政府は中央線などがない一般道路の法定速度の上限を時速60kmから「時速30km」へと引き下げる「改正道路交通法施行令」を閣議決定しました。
いわゆる生活道路での事故防止を図りたい考えで、2026年9月1日に施行の予定です。
8月8日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、この生活道路の法定速度改正について、アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士が解説しました。
「道路」の分類
道路はいろいろな法律で定めがありますが、今回の改正に関係しているのは主に「道路法」と「道路運送法」です。
道路は、国や自治体が管理する「公道」と、個人や法人が管理する「私道」の大きく分けて2つあります。
公道は「道路法」が関わるもので、主に「高速自動車国道」「一般国道」「都道府県道」「市町村道」の4つ。
「高速自動車国道」は、東名、新東名、名神、新名神など、都道府県をまたがって交通網の重要部分を構成するもの。
「一般国道」は、同じく都道府県をまたぐ重要な道路のうちのひとつで「国道1号線」などと呼ばれているもの。
さらに道路管理者が都道府県のものが「都道府県道」、市町村が管理するものが「市町村道」です。
とはいえ、あらゆる道路が全てこの4つに分類できるわけではありません。
国が路線の指定を行ったり、自治体が認定を行なって初めて道路法上の道路と扱われるため、農道・林道・私道といった「道路法上の道路ではない道路」が多数存在してます。
「慣れ」が重大な事故につながる
「道路運送法」は、自動車の交通の用に供することを目的として設けられた「自動車専用道路」に関する法律。
東海地方でいうと三重県の伊勢志摩スカイライン、伊吹山ドライブウェイがこれにあたります。
このように、実は道路にはさまざまな分類があります。
今回焦点となっている「生活道路」は実は法律上の用語ではなく、「都道府県道」や「市町村道路」などの自治体が管理する道路に当たります。
実際には「主に住宅地にある道路で、その地域に住んでる住民の方々の日常生活で利用されている区域のあまり広くない道路」のことを指します。
生活道路での事故は「実際多い」と正木弁護士。
幅の決まりはありませんが、主に1車線で5.5m未満程度のもの。歩行者が多く、通学路になっていることも多いといいます。
住宅の塀で見通しが悪い、道路が狭い、幹線道路までの通り道であるという特徴があります。
「慣れ」が出るせいで、スピードを出しすぎる、十分な安全確認をしないために重大な事故につながりやすいという特徴もあるそうです。
減らない生活道路での事故
昨年の事故発生件数は30万7930件で、10年前からはおよそ半減しています。
交通事故そのものは減少していますが、生活道路で起きた事故の割合の減少率は鈍く、全体の24%を占めています。
生活道路での事故数は、10年前からあまり変わっていないそうです。
自治体の判断で標識や表示を設置し、あえて速度制限をしているという場所もあります。
「時速30km」の理由は、「突発的な出来事に対してドライバーが対処可能と考えられる速度」だから。
さらに、自動車と歩行者が事故で衝突した場合に、時速30kmを超えていると歩行者側の致死率が急激に上昇するというデータもあるそうです。
「ゾーン30」が広がる動き
最近「ゾーン30」の路面表示を目にすることも増えました。
これも生活道路における歩行者と自転車の安全な通行を確保することを目的とした交通安全対策のひとつ。
ただこれは区域を定めるもので、定められてない地域に関してはこの「ゾーン30」の適用はありません。
このような標識や表示がなければ、基本的に最高速度は時速60kmです。
「ゾーン30」の設置によるある一定の事故の抑止効果というのは認められているので、全国的に広げようという動きは今でもあるそうです。
今回の法改正で、全国の一般道のおよそ7割が対象となる見込み。
生活道路でも対象にならないところは出てくるため、ドライバーも歩行者も気をつけなければいけない状況は続きます。
実際の運用が始まった時点で、どの道路が対象なのかを改めて確認する必要があります。
(minto)
CBCラジオ #プラス!
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2024年08月08日07時16分~抜粋