若狭敬一のスポ音

告知すべきか?せざるべきか?映画『フェアウェル』を観て考えよう

今月から公開されている第77回ゴールデングルーブ賞受賞作品『フェアウェル』。
この映画について、ダイノジの大谷ノブ彦が、10月17日放送の『若狭敬一のスポ音』で語りました。

余命3ヶ月と宣告された祖母に会うために帰郷する家族の話に、いろいろ考えさせられる作品のようです。
聞き手は若狭敬一アナウンサーです。

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超特大ヒット

2019年7月、『フェアウェル』はアメリカでたった4館での公開で始まりました。それが最終的に891館という超特大ヒットになったそうです。
作ったのは新進気鋭の映画制作・配給会社「A24」。

第89回アカデミー作品賞を受賞した『ムーンライト』(2016)、『レディ・バード』(2017)、『ミッドサマー』(2019)などエッジの効いた作品を送り出している会社です。

そして監督はルル・ワンという中国系の女性。
Netflix 、Amazonスタジオ、20世紀スタジオなどの、資金力のある会社の誘いを断ってA24に決めたそうです。理由は観客との距離が近いからなんだとか。

アメリカのエンターテイメント産業専門の業界紙『バラエティ』紙上の「2019年に注目すべき監督10人」の1人にも選ばれました。
 

もしガンになったら

主人公は中国系アメリカ人のビリーという女性。両親とニューヨークに移住して、母国語である中国語はほとんど話せません。

大谷「このビリーさんが、おばあちゃん大好き。中国にいるおばあちゃんが末期ガンなので、家族で会いに行くんですが、ここからが問題でして」

ガンになった場合、アメリカでは告知するのが一般的です。
死を受け入れた上で、余生をよく生きようというのがアメリカの考え方。一方で中国には、助からない病気は基本的に告知しないという文化があるそうです。

大谷「ビリーはアメリカ育ちでアメリカ文化に慣れてますから、絶対教えるべきだと。ところが中国側の親戚は、みんな教えない方がいいと言う。ここからストーリーが始まるんですよ」
 

どっちが正しいとは言えない

大谷「ちなみに若狭さんは、自分が、もしそういう病だとしたら告知して欲しい方?」
若狭「私は、自分がもし病となるならば告知して欲しいです。ただ家族がそうなった場合、伝えるかどうかはものすごく迷うと思います」

ガンの告知で難しいのは、一般論でどうだとは言えないこと。ガンと告知されたことで、それが気になって病を進行させてしまう人もいるそうです。逆に告知されたことで、前向きに病気と向き合って、かえって長く生きる人もいるんだとか。

ガンとどう向き合うかは、その人の人間性が関係することなので、どちらが正しいのか判断できません。
近くにいる家族が、その人がどんな人かを考慮して判断するというのがほとんどでしょう。
 

若狭敬一の場合

若狭「ただ私の場合、一昨年、父が大腸がんステージ2になったんです。その時は告知するも何も、父が健康診断を受けたらガンが見つかって、医者からそのまま言われ、家族みんな知ってさあ頑張ろうっていう態勢になったんですよ」

このため告知云々と逡巡する時間はなかったという若狭アナ。しかも連絡を受けた時は、まさに野球中継中。
今まさにベンチレポートを入れようという時だったので、かなり動揺したそうです。

若狭「しかも父本人から『今、おまえ何してる?』。いま球場からタイムリー談話入れるんだけど。『そうか。俺、ガンだわ』。ええ?みたいな。
仕事が終わって落ち着いて両親と電話をして、さあ頑張ろう。いまお陰様でピンピンしてます。

私の父の性格からして、普通に受け入れて、さあ戦おうという風に切り替えられる人だったので、本人が知ることは良かったと思います」
 

大谷ノブ彦の場合

一方の大谷にはこんな経験が。

「僕も、母がステージ3の咽頭ガンになりまして、やっぱり連絡がそんな感じだったんですよ。拙いメールで『カ〝ン』って点々が離れてる全角。僕はうわ~ってなって」

思ってもいなかったほどのショックを受け、かなり落ち込んだそうです。抗がん剤が効いて、今では良くなっているそうです。

大谷「教えて欲しいっていう母親の意思もあった。最初は『どうせ死ぬタイミングだから』なんて、やけっぱちだったんですが、意外に元気だった。母はすごく弱さもある人なんだけど、開き直ったら強いから、教えてよかったですよ」
 

高評価の理由

大谷「もし自分がガンになったら?家族がそうなったら?家族でも、奥様と旦那様ではまた違います。あってほしくないけど、お子さんだったらどうだろう?その時、どうするのかを考えるきっかけになると思うんですよ」

辛口と言われる映画批評サイト「ロッテン・トマト」では、なんと99%の高評価を受けたという『フェアウェル』。
この映画の高評価の理由は、単なる問題提起だけではなく、アメリカと中国という二つの文化に挟まれてもがく主人公ビリーの成長物語になっているからだそうです。
 

ぜひ映画館へ

大谷「ビリー自身の今の生活、人生の悩みが、余命いくばくもない祖母と向き合ったことで、少しずつ溶けていくって話なんですよ。映画としてすごくよくできてるので、ぜひ映画館で観て欲しい。どうです?若狭さん」
若狭「すいません、大谷さん。観た気になりました」
大谷「おかしいだろ」

若狭「人に語れるぐらい、今、心に染みてますよ」
大谷「映画を見なさいよ。あなた、私の説明で実際に手に取ったのは…」
若狭「モスバーガーのフィレオフィッシュ。美味かった」
大谷「そのノリで映画館に行ってください」

ぜひ映画館に足を運んで、ご自身で考える機会としてみてください。 
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
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2020年10月17日12時49分~抜粋

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