を超えておくと、試合でも同じようにそれができる可能性が高いということでした。
さらに、その他は何を考えているか聞いたところ…。
「マラソンはなるべくエネルギーを使いたくないので、前半は本当にボーっとしてたいですね。寝てるように走りたいです」
1キロ毎のタイムや他の選手の動きを見て戦略を立てているのかと思いきや、そうではないようです。
「あまり細かい他の選手の動きとかに気を取られ過ぎても疲れてしまうので、大体で押さえて、あとは自分のペースから外れなければいいかなって思っています」
人生で一番怖かったレース
「どんな思いでMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)を走っていたんでしょうか?振り返れば3位の小原選手とは、結局4秒差でした。これについてはどうですか?」(Dさん)
昨年9月15日、東京の明治神宮外苑で行われたマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)には10人の選手が東京オリンピック代表をかけて出場しました。
1位の前田穂南選手は2時間25分15秒。2位は鈴木亜由子選手で、2時間29分02秒。3位の小原怜選手が2時間29分06秒でした。
1位の前田選手と2位の鈴木選手が代表に決定しましたが、2位の鈴木選手と3位小原選手の差はわずか4秒でした。
「MGCは人生で一番恐怖と戦ったレースでした。いつ足が止まるんだろうっていう恐怖ですね。あと一瞬でも気を抜いたら、これは止まるなっていうのが分かってたので、とにかく走らないとダメ、行き急いでもダメだと思っていました」
少ないエネルギーをいかに、最後までもたせて走るかということを考えながら走ったレースだったそうです。
MGCの心理
足が止まる恐怖感があったということについては、こんな答え。
「いろいろな要素はありますね。過度な緊張感の中で走って体力を消耗したのもありますし、やはり一番の理由は力不足だと思います」
ハイペースについて行くだけの練習が出来ていなかったのも要因だそうです。中盤辺りからきつくなって、その後は力を振り絞るだけのレースだったんだとか。
「後半は弱いなーって思いながら走っていたんです」
4秒差の真実
最終的に小原選手とは4秒差。
鈴木「あれはもうびっくりしましたね」
声援の雰囲気から20~30秒の差を保って走っていると感じていたそうですが…。
鈴木「まさか最後、4秒まで迫ってるとは思ってなくて。最後、直線が見えた時に、いけないんですけど、やっとゴールできるって思って気が緩んでしまったんですよね。それで、それまで張ってた緊張感がフッと解けてしまったんです。最後、もう歩いてましたもんね」
若狭「ほぼそんな感じになってました」
鈴木「正直におっしゃいますね」
若狭敬一とは、名古屋大学経済学部の先輩、後輩の間柄だからこそ、ずけずけ言えるやり取り。反省点は気の緩み。鈴木選手にとって、心と身体は一致するということを実感した試合だったそうです。
東京オリンピックへの意気込み
鈴木「日々、気の抜けない状況が続いているんですけども、今ある状況に感謝して、とにかく自分のベストを尽くしていきたいです。しっかりと勝負できる状態でスタートラインに立てるように、日々、努力しますので応援よろしくお願いします」
力強く言う鈴木選手ですが、大学の先輩としての話しやすさからか、若狭がこんな質問をしました。
若狭「こんなことを聞く報道陣はいないかもしれませんし、私も勇気を振り絞って聞きますが、もしオリンピックがなくなったらどうですか?」
禁断の質問の答えは?
この若狭アナの質問に対し、鈴木選手は…
鈴木「それは考えるんですけど、禅の考え方に"悟る"ってあるじゃないですか。修行って悟ったら終わりじゃないらしいんです」
禅では、悟った瞬間は一瞬だけで、修行に終わりはなく、一生続くものなんだとか。
鈴木「もしそこにたどり着いたとしても、先がまだあるらしいんですよ。次があるっていう事は、次のゴールも絶対あると思いたいです。でも、それも関係なくて、今、一瞬を大事に日々自分と向き合って取り組んでいくことが一番じゃないかと思います」
考えながら、丁寧に答えた鈴木選手。
鈴木「それを心の中で唱えて、すごく大事にしてやっています。これで大丈夫ですか?」
若狭「いま先輩、ジーンときちゃってますよ」
若狭先輩よりも、しっかりした鈴木亜由子選手でした。まずは名古屋ウィメンズマラソンでどんな走りを見せてくれるか期待しましょう。
(尾関)
若狭敬一のスポ音
この記事をで聴く
2021年01月30日15時06分~抜粋