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クリプトン伊藤代表が明かす「初音ミク」誕生とn次創作への対応

初音ミク』などのバーチャルシンガーで知られるクリプトン・フューチャー・メディア株式会社(以下、クリプトン)。

その創業者で代表取締役の伊藤博之さんが、3月12日放送の『RADIO MIKU EX』(CBCラジオ)に引き続き出演しました。

前回の「MEIKO」「KAITO」の開発秘話に続き、2007年に登場した「初音ミク」の開発やニコニコ動画の影響、n次創作への対応など、清水藍が尋ねました。

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MEIKO・KAITOとは製品開発に変化が

2007年8月31日に発売された歌声合成ソフト『初音ミク』。
MEIKO・KAITOの発売から少し時間が開きましたが、製品開発などに変化はあったのでしょうか?

伊藤「VOCALOID無印から、VOCALOID2にエンジンが切り替わったタイミングで、『何か新しいことをやろうか』って話を(ボーカロイド企画開発プロデューサーの)佐々木(渉さん)ともしまして。

もともとキャラをそんなにこだわって作る感じではないところからスタートしたので、中の人(の声)の選定も含めてやりたいと進めた最初のボーカロイドになります」

この『初音ミク』からは「キャラクターボーカルシリーズ」とラインナップ名も変わり、何人か声優などの声を聞いた上で、藤田咲さんの声をベースにすることになりました。

2007年は、ニコニコ動画やYouTubeなどの動画ポータルが日本で本格化した頃と重なります。
「振り返ってみれば、初音ミクが誕生した時期が本当に奇跡的なタイミングだった」と伊藤さんもしみじみ。
 

ニコニコ動画の影響

2007年前半は、初音ミクの開発真っただ中でした。
ちょうどニコニコ動画が一気に広がるタイミングでもあり、再び『MEIKO』が売れ始める現象が見られたそうです。

伊藤「なんでだろう?って(MEIKOが再び売れた)理由を調べると、ニコニコ動画っていう動画サイトでMEIKOに歌わせた曲とかが上がっていて。

『あぁそうか、初音ミクも(MEIKOと)同じになるよね』って何となく初音ミクの開発中から社内で意識共有されていました。

そういう使い方をユーザーはしたいだろうし、音だけでなくビジュアルも伴わないとダメだから、動画の素材としてキャラクターのイラストがないと作りづらいので、ビジュアルを公開しようとか話してましたね」

初音ミクは、シンセサイザーのモチーフが使用されたデザインのインパクトと、可愛らしさを持ち合わせた独創的なものとなり、公開直後にファンの心を掴むことになります。
 

n次創作を見据えた柔軟な対応

ニコニコ動画が2007年に盛り上がるタイミングで『初音ミク』は発売され、やがてオリジナル曲の公開も増えていきます。
ユーザーがオリジナル曲を投稿する様子は、伊藤さんにどう映っていたのでしょうか?

伊藤「毎日(ニコニコ動画を)観てました。僕だけじゃなくて社員も。いい作品も多くて注目してましたね」

その中でも印象に残っているのは、オリジナル曲も多かったと同時にネタ曲も多く投稿されており、興味深く見ていたとのこと。
伊藤さんは、ユーザーたちが盛り上がる様子を「追認」という言葉で表現します。

こうしたキャラクターの利用で問題になるのが、二次創作、三次創作…と続く、いわゆるn次創作。
こうした展開を予見し、クリプトンでは同年「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)」という利用についての規約を定めました。
このライセンスを守る範囲では自由な創作活動が維持され、健全な形で広がりました。

ただ伊藤さんは、最低限のルールだけは決めたものの、最終的には「ユーザーに委ねる形にしていた」と振り返ります。

そして発売直後の「初音ミク現象」について、日本独自の同人文化を例に、題材があって祭りが起こる現象と同じような広がりを見せていたのでは、と分析します。
 

互いの創作を認め合う温かさ

初音ミク』10周年を記念したあるイベントのキャッチコピーに「すべての創作に感謝を」とあり、温かい気持ちになったという清水。

『マジカルミライ』などの公式イベントでは、こどもが描いた作品も、大人が描いた作品も平等に展示されており、このコピーの精神が体現されているようです。

伊藤「無断で使ってこの野郎って考えるんじゃなくて、自分の作品に注目して二次創作・三次創作の題材にしてくれたんだっていう風に考えると違うじゃないですか。

使ってもいいけど、愛のある使い方で自分の作品を認めてくれると、クリエイターも嬉しいし、次の創作のモチベーションにしてくれるのかなっていう気はしますね」

クリプトンが運営する投稿サイト「piapro」(ピアプロ)は、「音楽・イラストを使いました」とユーザー同士が感謝を伝え合うコミュニケーションツールとして機能しています。

こうしたクリエイター同士のリスペクトと自由が保たれていることが、15年後の現在に至るまで、多数の作品が生まれ続ける理由なのでしょう。
 

それぞれのキャラクターの魅力

初音ミクの発売後、「キャラクターボーカルシリーズ」として2007年暮れに『鏡音リン・レン』、2009年には『巡音ルカ』が発売されました。

伊藤「開発の順番的にはいろいろあるんですけど…。ホップ・ステップ・ジャンプじゃないですけど、初音ミクできっかけを作って」

海外のサイトに作品を広げていくことも念頭に置かれていたという『巡音ルカ』は、発売時期は後発ではあるものの、開発に取り掛かった時期は早かったそうです。

伊藤「リン・レンでは男女の対比を精細に演じ分けてもらったりとか。ルカは日本語と英語、バイリンガルを同じ声優さんが担当してます。だんだんできることが広がっている感じです」

クリプトンが世に送った6体について「ちょうどいいバランスになったのでは」と分析する伊藤さんでした。
(葉月智世)
 
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2022年03月12日20時33分~抜粋

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