「ホスピタルアート」。
病院や療養施設で、癒しの効果を与えるアートのことです。
現在、海外で広がりつつあるホスピタルアートを名古屋市立大学病院でも導入しています。
ホスピタルアートとは?お話を伺ってきました。
「病院怖い」から「病院楽しい!」へ
名古屋市立大学 芸術工学部 教授 鈴木賢一さんにインタビュー

教授でもあり、一級建築士でもある鈴木さん。
大府にあるあいち小児保健医療総合センターの設計に鈴木さんの後輩が設計に着手し、その時に呼ばれたことがホスピタルアートを手掛けるきっかけだったそうです。
鈴木さんの専門は学校建築でなので、子どものこともわかるのではないか?ということで、声をかけられました。
病院の、小児科の空間をどうするか・・・海外の事例を調べてみると、アートが心のケアに繋がることを発見。
ヨーロッパの国では病院の建設時に建設予算の1%をアートに当てるように法律で決まっており、アートを美術館のように展開しているところや音楽、ミュージカルなどが行われている病院もあるそうです。
是非、このホスピタルアートを日本でもやらなければ!その思いで始めました。
患者さんなどの癒しになったり、気持ちを和らげる効果があるホスピタルアート。
名古屋市立大学病院の小児外来では・・・

ポップで明るい動物園のようですね^^

「もりのほし」というテーマで描かれています。
小児外来ならではの、こだわりがたくさん詰まっているんです。
不安を抱いている子供たちを包み込むように、天井にはクジラ、床にはお魚が。


さらに床には子どもが診察室に入りやすくなるように、待合室から診察室の入口に向けて足跡を描いています。
14部屋ある各診察室の扉には動物の絵の中に数字が隠れているんです。

ん~と、4番!
診察室へ子どもを呼ぶときに、番号ではなく動物の名前で案内できたら、という思いがこめられています。

オリジナルキャラクターもいるんです^^

「注射が痛いから、病院が怖い!」と不安がる子ども達の思いを払拭してくれる魔法の空間ですね。
子どもだけではなく、どの人にもアートでケアを
2003年に病棟の建て替えがあり、こことは別の建物にある小児病棟のデザインを依頼された鈴木さん。
「そのフロアだけを別世界にして欲しい」というお話だったので、「宇宙船」をテーマに

「みどりのほし」など、小テーマを設けて、木や自然、海の中をイメージした空間を作りました。

青や緑・黄色などの普段病院ではあまり使われないであろう色も使い、表現。
完成した病棟が非常に評判がよかったこともあり、2007年にここ小児外来のデザインも手がけることになりました。
こだわりが詰まったアート。
基本的には鈴木さんが教授をしている名市大芸術工学部の学生が主体となって行いました。
大きな方針や方向性を立てて、実際にデザインするのは主に学生です。
ここのデザインは20人くらいで10日かけて作ったそうです。
参加する学生は授業ではなく、完全ボランティア。
「子どものために」「病院のために」と純粋に思ってやって欲しいなという思いからこのような形で進めています。
名古屋市立大学病院以外の施設では、パフォーマンスの一環で実際に描いている様子を見てもらったり、子どもが落書きをしたものをモチーフにして描いたりしたそうです。
「自分がこれを描いたんだよ!」と子どもとのコミュニケーションも取れたりもしますし、看護師の募集をしたときにこういうアートがあるということを知らせたことで、募集が楽になり職場環境の改善にもつながったことも。
名古屋市立大学病院だけでなく、他の施設でもホスピタルアートに携わり続けている鈴木さん。
「今は小児科での実施が多いホスピタルアートを、今後は高齢者や成人の方に向けた、今までとは違うアートの形でやりたい」。
子どもだけじゃなくて、大人だって病気や病院に不安を感じます。
アートホスピタルは、病院だけじゃなくて、老人施設でも必要。
「健康な人もアートで元気になって欲しい」という思いのもと、「なごやヘルスケア・アートマネジメント推進プロジェクト」として、鈴木さんは今後も活動されます。
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