伝説のサブマリン投手、元中日ドラゴンズ監督の山田久志さんが語る『若狭敬一のスポ音』のコーナー、「山田久志の栄光に近道なし」。
11月18日は山田さんが今シーズンの京田陽太選手を評価し、さらに強いチームの土台作りの話題まで熱く語りました。
聞き手は若狭敬一アナウンサーです。
祝セ・リーグ新人王!京田陽太選手に大器を予感する山田久志
三拍子揃った京田選手
昨日(11/20)新人王が発表されました。下馬評では横浜DeNAベイスターズ濱口遥大投手との一騎打ちと言われましたが、最終的に中日ドラゴンズの遊撃手・京田陽太選手が新人賞を獲得しました。
今年はルーキーイヤーで頑張った彼に対する山田久志さんの評価は?
「高いです。久々に走攻守三拍子、それも高いレベルでそろった選手。珍しく打つ方も、守る方も、走る方も魅せられる選手がドラゴンズに誕生した」
こう語る山田さん。二拍子までの選手なら結構いるんですよね。
「いっぱいとは言わんけど、おおよしよし、という選手はいる。ただ三つはなかなかいない。京田はショートの守備も良くなってきた。スローイングの安定感が良いし、あの足があるから守備範囲もそこそこ良い。これからは守備で見せられるようになったら、スーパースターに近づくね」
バランスのいい走り
シーズン前、キャンプで見た時の印象はどうだったのでしょう?
「ここまでやるとは思ってませんでした。私はひ弱に感じたので」
これではプロのスピードについていけず、成長には時間がかかると思っていたそうです。
「走塁練習を見た時に、速いやつがいるなと思ったら京田だった。走り方がキレイだよね。足だけが回転しているような感じで、上体が動かない。バランスがいい証拠ですね」
自信が自信を産んだ
ひ弱に感じたということですが、事実、開幕当初はなかなかプロのスピードについていけなくて、特にバッティングでは、あまり前に飛んでいない印象もあった京田選手。
「最初は当ててしまう感じだったね。でも何かのきっかけがあったんでしょうなあ。引っ張れるようになって、ライトへ良い打球が飛びだしたもんね。
経験がまだない人って、自信が自信を産んでいくって、よく言うんです。それと堂上直倫だったはずのショートに起用されたこと」
良い方向に勘違い
「キャンプでは、堂上(直倫)選手がレギュラーだと思って、京田も見てるわけですよね」と言う山田さんに、「そういうもんですか?」と驚く若狭敬一。
「口では、ショートのポジション獲りたいです、みたいなこと言ってましたけれども」とアナウンサー目線の若狭。
「そうは言ったって、堂上がバリバリ守って、打ってるわけだから。自分はまだ、そこまで勝負できないなと思いつつ、最初はやってるんですよ」と山田さん。
去年は、規定打席にも到達し、守備も安定感のある堂上さんには、とても敵わないなと思ってところへ。
「今度は自分を使ってくれるわけでしょ。そうしたら良い方の勘違いをする。俺って凄いんじゃないかなと思う。それがまず、きっかけになるわけ。それで結果が出たら、やっぱり俺ってできるわ、という風にどんどん良い方に伸びていく」
プロの世界は安心が禁物
「使ってもらえた時に良いモノを出したから、今の京田があるわけ。プロ野球の世界で俗に言う"チャンスを掴んだ男"の一人ですよ」
山田さんによれば、どんな選手にも入ったら3回ぐらいはチャンスがある、とのこと。京田選手は最初のチャンスを掴んだということです。
「堂上直倫なんかね、チャンスは3回どころじゃない。6回、7回チャンスがあった。で、やっと去年チャンスを掴んだと思った。オフはこんなことをして、キャンプはこんなことをして、ペナントレースはこんな成績を目標にしてって思ってた。
ところが始まったら、あれよあれよという間に自分のポジションがなくなってしまった。やっぱりプロの世界は安心したらあかんね」
来年の京田選手は?
となると、来年京田選手がここまでやれる保証は?と尋ねる若狭アナに「ありません!それはないです」激しく否定する山田さん。
「プロの世界は、成績を毎年ちょっとずつ上積みしなくちゃいけないんですよ。今年、仮に京田が新人王獲るとする。ならば来年の京田への、チームが与えるハードルは高いですよ」
打率が2割6~7分では物足らないですし、盗塁も20個そこそこではどうなの?と、やっぱり求めるものは高くなります。
ハードルを越えていく選手たち
「それを確実に、一人一人が上げてきて、今のチームを作ったのが広島カープ。カープのレギュラー陣を思い出してください」
菊池涼介、丸佳浩、田中広輔、鈴木誠也、松山竜平、安部友裕。いずれも、年々、個人成績が上がっています。
「年々ハードルが高くなっているんだけど、それに答えている。それがチームの力になってカープがあるわけ。ドラゴンズもそうならなきゃいけない」
求む。京田陽太
「京田のような選手があと2~3人出てきてほしい。だから、ショートを堂上直倫と争ってもダブることはないわけ。直倫か京田がセカンドへ行って、それでガチッといけば、凄い強力な二遊間ができる可能性があるわけね」
お互いに、年々自己成績を上げるような形でやっていくとなると、思い出すのは往年の荒木と井端であり、福留と森野です。
「そうなってこなきゃ、チームは常にクライマックスとか、ファイナルとかシリーズまでは簡単には行けないですよ。カープなんて一朝一夕にできたチームじゃないですから」
京田選手の評価から、強いチームの土台作りの話になりました。どんどん京田選手のような選手が出て来て欲しいものです。出でよ、第二、第三の京田陽太。
(尾関)
※画像は昨年10月のものです。
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