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「不同意性交等罪」への改正から1年。不同意の性被害の相談が増加

2024年08月03日(土)

ニュース

性犯罪に関する規定を見直す改正刑法が施行されてから1年。この改正では、性暴力の実態に合わせて「強制性交等罪」が「不同意性交等罪」となりました。
改正後、性犯罪に関する相談などが増えているそうです。

8月1日放送の『CBCラジオ #プラス!』ではこの「不同意の性被害」を取り上げ、アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士が解説しました。

「不同意性交等罪」とは

先月には日本代表にも選ばれたことがあるサッカー選手が不同意性交の容疑で逮捕されています。

「不同意性交等罪」は、暴行や脅迫、障害、虐待による無力感や恐怖心感にある状態、不意打ち、フリーズ状態(驚いて動けなくなる状態)、あとは立場による影響力(祖父・祖母と孫、上司と部下、教師と生徒)など広く定められています。

そういう行為をすることが嫌だと思うこと、嫌だと伝えること、したくないという気持ちがあるのに、それを最後まで貫くことが難しい状況下において性的な行為がされてしまったものを広く処罰しようというもの。

これらのことをすると「5年以上の有期懲役」に処されます。

「強姦罪」の問題点

性犯罪の処罰規定は、これまでに大きく2回改正がありました。

一番最初は「強姦罪」という犯罪。

これは被害者の抗拒を著しく困難ならしめる、かなり強い程度の暴行や脅迫、心神喪失、抗拒不能な状況下で性行為がされた場合を処罰しようというもの。

被害者は女性のみ、加害者は男性のみ、対象も性行為のみとかなり限定されたものでした。

実態として男性も被害者になり得ますが、その場合には「強制わいせつ罪」となるため、かなり処罰が軽くなってしまうという問題もあったのです。

そして「強姦罪」の法定刑は3年以上の懲役で、実は執行猶予の余地があったため、「魂の殺人」といわれる性犯罪に対しての処罰が軽すぎるという批判がありました。

さらに、被害者の申告がないと刑事裁判ができない「親告罪」であったため、2次被害を恐れて告訴ができないという状況の場合には処罰ができないという、さまざまな問題点がありました。

「強制性交等罪」の問題点

このため2017年に「強制性交等罪」に改正。

被害者の性別の限定をなくし、性行為以外の性的な行為も含むようになったことで処罰範囲が多少広がりました。

法定刑5年以上の有期懲役と引き上げとなって、原則として執行猶予がつかず実刑になる、かなり重い法への改正となりました。

しかし最も問題とされていたのは、犯罪の成立にかなり強度の暴行や脅迫、被害者側の心神喪失や抗拒不能状態を利用しなければいけないという条件があったため、裁判所の解釈によって判断にばらつきが出てしまうことでした。

実の親子の性的虐待事案に強い批判

2019年に無罪判決が4件相次ぎましたが、広く報道されたのは名古屋地裁の岡崎支部であった実の親子の性的虐待の事案。

性的虐待の事実は認めながらも、「被害者の人格を完全に支配して強い従属関係にあったとまでは認められない」「抗拒不能の状態にまで至っていたとは言えない」ということで、無罪となったのです。

暴行や脅迫がなかったとしても、反抗できるような心理状態ではないということが考慮されていない実態に、強い批判がありました。

また、性的な同意年齢が「13歳」で、12歳未満の場合は問答無用で強姦罪や強制性交等罪に問われましたが、13歳以上の場合は同意があれば成立しませんでした。

「海外と比べても低すぎるのでは?」という批判もあり、昨年の7月から「不同意性交等罪」に変わったのです。

改正の大きなポイント

この改正で最も大きいポイントは「加害の範囲が広がって、明確になった」ということ。

暴行・脅迫以外に、フリーズ、不意打ち、無力感とか恐怖心によって動けないような状況下、立場の強弱による影響も考慮した上での犯罪となり、性犯罪の実態を一部反映するようになったことで評価はされているそうです。

性的同意年齢が13歳未満に加えて、13歳から15歳の人が「5歳以上の年上の人にされた場合も対象」に、また公訴時効が5年延長になり「15年」になりました。

不同意の性被害の相談は増加傾向にあります。

元々、法改正の流れで増加傾向にはありましたが、認知件数は前年比63.8%に増加。

今年1月~5月の認知件数は1,486件でしたが、昨年の同じ時期と比べておよそ2倍に増えています。

相談が増える「ステルシング」

性被害にあってしまった人の精神的な被害は大きいため、カウンセリング、相談、被害申告対応など専門家のサポートが必要です。

しかし精神的に回復して被害申告をするまでに何十年もかかるようなケースもあるので、公訴時効が延長されたとはいえ、短すぎるという批判もあります。

とはいえ裁判をするにあたって証拠がなくなり、起訴ができないという問題もあるため、撤廃が必ずプラスになるかというと難しいところ。

さらなる時効の延長や撤廃の議論をする必要があります。

また、性被害の対象はこれで全てがカバーされたわけではありません。

相談が増えているのは、同意がある行為中に同意なしで避妊具を外す「ステルシング」という行為。

行為自体には同意しているため犯罪にはなりませんが、性被害と同じ部分もあります。

こういった実際の性被害に対してどこまでカバーするかは、今後の改正についても議論が必要になる部分です。

子どもの頃からの性教育が必要

性教育は日本ではタブー視されてきたため、実態とはかけ離れたアダルトビデオなどで勉強して、それを当たり前だと思ってしまう現実がありました。

「相手の気持ちを尊重する、自分の気持ちも尊重する」
「いつでもやめてと言っていいし、言われたら絶対に止めなければいけない」
「明確なOKが必要」

これらを小さい頃から当たり前だと思っておかないと、大人になってから変な勉強の仕方をして間違ってしまうことに繋がりかねません。

タブー視せずにしっかり教えていかなければならない部分ですが、それには親の理解と学校教育の拡充も必要です。
(minto)
 
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2024年08月01日07時16分~抜粋
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