大石邦彦のNOW ON SHARE!

福島第一原発の処理水、海洋放出。安全性に問題は?

東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出について、各国メディアの報道やネット上での議論が増えています。
海への放出について、本当に安全性の問題はないのでしょうか?

7月29日放送の『大石邦彦のNOW ON SHARE!』では、CBC論説室の大石邦彦アナウンサーが処理水の海洋放出について解説します。

[この番組の画像一覧を見る]

溢れ返るトリチウム水の処理は?

政府は今年の夏、処理水の海洋放出を始める方針を示しています。

原子力規制委員会や国際原子力機関(IAEA)はこれを認めている一方、韓国や中国では反対運動も相次いでいます。
そもそも、どうして「汚染水」から「処理水」に名前が変わっているのでしょうか?

核燃料を冷やすために入れている汚染水は、毎日40トン出ます。
この汚染水に含まれる放射性物質(セシウム・ストロンチウムなど)を「ALPS」という浄化装置で取り除くため、「処理水」と呼ぶわけです。

63種類の放射性物質のうち唯一、いまの技術でも取り除くことができないのがトリチウム。
トリチウムは、川や海、雨、飲料水、そして私たちの体内にも微量ながら存在します。
三重水素とも呼ばれ、水素のように酸素と結びつくと水になります。
除去が難しいのは、水と性質が似ているためです。

タンクに貯められたトリチウム水は、原発の敷地内にいっぱいでお手上げ状態に。
そこで、巨大なプールを作って海水で薄め、漁業権が設定されていない区域に放出することになります。
海底トンネルを作り、沖合から1キロ離れた場所でトリチウム水を放出します。

世界的にみても高い安全基準

トリチウム水の安全性について、「濃度が十分薄まっているので大丈夫」と名古屋工業大学の齋藤勝裕名誉教授は説明します。

具体的には、100倍以上の海水で希釈し、トリチウムを「1リットルあたり1500ベクレル」にまで薄めます。

大石「まあ、ちょっとわかりにくいですよね」

この濃度は、国の規制基準の「40分の1」にあたります。
さらに、飲料水のガイドラインの「7分の1」なので、基準値を相当下回っているといえます。

また、年間の放出量は22兆ベクレル以下と定められており、これは事故前と同じ基準です。
つまり事故前もトリチウム水は同様に海に放出されていたわけです。
ちなみに、韓国や中国など海外の基準値と比べると、「4分の1~18分の1」の量になると大石。

大石「世界と比べると、いかに低い数字か、わかりますよね」

相対的には低くても、安全性の面で本当に問題ないのでしょうか?
第三者機関が海の幸などに含まれる放射性物質の量を調べており、調査結果も公開されています。
さらに、人や環境への影響や、本当にモニタリングを行っているかはIAEAがチェックしています。

大石「そこまで見て、お墨付きを与えたと」

政治的関係が絡む?海洋放出

海は近隣国とつながっていますが、海外との関わりはどうでしょうか?

韓国政府はIAEAの判断を尊重し、ゴーサインを出しています。
その理由は、韓国と日本の政治的な関係性が”良好”だからだそう。

大石「政治的な関係でゴーサイン出しています」

逆に、中国と日本の政治的な関係性は良好でないため、日本から中国への水産輸出品は留め置かれることに。
この懸念に対し、ある衆議院議員は「放出しなきゃだめ」と即答しています。

こうした問題では安全と安心の両方が求められますが、「安全」は良くても「安心」はまだ不十分なのかもしれません。
丁寧な説明をするとともに、万一、風評被害があった場合には、漁業関係者の方への支援をしっかりすべきと大石。

大石「マスコミは煽らない!」

「データをしっかり伝える我々の責任もありますから」と自戒を込めて呼びかける大石でした。
(nachtm)
 
大石邦彦のNOW ON SHARE!
この記事をで聴く

2023年07月29日11時43分~抜粋

関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報