今年もナゴヤ球場に隣接されている選手寮「昇竜館」にたくさんのルーキーが入りました。
ナゴヤ球場では連日、合同自主トレが行われています。1月20日『若狭敬一のスポ音』では元中日ドラゴンズ監督でＣＢＣ野球解説者の山田久志さんに入団当時の寮の様子を聞きました。
とにかく部屋が狭い
1968年、富士製鐵釜石から阪急ブレーブスにドラフト1位で入団した山田久志さんも、入団後3年間は寮生活でした。阪急の当時の寮はどんな感じだったんでしょうか？
「大変。小さいベッドがあって、歩く幅があって、ベッドに寝たら足元のほうにはテレビを置く台があって、入口の所に冷蔵庫」
冷蔵庫も今のように大きい冷蔵庫は入らないので、家庭用の冷蔵庫の半分か1/3ぐらいの大きさだったそうです。それでも入れるのは飲み物だけだったので何とかなったそうです。部屋がとにかく狭く四畳半もなかったそうです。
「野球用のバッグを置くのが床に置けないくて箪笥の上だったもん。床に置いたら、自分が歩く道が塞がれる。本当に小さかったんだから。それで、部屋に冷暖房なし。狭い部屋で冷房禁止なんていったらやってられないよ」
暑さは食堂でしのぐ
夏はどう暑さをしのいだんですか？
「ずっと食事会場にいる。そこの冷房が、業務用の台でよく効いたんです。そこか麻雀やったりする娯楽室」
麻雀はいつでもOKだったそうです。
「入口の隣が麻雀ルーム。入り口の左側奥が食堂。夏はそこにみんなたむろしてるわけ。部屋に上がったら大変だもん。暑いのはしのげないよ」
一軍へのモチベーション
「寒いのは着ればなんとかなる。でも本当に夜の熱いのだけはどうしようもないね。それで、しょっちゅう同年代の加藤秀司（ドラフト2位）とかね、飲みに行くんですよ。そうすると門限があるんですよ」
詳しくは語らない山田さんですが、門限お構いなしの生活をしていたようです。
当時のファームの門限は10時半。1軍の選手はナイターがあるので、もちろん門限はありません。
「だから一軍に行きたくてしょうがないのよ。一軍に行ったら門限ないから、よーし早く一軍へ、と思ってやってるんだけども、帰ったらやっぱり暑いのは暑い」
当時の山田さんの一軍へ行くモチベーションは門限でした。
退寮宣告
「私と加藤は暑い寒いと文句ばっかり言って、いっつも悪さしてるでしょ。そういう生活をずーっとしてるから、二年目の秋の練習が終わった後に、二軍の監督でもあった片岡という寮長に呼ばれたわけ。
お前ら二人は退寮だって言われて。当時、監督は西本幸雄さん。今度は西本さんに呼ばれてね。『片岡のおじさんが山田と加藤を退寮さすって言ったらしいが、おまえら何やったんだ』と。
『まじめにしてました。規則は全部守ってました』と答えたんだけど、『嘘つけ馬鹿野郎。全部報告を受けてる。今から1カ月、門限、外出、全て規則通り。破ったらクビ』って怒鳴られましたね」
次の春、キャンプの前に寮を出たそうですが、なぜ秋にすぐ出なかったのでしょう？
当時ならではの、こんな理由がありました。
すぐ退寮できない事情
「昔はキャンプがなくて、全部自主練習じゃないですか」
今みたいに練習場が確保できないので、球団のグラウンドで練習です。また今と違って、選手と球団の間で12月と1月がフリーになる決まりはありませんでした。
「当時はずっと練習。コーチが練習するぞ、と言えば行かなくちゃいけない」
グラウンドは寮の近くにあるので、寮を出てしまうと練習する場所がありません。さらにこんな厳しい規則がありました。
「車は3年間禁止なのよ。運転ダメ。もうとにかく何でもダメなの。ゴルフもダメ」
退寮すると、プロ野球選手としての生活がほぼできません。
「11月ぐらいで退寮したら、途方に暮れるし、飯も困るし、練習もできないし、車が禁止だからどうやって通ったらいいかわからない。そういう困ることがあるから、お利口におとなしくしとこうと思って」
春のキャンプ前に退寮した山田さんは、その年から主力投手として活躍するようになりました。
山田さんの話を聞けば聞くほど、今の選手は恵まれていることがわかります。早く一軍に行きたいというプロ野球選手のモチベーションには、いろいろな理由があるんだなと思います。
（尾関）
若狭敬一のスポ音
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2018年01月20日13時11分～抜粋