『毎日新聞』の一面によると、厚生労働省は2026年度にも正常分娩での出産に自己負担をなくす検討を始めたということです。
公的医療保険を適用し、経済的な負担をなくして、少子化対策に繋げたい考えのようです。
6月27日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、この「出産費用」について永岡歩アナウンサーとアディーレ法律事務所の正木裕美弁護士が語りました。
出産費用と一時金の「いたちごっこ」
出産費用は、2022年度の全国平均でおよそ48万2000円。ただ施設ごとに料金を設定できることもあり、都道府県によって異なります。
平均額が最も高いのは、東京都のおよそ60万円。最も低いのは、熊本県のおよそ36万円で、24万円もの地域格差があります。
政府は昨年4月から出産育児一時金を42万円から50万円に引き上げましたが、東京で考えると自己負担金が残る計算です。
厚生労働省によると、出産費用は毎年1%前後上がっているとのこと。
出産費用が上がるから、一時金を上げる。一時金が上がるから、出産費用を上げるという、まさに「いたちごっこ」を繰り返しています。
このため、全国一律の公定価格を設け、標準的な出産については保険適用できるようにする考えです。
「出産なび」で「見える化」
公定価格が50万円以下になる場合、この差額は給付されるとのこと。
例えば公定価格が40万円であれば、差額の10万円は一時金として渡すという検討がされているようです。
厚生労働省は、全国およそ2,000の産院の出産費用やサービス内容がわかるサイト「出産なび」の運用も開始し、出産費用の「見える化」にも取り組んでいます。
永岡「これ本当にそうで。娘が産まれる時、どこの産婦人科に行くのかっていうのは、結局"近い"とか"新しい"とか"友達がここで産んだから"とか。口コミとか距離感とか情報って、結構ね限られたものしかなくて」
当時の永岡は出産費用については考えていなかったそうですが、実際に「いくらかかるか」ということを事前に知ることができれば、ひとつの「安心材料」にもなるだろうといいます。
産める場所が近くにあること
正木弁護士も同じく、産院探しは口コミで行ったとのこと。
多くの病院を回ることができず、それぞれのサービスと費用を知らないまま産んでしまったそうです。
正木「反面、自宅からある程度の距離感の所じゃないと産めないっていうのは現実問題としてあるので、こういうサイトで比較ができるのは、サービスの向上や価格の明確性を確保するっていう上でもいいと思いますし。情報開示の意味でも、すごく大切なことかなとは思います」
産む側にしてみれば、分娩費用の自己負担がなくなるという流れはとても大きいことです。
しかし正木弁護士が心配しているのは、「産科医が減少している影響がどこまで出るのか」ということ。
今年から医師の時間外労働の上限が下がり、24時間対応が求められる産科に対しての影響は大変問題視されていました。
さらに収入が下がることによって、クリニックが出産を取り扱わない、産科の医師を目指さないことが加速すると、結局近くに産める場所がないということになってしまいます。
「産める場所が近くに安定してあることを、最終的に考えてほしい」と正木弁護士。
こどもの減少と人件費の問題
「見える化」したのに、見えた結果「ないことがわかった」では意味がありません。
『読売新聞』では、「医療機関の収入が減ることで、医療体制を維持できなくなる懸念がある」という声を紹介しています。
静岡県のある病院では、扱う出産数が前年の700件から160件減り、8,000万円近い減収で赤字になったそうです。
産まれるこどもの数は減っても、24時間365日体制は変わりません。
人件費は変わらず赤字が続き、出産を取り扱わなくなるという悪循環になってしまいます。
永岡「自分が親になるまでわからなかったけど、妊婦さんや胎児の状況が、本当に人それぞれ。本当に人それぞれ違うから、保険適用をどこまでしますかっていうのを結構細かく見ていかないと、線引きが難しくなって、逆に混乱してしまうようなところも出てくるんじゃないかなというのは本当に感じました」
「安心して産める状況を作る」のは素晴らしいこと。一方で「周りの部分で安心感がどこまで生まれていくのか」は難しい課題のようです。
(minto)
CBCラジオ #プラス!
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2024年06月27日07時03分~抜粋