CBCラジオ #プラス!

「狭い価値観で私たちを追い詰めた」日本人の女性カップルがカナダで難民認定

2024年05月22日(水)

ニュース

昨年秋、日本人の女性カップルがカナダで難民認定を受けたことが朝日新聞の一面で報じられました。

「日本では女性であり同性愛者であることで受ける差別から逃れられない」と、カナダが日本での迫害に対して十分根拠がある恐怖を抱いていると認めたものです。

5月20日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、このニュースについてCBC論説室の石塚元章特別解説委員が解説しました。

日本の政治と日本人への挑戦

このふたりは、日本で受けた差別や日本の法整備の現状などを証明する200ページにわたる資料を提出し、公聴会などを経て難民と認められました。

認定における決定通知書では「法律上の家族と認識されず、異性婚の夫婦と同じ利益を受けられない。差別が日本全体にあり、日本の別の地域に移っても逃れられない」という指摘があったそうです。

これまでふたりは、不動産業者から同性カップルが借りられる家が少ないと言われる、職場から異性婚と同じ福利厚生を拒否されるなど、さまざまな不利益があったといいます。

カナダで難民認定を受けたという事実に関し、朝日新聞の取材に答えた理由について「私たちと同じ苦しみを抱えて生きているLGBTQや女性は多く、日本政府や日本の人々に一石を投じたかった。狭い価値観で私たちを追い詰めた日本の政治と日本の人たちへの挑戦でもあった」と語っています。

先進国から大きく遅れる日本

難民認定を受けたということは、「日本にいれば迫害される、命にかかわる」ということ。

G7の枠組みでは、同性愛への取り組みは日本だけ大変遅れているとよく言われます。

石塚「そういうことを厳しく外から指摘されている。『そういう国なんだよ、あなたたちの国は』って言われてしまった、というふうに受け止めるべきなのかなっていう気はしますね」

G7では日本以外の6カ国では、同性カップルに認められている法的権利を異性婚でも認める法整備がされています。

日本でも「パートナーとしては認める」というルールを導入している自治体は多くありますが、「全く認めないよりマシ」という程度。

法律的なバックアップが全くなく、遅れているということです。

最高裁判所での違憲判決はまだ

今のこの法律が「憲法違反」である、と訴える訴訟は各地で起きています。

実際に地方裁判所や高等裁判所では違憲判決が出ていますが、まだ最高裁判所での判決が出ていないため、異性婚と同等の権利がまだないままという現状です。

法整備はもちろんですが、やはり「世論」も大きく関わってきます。

石塚「国民がそれをどういう目で見るかというのも大変大きいので、日本はそういう意味でちょっとまだまだ遅れています」

難民審査参与員の機能に疑問

同性愛者は終身刑となるアフリカ・ウガンダの女性が日本で難民申請したものの、日本は詳しい調査をせずに入管で追い返そうとしたというニュースがありました。

NPOのバックアップもあり最終的には裁判所がやっと認めましたが、石塚は問題があったと考えているといいます。

それは「難民審査参与員」という有識者たち。彼らはこの女性の話を聞いたにもかかわらず、難民認定をしませんでした。

石塚「この参与員っていうシステムがちゃんと機能してないんじゃないか。本当にちゃんと聞いてる?」

ふたりの思いが届く未来へ

同性愛者に限らず、年間約300人が日本で難民申請をしていますが、なかなか認められないという事実があります。

石塚「海外はもっと認めますからね。日本は国民の目もそうだけど、それをバックアップするルールとかシステム作りも、ほかの先進国に比べると極めて遅れている」

国際社会と比べて、日本は法整備の面や仕組みの面で遅れがあるのが現状です。

光山雄一朗アナウンサーは「今回の日本人女性カップルの『日本へ一石を投じたかった』という思いが届く未来であってほしいと思いました」と結びました。
(minto)
 
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2024年05月20日07時04分~抜粋
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