RADIO MIKU

「初音ミクの生みの親」クリプトン伊藤代表が明かす開発秘話

初音ミク』などのバーチャルシンガーで知られるクリプトン・フューチャー・メディア株式会社(以下、クリプトン)。

その創業者で代表取締役の伊藤博之さんが、3月5日放送の『RADIO MIKU EX』(CBCラジオ)に出演しました。

創業時の事業から歌声合成ソフトの開発に至る経緯や、日本初のバーチャルシンガーであるMEIKO、そしてKAITOの開発秘話を清水藍が尋ねます。

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ラジオ好きな一面

インタビュー早々、ラジオ好きであることを明かす伊藤さん。

伊藤「ずっと北海道なんですけど、ラジオが友達で遠くの(地域の)ラジオも結構聴いていましたよ。CBCも聴いていたと思います」

遠距離受信で名古屋のCBCラジオも聴いていたという伊藤さん。
清水は自身の番組『RADIO MIKU』を聴いたことがあるかを尋ねると、「録音を聴いてました」とのこと。

バーチャルシンガーのファンから声を掛けられたり、様々な場所で講演会などをこなす機会の多い伊藤さんですが、ラジオへの出演はあまりなかったそうです。
 

音の商社

クリプトンは「音の商社」という顔を持っています。

伊藤「もともと音楽が好きで、ソフトを使って音楽を作るのを趣味にしてたんですよ。
日本で売っているソフトもあれば売っていないソフトもあって。

海外に行けば買えるけど、行かないと買えないので不便だと思ってたので、輸入して商売をやろうって考えて」

自身の趣味から、海外の音源を扱うために27年前に起業した伊藤さん。
DTM用の効果音、楽器や人の声のフレーズが入ったサンプリングCDが好きで集めているうちに、輸入して販売することになりました。

今ではバーチャルシンガーで知られるクリプトンですが、企業ページを見ると、現在もさまざまな音源を販売していることがわかります。
 

コンピュータで音楽

そもそも伊藤さんはどんな音楽を聴き、自身で作られていたのでしょうか?

伊藤「昔はギターとか好きで、高校生ぐらいの時はロックとか聴いてたんですよ。昔のロック小僧ってスポーツみたいにいかに速く弾くかとか、特殊な奏法をマスターして披露するのがギタリスト、みたいな感じでだんだん疲れてしまって。

コンピューターなら自分が演奏しなくてもプログラムでやってくれるので、こっちの方がいいなと思って」

ロックを聴いていたものの、次第にテクノポップのような電子音楽へと変わっていったそうです。
 

インタビュー中、伊藤さんの背後にはギターが置かれており、今でも弾くのか聞いてみた清水。
伊藤さん曰く「弾くというよりは指のリハビリで触る程度」とのことですが、今でも楽器は身近なようです。
 

歌声ソフトへの興味

2004年、クリプトンは海外製の歌声ライブラリ音源『LEON』『LOLA』を日本で発売します。伊藤さんにこの経緯を尋ねました。

伊藤「コンピューターで楽器をシミュレーションすることはできます。ドラムやピアノ、オーケストラは楽器のソフトに演奏させてテンポの操作や楽器を重ねられるんですよね。

バーチャル・インストゥルメントって言うんですけど、海外の取引先が作り始めていて、お客さんもクリエイターでドラムやピアノの音源でカッコいい音楽を作り上げていってたので、会社としては楽器の音源を増やすことに取り組んでいました」

そして、ヤマハが開発した歌声を再現する音源技術「ボーカロイド」のライブラリ販売を持ちかけられ興味を持った伊藤さん。
ボーカルの音源があればDTMでの音楽の幅が広がると考え、取り扱いを始めることになりました。「音の商社」としては当然の帰結だったのかもしれません。

そして自社でもボーカロイド音源の開発・販売を始めることになります。
開発の難しさ以上に面白さを感じていたという伊藤さん。

伊藤「初期のボーカロイドは機械っぽさもあって、でも当時の最新技術では人間っぽさが半端ないクオリティの音を作ってくれるので。時々機械っぽい素が出るのが、SFっぽいのも面白いなと」

全てが写実的ではなく、多少人工的な部分があるところに面白さを見出した伊藤さん。

そしてクリプトンは2004年11月に国産初のボーカロイド音源『MEIKO』を、2006年2月には『KAITO』を発売します。
 

MEIKOとKAITO

伊藤さんにとって『MEIKO』と『KAITO』の存在とは?

伊藤「最初に作ったボーカロイドだったので、商品コンセプトとかを決めるプロセスがあって、パッケージをどうするか?とか。今でこそ、キャラクターがバーンとありますけど」

海外製のボーカロイド音源『LEON』などのパッケージは、歌う人の口のアップ画像のみ。
対する国産第一号の『MEIKO』では、躍動感のあるキャラクターの全身が描かれました。

伊藤「僕はキャラがあった方がいいと思ったんですよ」

この発想は、バーチャルシンガーがソフトウエアを超えたキャラクターとなり、やがてニコニコ動画を通してファンに「創作の連鎖」が生まれるきっかけとなるのです。

その『MEIKO』のキャラクターデザインは、意外にも当時の社員の手によるものでした。
マンガを描くのが好きな社員だったそうですが、出社しないことがあり「納期が大変だった」と苦笑しながら振り返る伊藤さん。

社員で作り上げた『MEIKO』に続く『KAITO』では、名前を公募してユーザーのアイディアを取り入れることに。

現在日本では数十ものバーチャルシンガーが販売されていますが、原点とも言える2体があったからこそ、『初音ミク』以降の展開へと繋がります。
次回のインタビューにも期待です。
(葉月智世)
 
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2022年03月05日20時30分~抜粋

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