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書評家おすすめの翻訳ミステリー!平原直美『クラーク・アンド・ディヴィジョン』

2024年06月14日(金)

エンタメ

水曜日の「CBCラジオ #プラス!」では書評家の大矢博子さんが小説などのおすすめの新刊を紹介します。

6月12日の放送でピックアップしたのは平原直美さんの『クラーク・アンド・ディヴィジョン』(訳/芹澤恵 小学館刊)。
第二次世界大戦中のシカゴを舞台にした翻訳ミステリーです。

あらすじ

作者の平原直美さんは日系三世のアメリカ人で、多くの小説やノンフィクションを発表している人気作家でありジャーナリストです。
両親が広島で被爆体験をしたことから、自分のルーツとして日系アメリカ人を主人公にした小説を多く生み出しています。

物語の始まりは1940年のカリフォルニア州。日系人のコミュニティに暮らす女性アキが主人公です。

真珠湾攻撃により、カリフォルニア州に暮らす日本人は、アメリカ国籍の有無は関係なく全員収容所に送られることに。
当時の収容所はアメリカに忠誠心があると認められていれば出ることができましたが、行き先は政府の機関が決めるため、故郷のカリフォルニアには帰ることができません。

収容後、アキと両親は1年前に収容所を出ていた姉のローズと同じシカゴで住むことになります。
しかしシカゴに到着した時、前日の夜にローズが地下鉄の線路に転落して亡くなったと聞かされました。
頼もしい姉の死因が自殺と処理されたことに疑問を抱いたアキは、ローズの事故について調べ始めると…。

これはエンタメだ!

大矢さんによると、この作品の魅力のひとつは、対戦中のアメリカでの日系人の扱われ方がありありと描かれているところ。

日系人収容所での生活が詳細に綴られていたり、収容所に入る前の日系人コミュニティや収容所から出た後、戦争中に日系人がどう扱われていたのか、どんな職業に就いていたのか、周りからどのように見られていたかがわかります。

アキは生まれも育ちもアメリカで日本には一度も行ったことがないにも関わらず、ルーツは日本というだけで差別される…。「その理由がどこにあるのか考えさせられる」と大矢さんは魅力を語ります。

シビアなテーマですが、それだけではなく、ローズの死の真相を探る際には何度もどんでん返しがあったりと上質なミステリーが繰り広げられます。
またポーランド系やアフリカ系の友人とのガールズトークがあったり、ロマンスも生まれたり。

社会派的なミステリーでありながら、青春小説、エンタメとしても読み応えがあるということです。

大矢「アメリカではすでに相当な文学賞を受賞しているんですが、日本でこそもっと読まれてほしいなと、そう感じる本です」

翻訳小説が苦手な人こそ読んでほしい!

「翻訳小説が苦手な人にこそ読んでほしい」と大矢さん。

アキの両親は日本で生まれているため、英語である原文にも数多くの日本語が登場します。

例えば、マットレスは日本語でいうところの「ぺちゃんこ」だったり、日本語学校のスポーツ大会は「運動会」だったり、アキの母が「たくあん」を出してきたり。
日本語の翻訳ではそれらが全てカタカナで表記されているため、登場人物たちがこの部分を日本語で話しているというのがわかり、親しみを持てるそうです。

また二世もカタカナ表記。この言葉が英語になっていますが、英語で二世という時は日系二世のみを指します。
実は巻末解説を担当したのは大矢さん。なぜ日系二世だけが英語になっているかの理由はそちらで触れているそうなので、解説も合わせてお楽しみ下さい。
(ランチョンマット先輩)
 
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2024年06月12日08時20分~抜粋
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