若狭敬一のスポ音

巨人の文化?野手をマウンドにあげた原采配に賛成の声

8月6日、甲子園球場で行われた阪神×巨人戦でのできごと。
阪神に11点差を付けられる展開で、巨人の原監督は野手の増田大輝選手をマウンドに上げました。この起用は物議を醸しました。

ダルビッシュ有選手(シカゴ・カブス)は自身のツイッターで「最高です。大敗しているときは全然ありです」とこの采配を称えました。

9月26日『若狭敬一のスポ音』では、この件について、野球解説者の山田久志さんから意見を聞きました。聞き手は若狭敬一アナウンサーです。

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ピッチャー増田の経緯

8回裏、巨人、5番手の堀岡投手はワンアウトしか奪えず7失点。0対11になったところで、原監督はピッチャーに増田を告げました。

増田大輝選手は徳島・小松島高校時代にピッチャーとして活躍していましたが、プロ入り後は俊足の内野手として活躍しています。

若狭「これがまた抑えました」
山田「阪神打線も情けない」

若狭「このピッチャー増田問題についてはどう考えてますか?」
山田「これはありです」
 

野手登板はあり

ダルビッシュ投手同様に山田さんが「あり」とする理由は、現在のプロ野球のピッチャーの起用方法にあるといいます。
山田さんによれば、今のシステムではリリーフピッチャーがもたないそうです。
例えば今シーズンの中日ドラゴンズには完投型のピッチャーが数人いますが、実際に完投するピッチャーはほとんどいないんだとか。

それだけリリーフピッチャーに負担がかかります。そのため登板過多で、選手生命が短いピッチャーが増えている傾向があるそうです。

山田「ワンサイドゲームになったら、監督コーチの立場としたら余分なピッチャーは使いたくないですよ。明日またゲームがあると思えば無駄なことはしたくない。だから“あり”と思ってあげた方がいいですよ」
 

メジャーでは当たり前

一方でそれを認めない野球評論家もいました。
特にジャイアンツOBの中には「最後の最後まで諦めてはいけない」という不文律があるので、野手をマウンドに上げることは、チームとしてあり得ないという意見もありました。

また「相手チームへの失礼にあたる」、あるいは「味方チームのピッチャーに対して失礼にあたる」というニュアンスの発言もありました。

この発言についても「よくわかります」という山田さん。

山田「10年20年ぐらい前だったら、皆さんそう言ったと思う。でも今の野球は違うもん。だってメジャーなんか、こういうの20年前ぐらいからやってるよ」

メジャーリーグには引き分けがなく、延長で勝負がつくまで試合を続けます。途中でピッチャーがいなくなり、野手が投げることも年間何試合もあるそうです。
 

なぜ野手登板だけダメ?

山田「だってアメリカからいろんな野球のシステムがどんどん入ってきてるのに、こういうことだけダメだっていうのは、これまたおかしい話なんだよ」

申告敬遠、コリジョンルール、リプレイ検証も入ってくる中で、野手の登板は拒否するのはどうなのか、と問う山田さん。

山田「アメリカの野球を参考にして、みんな取り入れてきてるのに、日本の野球だからそれダメだ。それだったら、そういうのも取り入れるなよって私は思う」
 

巨人の文化を守るなら

さらに巨人OBの意見に対しては、こんなことも…。

山田「巨人の文化を守るなら、巨人は自前の選手を育てなさいよ」
若狭「そうですね」
山田「『巨人軍は永久に不滅です』っていう長嶋さんの名文句があったね。そういう風にするなら、巨人のユニフォームを最初から最後まで着通して、そして最初から最後まで巨人の野球をやるんだって、そういう野球をやってくださいよ」

例えば申告敬遠もしない。リクエストもしない。ましてトレードで他球団から選手を獲得しない。

山田「そういうことなら、俺はその通りだって言うけども、それはよくてこっちはダメだとかね」
 

原監督は柔軟思考

若狭「そう考えると、原辰徳という監督は非常に柔軟な監督ですね」
山田「私もまあ付き合いがあって、いろいろ話すけど…深いね。そして、よく他人のことを聞きますよ」

例えば、中日×巨人戦の解説で山田さんがナゴヤドームにいると、必ず試合前に原監督が挨拶しに来て質問するそうです。ピッチャーのことは2~3人は聞いてくるそうです。
山田さんはサンチェス投手、澤村拓一投手の例を挙げました。

山田「澤村の時でもそうでした。なんとかなりませんか?って聞くから、なんともならんね、と答えた」

一時は三軍にまで降格した澤村投手、9月7日にトレードでロッテへ移籍すると、翌日、三者連続三振と活躍しました。
 

澤村拓一投手について

澤村投手について、山田さんが原監督に言ったこととは?

山田「澤村投手って馬力あるじゃないですか。しかし若い時の馬力はだんだんなくなってくるもんなんですよ」

ピッチャーは馬力がなくなってくる代わりに、経験を積めばフォームもコントロールも良くなってくるそうです。
ところが澤村投手は若い時と同じように馬力で投げているそうです。

山田「だから不思議なピッチャーですよ。自分が一番良いイメージを追っかけすぎるんだよね。それを言っときました」

ロッテ移籍後の活躍はこの言葉が効いているのでしょうか?
 

ハッと気づく時がある

山田「私も経験あるけど、ピッチャーはどうしても自分の一番よかったイメージを持ってるんですよ」

ところが、少しずつ身体もパワーも変化してきます。相手もこっちの球に慣れてきます。ピッチャーは様々な要因で投球の仕方を変えていかなければならないそうです。
単純に、いい時のビデオを参考にすればいいというわけでもなく…。

山田「いい時を見たら悪いのも見なくちゃいけない。両方。今、選手一人一人の良い時のピッチングを撮ってるのは必ずあるはずです。しかし悪いのってあんまり見ないんだよね。
じゃあ、どこが悪いのかな?ここ違うな、とかね。ハッと気づく時がある。

野球選手に限らず、アスリートでも仕事でもそうだけど、それが引き出しってことなの。経験のある人は引き出しをいっぱい持ってるってのはそこですよ」

ピッチャー増田問題から、最後は人生の話に至る山田さんでした。 
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
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2020年09月26日13時13分~抜粋

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