石塚元章 ニュースマン!!

鉄道に乗って災害を考える!三陸鉄道が「震災学習列車」で叶えた取り組み

東日本大震災で被害を受けた三陸鉄道では、車窓を眺めながら防災について考える「震災学習列車」という取り組みを始めています。

9月2日放送の『石塚元章ニュースマン!!』(CBCラジオ)では、三陸鉄道株式会社の山野目真さんに、この取り組みについて聞きました。

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三鉄と山野目さん

山野目真さんは岩手県宮古市生まれで、現在は三陸鉄道の旅客営業部旅客営業課長を務められています。
神奈川県の大学に進学し、卒業後は東京で就職するも東日本大震災をきっかけにUターンを決意、三陸鉄道には2018年4月に入社し、故郷の宮古駅で活躍中です。

通称「三鉄」とも呼ばれる三陸鉄道は、岩手県にあるリアス式海岸の三陸海岸沿いに南北に走っている日本最長の第三セクターの鉄道です。 

2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けて分断されましたが、その後完全に復旧して全線繋がって走っています。
NHKの連続ドラマ小説『あまちゃん』でも注目されました。 

震災学習列車

東日本大震災から12年、岩手県三陸地方にはもう被害の痕跡はないそうですが、空き地が目立つのが現状だそうです。
被災前のように人が戻るには、もう少し時間がかかるのかもしれません。 

そんな今、三陸鉄道が力を入れているのが「震災学習列車」です。
貸し切り列車で沿線を移動しながら被災地の今を見て、防災について考えてもらう列車だそうです。 

一両に三鉄の社員がガイドとしてひとり乗車して、写真パネルを使いながら震災当時の様子や、現状の課題などを、運行時間の約1時間に説明していきます。
もちろん山野目さんもガイドのひとりです。

被害が大きかった場所や復興の様子がよくわかる場所では、定期列車が止まらないような場所でも、一旦停止や徐行運転を行うことで、定期列車よりも長い時間をかけて移動していくそうです。

「震災学習列車」のきっかけ

三鉄が「震災学習列車」を始めたきっかけは何でしょうか?

山野目さん「震災の翌年、『被災地の現場を視察したい』という声が、日本国内のみならず海外からも数多く上がってました」

都道府県、市町村、自治体の防災や企業の防災担当からの問い合わせが多かったそうです。
しかし街は復興の最中、あちこちで工事が行われ、工事用車両も盛んに走っています。そんな中、例えば大型観光バスで沿線を見て回るということはとても不可能だったのです。 

山野目さん「その点、鉄道であれば工事車両の邪魔になることはありませんので、貸し切り列車で移動しながら被災箇所を視察する『震災学習列車』が誕生しました」 

震災学習列車の企画が提案された時、三陸鉄道の社内では、被災地を見せて利益を上げることに対して葛藤もあったんだとか。 

しかし「東日本大震災を知ってもらい、防災意識の向上に役立ちたい」という思いから、会社全体で運航開始を決めたそうです。 

山野目さん「もちろん、始めてみて良かったとみんな思っています」 

伝えていること

震災学習列車で伝えているのは、「12年前の震災で何があったのか?」と「これまでの復興がどのように進められてきたのか?」ということだそうです。 

山野目さん「参加者の皆さんが暮らす地域では、どのような自然災害の恐れがあるか?災害発生時に自分の命や大切な人の命を守るためにどのように行動するか?を考えてもらうきっかけになれば嬉しいです」 

また、震災後はアメリカ軍に線路の瓦礫を撤去してもらったり、クウェートの支援で車両を導入したりと、国内外からの多くの支援がありました。 

山野目さん「震災学習列車を通じて、そういったご支援に対する感謝の気持ちも伝えています。今でも車両にはクウェート国の国章を付けて走っています」 

これから目指すもの

山野目さん「震災学習列車に関しては、東日本大震災を語り継いでいくことが大切だと考えています。また、沿線の震災を伝える団体と連携して語り継ぐことで、より多くの人に当地を訪ねてもらうことが課題です」 

会社全体の課題は、当然ながら「乗車人員をいかに増やすか」。また「地域の生活に役立つ鉄道。乗って楽しい鉄道」を目指しているそうです。 

現実論としてはお金を落としてもらわないと会社として存続できません。
風光明媚なリアス式海岸を走っている三陸鉄道は、地元の足であるとともに、観光資源としても高いポテンシャルがあります。 

頑張る第三セクター

三陸鉄道では、震災学習列車の他に、四季を通じていろんなアイデアを出しています。

秋には、風景を楽しみながら弁当&スイーツを楽しむ企画列車や、冬には三陸鉄道の定番となった「こたつ列車」も運行されます。さらに…。 

山野目さん「震災学習、三陸鉄道への乗車に加えて、観光地巡りとかグルメ、企業訪問といったお客様の要望に応えて行程を組みますので、ぜひご検討ください」

震災で分断された三陸鉄道。
5日後にはできるところから走らせ、徐々に復旧して今では全線開通を果たしました。
そんなたくましい三陸鉄道の活動「震災学習列車」に乗って災害について考えてみましょう。
(尾関) 
 
石塚元章 ニュースマン!!
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2023年09月02日08時18分~抜粋

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