石塚元章 ニュースマン!!

「フェーズフリー」という考え方。災害時にあわてないために

9月は防災月間、地震や台風などによく見舞われる日本ではふだんから災害に対する備えが必要ですが、防災についてあらためて見直す良い機会です。

9月3日放送『石塚元章 ニュースマン!!』(CBCラジオ)では、名古屋大学名誉教授で、あいち・なごや強靭化共創センター長の福和伸夫先生が登場。

地震工学、免震、防災の第一人者として行政とも連携し、数々のプロジェクトを手がけてきた福和先生には、これまでも番組で何度か防災・減災の必要性を説明していただきましたが、最新の防災情報について解説いただきました。

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日本のライフラインが危ない

日本では今年、ライフラインを直撃するようなできごとが多数起きています。

5月は明治用水(愛知県)で大規模な水漏れが発生し、給水が停止されました。

6月には(後に修正はされたものの)観測史上最も早い梅雨明けが宣言され、かつてない猛暑が発生したことで、東京では電力の使用制限が検討される状況に。

そして7月は大規模な通信障害が発生したことで、通話や通信ができない人が続出しました。

私たちが日常生活で頼っている物が、意外と脆弱なことが露呈されてしまいました。

これらは個々の事情で起きた問題ですが、大規模災害になるとこれらの問題が1度に起きてしまいます。
そのため、これらの問題が起きた時に災害に向けてどのような備えをしておくべきか、参考になります。

また、ウクライナへのロシア侵攻は災害ではありませんが、食料・エネルギー不足につながりかねません。

日本は島国ですので、もし外国から食料やエネルギーの輸入ができなくなったらどうすべきか、国のあり方を考えなければなりません。

福和先生は「水や電気が止まっても、数日間は大丈夫なように備えておかなければいけない」と語り、実際に太陽光発電や井戸水を活用されているそうですが、都会では難しく、その点でリスクがあるといえそうです。

食べ物だけではなくトイレも大事

ここで番組を聴いている方からの質問をいくつか取り上げました。

「食べ物の備蓄はしているんですけど、トイレに関して考えていませんでした。簡単な携帯トイレの工夫などはあるのでしょうか?」(Aさん)

福和先生「まずはいっぱい安く売ってますから、それを買うのが簡単ではありますよね。

でもたまたま備蓄がなかったら、家にある新聞紙みたいな紙と黒い袋ぐらいあれば、とりあえず自家製トイレは作れると思います。

その人の住んでる環境に応じて、例えばマンションで上のほうに住んでいる人だったら、エレベーターが止まっちゃったら下に降りることはできないので、それなりに自宅で携帯トイレとか備えておいてほしいですね」

人間の生理として、食べるのはもちろん出すことも意識しておかなければなりません。

また、災害復旧が長期になると食事のバランスも考えなければなりませんので、家庭菜園やプランターで栽培しておくだけでもずいぶんと良い対応になるとのことです。

避難所以外の選択肢はある?

「私は避難所に行きたくありません。もし自宅で避難が可能なら、自宅に居たいです。
そこで何に気をつけて何に備えておくのが良いのか、教えてください」(Bさん)

福和先生「これは単純で、行きたくないんだったら自宅が安全でなければいけないということで、安全な場所に家があって、地震や台風、雨が降ったって大丈夫な家であってほしいですね。

家にいたら必要な物は、食べ物と水がなければダメだし、いろんな物が止まっても大丈夫なように携帯トイレも必要です。

避難所が嫌だったら、少し余裕がある災害だったら温泉やホテルに行ってたって良いわけですよね。

安全な場所で楽しめる場所を知っていれば、レジャー代わりに安全な場所に避難していただくこともできるので、必ずしも避難所ばかりをイメージしなくても、いろいろな選択肢はあると思います」

備蓄の内容や対処の仕方など、どうしても視野が狭くなってしまうため、もっと柔軟な考え方を持つのが良いのかもしれません。

防災ピクニックで楽しく学ぶ

避難の予行演習として、実際に防災ピクニックを行っている方からもおたよりが届きました。

「防災ピクニックをしてきました。防災リュックを実際に背負って避難所のある公園まで歩いて、お弁当の代わりに非常食を食べて、笛などの非常グッズを使ってみました。

やってみたのでわかるのですが、リュックが重すぎたり、非常グッズの使い方がわからなかったりと、見直す機会になりましたのでおすすめです」(Cさん)

実際に起きた時のことを想定した行動ですが、福和先生はさらに出かける場所として、実際に土砂崩れや津波などがあった場所へ出かけると勉強になると勧めました。

例えば、今は池のない場所になぜ「池」という地名が付いているのかなど考えることで、地形の勉強になりますし、ハザードマップを見ながら歩くことで、防災の知識がさらに高まります。

フェーズフリーという考え方

災害時に電源の確保は最も重要なことですが、家に太陽光発電のパネルがなくても、ちょっとした電源なら確保できるのが、太陽光発電を使った充電器。

これなら乾電池型の充電池を充電して使うことができますし、普段から使い慣れていると、いざという時に使い方がわからなくて困ることもありません。

専用の防災グッズを用意するのではなく、普段使いができるアイテムやサービスなどを使う「フェーズフリー」という考え方が広がりつつあります。

「登山用の携帯コンロセットを用意しておくのはどうでしょうか」(Dさん)

キャンプが趣味の方は、結構キャンプグッズが転用できそうですね。

住む場所で気をつけるべき点は?

昔から長く続いている集落に住むのは理にかなっていると語る福和先生。
災害が起きた地域は長い歴史の中で居住を避けるようになっているはずですが、過去の歴史を顧みずに開発を進めていくと、実はそこは危険な場所だったということにもなりかねません。

関東地震(関東大震災)では10万人の方が亡くなり、そのうち7万人が東京に住んでいたそうです。
さらにその中の6万人は隅田川の東側で亡くなりました。
地盤が非常に悪いところだったようで、場所によって被害が大きく異なることがわかります。

一方で、関東地震(関東大震災)よりずっと規模の大きな元禄の関東地震では、死亡者はわずか340人。

安全なところにしか住んでいなかった江戸時代と、危険な地域にまで街を広げていった大正時代の大きな違いを表しています。

自分の住む場所を考え直すきっかけに

隅田川の東側といえば、スカイツリーやオリンピック・パラリンピックの施設が立ち並ぶ場所で、高層ビルが立ち並ぶ大手町・丸の内・有楽町はかつて海だった場所。

都会では効率化や利便性を追い求めていった結果、災害が発生すると脆弱性があらわになる危険性がますます高まっています。

ただ、都会に住んで便利さを享受することが、必ずしも幸福感につながらなくなっているようです。

また、コロナ禍によってテレワークが進んでいますが、都心から郊外や地方へ移る流れができつつあります。

福和先生は「僕のような老後の生活をどうするかっていうのもありますし、若い人はこれから大学生活や就職をどこで過ごすと良いかというのも、災害のこともちょっと頭に入れていただきながら、場所選びをしていただくと良いかなと思いますね」と最後にまとめました。
(岡本)
 
石塚元章 ニュースマン!!
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2022年09月03日08時15分~抜粋

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