若狭敬一のスポ音

山田久志が分析。エンゼルス大谷翔平投手の怪我の影響は?

10月6日『若狭敬一のスポ音』「山田久志の栄光に近道なし」では、野球解説者の山田久志さんが現役投手時代、バッターと対決する際に持っていた美学を披露しました。

また自らもエースとして活躍した山田さんが、同じピッチャーとしてロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手の怪我についても語りました。

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マー君だってやってます

「内側の方でまだ良かった。ピッチャーは外側やったら終わり。内側やった人はだいたい回復はしてる」と山田久志さん。
エンゼルス大谷翔平選手の怪我についてです。

二刀流として活躍していた大谷選手ですが、右肘内側側副靭帯損傷で一時は故障者リスト入りしました。打者としては復活しましたが、投手としてはシーズン中の復帰はありませんでした。先日、トミー・ジョン手術を受けて成功したそうです。

「今、いろんな技術があって田中のマー君だって立派に投げてるし。ただ一つ言えるのは今まで肘を痛めたのピッチャーはみんな疲労でやってるんですよね」

おかしいと思いながら投げているうちに痛みが来てドクターストップかかるそうです。

「やった」ってのはやっかい

「ところがね、ピッチャーの私から見て怖いなと思ったのは、大谷選手は投げてる瞬間にやったんですよね。痛めた時わかるんですけど、投げた後に手をブラブラっとするんですよね。あ~やった、って感じなんですよ」

疲労で腱が摩耗して耐えきれなくなった故障はそんなに重症ではないそうですが…。「あ、やった!というやつはなかなか厄介。それは心配です」

実は山田さんも現役時代に肘の故障を経験しています。山田さんの場合は疲労が蓄積しての故障でした。

「私の時は手術なんてなくて痛み止めしかない。それでまた投げるっていう過酷な状況でした。それでも治るんだね~」と山田さん。

「それ、治ってるんですか?」と思わず若狭敬一アナが聞き返すと、「治ってるんだよ。人間の身体って不思議なんだ」と他人ごとのように言う山田さんでした。

柔軟性にびっくり

大谷選手は怪我の後、バッターとして復活しました。

「これはすごい。オープン戦の時は、大谷のあのバッティングはアメリカでは難しいのかなと思ったの。ペナントレースが始まったらまずフォームが変わってたもんね。足上げてないもん」

左打の大谷選手は、右足を上げてステップして打つスタイルでした。ところが開幕すると、すり足さえしてないなくて、ノーステップに近い打ち方に変わっていました。第一打席からヒットを打ちました。

「高校ぐらいから野球をやってきて日本ハムに入って、作り上げたフォームですよ。これでやれると思ってメジャーへ行ったけど、最初は全く打てない。そこでパッと変えて結果出せるっていう、この柔軟性はちょっと考えられないよ」と絶賛する山田さん。

松井とは違うホームランバッター

打撃にしろピッチングにしろ、ある程度固まったフォームは変えにくいそうです。

「バッターでも変えた時はちょっといい結果が出るって言うけど、それが続かない。また試行錯誤していく。これだって物をつかむのに何年もかかるとか、そういう話を聞くじゃない。
それを1年目でやってんのよ。それも何試合かで。考えられないよ」

同じ左バッターで元ヤンキースの松井秀喜さんと比べる山田さん。

「松井もホームラン打ったけど、ライトへ引っ張るタイプ。大谷は違うもんね。センターとレフトへホームランを打つバッター。左右へ打つ幅が広いもんね」

大谷翔平対山田久志

大谷翔平選手に、全盛期の山田久志さんならどう攻める?まず初球はどこに?

山田「インサイドの高め。一発ちょっといったろかいっていう感じだね」
若狭「強気ですねえ。アウトローへのシンカーではなくて?」
山田「それはアカン。良いバッターとの勝負の世界、私の中ではそれは許されない」

アウトコースは山田さんの美学に反するようです。

「まずはインコースか、真ん中高めに投げて振ってくるかどうか様子を見てみる。もちろんボール。見送りなり、振るなりで相手の感じをまず察知する。
空振りでも、これは甘く行ったらえらいこっちゃなっていう感覚を持つか、これなら大丈夫だと思うか…待て待てってね、いろんなことをその一球で考えるわけですよ」

当時の一流のバッターは?

「私はそこへ投げるから、お前もそこ狙って来いよっていうやり取りができる相手じゃなきゃダメなわけね。今のバッターだったら『山田さんのインコースの高めは凡打にしたらアカンから手は出しません』っていう選手が圧倒的に多いのよ。

自分の好きなところを待つとかね。そのピッチャーの一番良いボールを打ちに来るっていうのがやっぱり一流とか超一流なの」

そんな山田さんに、当時のパリーグで対決した一流のバッターは誰かを聞いてみると…

「錚々たるメンバー、みんなそう。土井(正博)、大杉、張本、野村。この辺はもう『山田の真っ直ぐしか打たない』っていうバッターだったね」

最初に名前があがった土井正博さんは、現在中日のバッティングコーチ。残念ながら今季限りでの退団が決まったようです。

土井正博コーチの凄さ

「近鉄の18歳の四番バッターよ?」と声が大きくなる山田さん。

土井さんは高校を卒業したばかりで4番を打っていました。さらに…。

「ホームランも5百本近く打って、2千本以上ヒット打って、すっごいバッターだったのよ!」

山田さんの言葉に熱が入ります。
土井さんは「アウトコースのボールをどうやって左中間へホームランするかを求めた人」だそうです。

右打ちの土井さんは、アウトコースの球が来た時に、さすがにレフトオーバーは無理なので、とにかく引っ張ってレフト方向、どうやって左中間へホームランを打つかをずーっと考えていたんだとか。
ライトへ流せばいいのにと思いますが、そこが土井さんなりの美学だったわけです。

自分に厳しく極めていく

「ホームランバッターで凄いスイングしてたんだから。構え方は、バットのヘッドをピッチャー側に向ける、今のカープの新井選手みたいな構え方。あれをもう少し低く構えた感じ」

迫力がある構えです。さらに体つきも凄かったそうで…。

「大阪弁で言うと“ごっつい”。“ごつい”じゃなくて“ごっっっつい”って感じ」

土井さんについて「こと野球に関しては、自分に厳しかった。自分の道をガーッと極めていく人」と山田さん。話すと優しい先輩で、他人に対してそれほど厳しいことは言わなかったそうです。

土井正博さんプロ通算2452安打。1400打点をあげています。

「当時のメンバーと大谷とかがダブってくるんだけども、やっぱり一流のピッチャーの一流のボールを狙って打ちにいくってぐらいの選手が増えてこなかったら、プロ野球は面白くないよ」

土井さんから教えを受けた中日の若い選手、特に福田選手などはマンツーマンで指導を受けていますから、何か受け継いで迫力のあるバッターになってほしいものです。
(尾関)
若狭敬一のスポ音
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2018年10月06日13時16分~抜粋

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