若狭敬一のスポ音

10回0点に抑えた中日梅津、その後の故障を徹底分析する

ドラゴンズの若いピッチャーの中で、若狭敬一アナウンサーが期待をかけている1人が梅津晃大投手。
今年の8月2日、ナゴヤドームでのヤクルト戦で延長10回を一人で投げ抜きました。

10月10日放送の『若狭敬一のスポ音』では、この試合を解説した元中日監督の山田久志さんとあの日の梅津投手を振り返りました。

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自分との闘い

山田「梅津はあの試合は自分と闘ってましたよ。私が見ててそう感じた。ああいう時のピッチャーは良いピッチングできますよ。相手と戦うよりももっと難しいからね」

山田さんによればいくら褒めても褒め過ぎではなかったというこの日の梅津投手。

回が進むにつれて落ちてくる体力との闘い、もっとこういうピッチングをしたいという欲求との闘いなど、全てのものと梅津投手は戦っていたと語ります。

山田「ピッチャー出身の人はわかるんですよ。ああいう時はもう打たれないですよ」
 

延長10回、しかも0点

「私が感心したのは、9回にピンチを迎えたんですよ」

ツーアウト、ランナー1塁2塁。セカンドライナーを阿部寿樹がスライディングキャッチし、梅津投手はガッツポーズでした。

「恐らく彼は、あれで終わりだと思ったんですよ。『今日の仕事終わった。俺はやったぞ』とベンチに帰った。で、もう一回行けでしょ?あれ、普通だったらやられるケースなんですよ。だけど、あそこを抑えた梅津はすごい」

行かせたベンチも素晴らしい、と首脳陣も褒める山田さん。
しかし、延長10回を0点で投げ切るピッチャーは、今後出ないのでは?とも語ります。
 

フォークボールは肘にくる

残念なのは、その後の梅津投手が右肘の違和感により登録を抹消されたこと。
山田さん曰く、原因はフォークボールの投げすぎだそうです。肘を故障するピッチャーで3~4割がフォークボールを投げるピッチャーなんだとか。

「(梅津投手は)カウントも取れるし困ってもフォーク。フォークが主体の様なピッチングだから。フォークボールっていうのは、一番肘に負担かかりやすい」

ボールをリリースする時に人差し指と中指の力が加わってくれれば、ある程度、肘への負担が軽減されるのですが、フォークボールは人差し指と中指に挟んで、抜くピッチング。肘に衝撃が来るのだそうです。
 

フォークは決め球

もし梅津投手が復帰しても、今のようなピッチングを続けていれば肘の故障の繰り返しとなってしまいます。
そうならないためには、フォークボールを三振を取りにいく決め球と割り切り、そこまで追い込む球種が必要です。

肘に負担のかからない球種は何があるのでしょうか?

「梅津の投げ方見てたらカット系だね。カットボールとか、もう投げてると思うけども、カット系の精度を上げること。もしくはスライダー。そしてフォークボールじゃなくてツーシーム系かな」

フォークボールもスライダーも、落ち具合、曲がり具合が大きい梅津投手ですが、もう少し小さくて良いんだとか。

「角度あるしね。非常に将来性豊かだから、もっともっとそういうことを覚えたら、幅の広いピッチャーなれるよね。いいものを確実に持ってるから。だけど今は肘との相談だね」
 

投げ込み不足が故障の原因

梅津投手は2018年プロ入りの2年目。
同期にベイスターズの上茶谷投手、ソフトバンクの甲斐野投手がいます。3人とも東洋大学出身です。

山田「みんな故障したじゃないですか」
若狭「甲斐野も肘ですしね」
山田「なんでかわかります?結局投げてないんですよ。やたら投げ込めっていうんじゃないけど、やっぱり投げなきゃダメなんです」

近年はピッチャーの投球数の多さが批判を受ける風潮があります。
しかし、山田さんはこのように考えているようです。

山田「アメリカから来た悪しき伝統でね。アメリカはやっぱり、ああいうローテーション回るから、投げさしたら故障になりますよ」

試合数が160もあるメジャーリーグでは、中4日の登板も当たり前。故障を防ぐために、100球を目途に投球数を制限している傾向にあります。
 

アメリカと日本は違う

山田「それを、そのまま日本でも同じように言われてしまって、結局、中2日多いのに、100球で終わったりするから、結局投げてない日が多いわけですよ」

日本のプロ野球の投手で、よく投球練習をする人でも1週間にピッチングは2日だそうです。それも30~40球という少なさ。

山田「それで試合で130球とか140球投げるんだもん。それは肘にくるよね」

メジャーに移籍した田中将大投手、ダルビッシュ有投手、松坂大輔投手、黒田博樹投手などは、オフで帰国した時には日本で投げ込んでいくんだそうです。

「日本で肩を作って行くぐらいだから。あっち行ったら『今日は40球まで』とかと言われるでしょ?メジャーのキャンプ行ったら、ようわかりますよ。だから、メジャーのピッチャーも投げない人は故障するんですよ」
 

試合で使う筋肉は違う

山田さん自身は“投げ込み派”ではないそうですが、やはり、投げなければできない身体があるんだそうです。

「試合で使ってる筋力ってすごいもん。キャンプで200球ぐらい投球練習しても、肩も肘も張らんのに、試合で30~40球投げたら、次の日に肩と肘がパンパンに張る。あれなんなんだろうと思うもん」

最後に「せっかくの良い宝を、選手をね、故障させたらいかんね」と付け加えた山田さん。
梅津投手、さらには投手の皆さんへ、ある程度の投げ込みは必要というプロ野球の大先輩からのアドバイスでした。 
(尾関) 
 
若狭敬一のスポ音
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2020年10月10日13時11分~抜粋

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