石塚元章 ニュースマン!!

「アヤソフィア」を巡るトルコの動きに世界が反発する理由とは

トルコ・イスタンブールにある世界遺産の建造物「アヤソフィア」で、7月24日に金曜礼拝が行われたことが世界的に大きなニュースとして報じられました。

イスラム教に関するニュースは、多くの日本人にとってはあまりなじみがなく、なかなか理解するのが難しいと思いがち。

7月25日放送『石塚元章 ニュースマン!!』では、「アヤソフィア」で礼拝を行うことがなぜ大きなニュースになっているのか、歴史的背景などを踏まえて、CBC論説室特別解説委員の石塚元章がわかりやすく説明します。

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アヤソフィアの歴史

そもそも、アヤソフィアで礼拝が行われたことがなぜ大きなニュースとなったのか、まずはアヤソフィアに関する歴史をおさらいしてみましょう。

アヤソフィアは6世紀にギリシャ正教の大聖堂として東ローマ帝国が建設しましたが、15世紀になるとオスマン帝国がこの辺りを占領したことで、モスクに変えました。

その後オスマン帝国が滅亡してトルコ共和国が建国されると、以前ほどはイスラム教のカラーを表に出さない方針、いわゆる「世俗主義」の立場を取りました。

イスラム教を厳格に守る国では女性の権利が制限されたり、禁酒のルールを課したりしていますが、トルコはそこまで厳格ではないというわけです。

石塚は、トルコはその立場を取ることで観光に行きやすくしたり、外国と付き合いやすくしたりすることで世界的な地位を上げてきたという面があり、でもイスラム教は信奉し続けてきたと解説しました。

その立場がよく表れているのがアヤソフィアで、モスクではなく博物館にすることで観光客を呼び、経済の好循環を生んでいたというわけです。

また、かつてキリスト教会からイスラム教のモスクにする時に、壁画をしっくいで隠していたのを修復することで、キリスト教とイスラム教、両方の美術展示を行うという点でも興味深い博物館となっていました。
 

イスラム教へ回帰する方向に

しかし、今月10日にトルコのエルドアン大統領が、アヤソフィアを再びオスマン帝国時代のようにモスクに戻すことを決定したことで、状況が変わります。

エルドアン大統領の支持基盤は、保守的なイスラム教徒であることが背景にあるようですが、裁判などを経て24日、モスクへ86年ぶりに戻してから初めての金曜礼拝が行われ、数万人が集まったそうです。

では、このニュースが大きく取り上げられている原因は、何でしょうか?

石塚「キリスト教徒からしてみると冗談じゃない。元を言ったら、我々のだろうという感じ。今まではその辺をふわーっとすることで、うまく収めてたわけですよ。

それを強硬に『そうじゃない』っていうと、ぶつかりますよね。(イスラム教徒とキリスト教徒が)世界的にぶつかり始めるんじゃないかと。

例えば、博物館として観光客がいっぱい来てお金を落としてくれれば、それを維持修理費に充てられるんですが、それはどうなっちゃうんだろうかと。

エルドアンさんは思いつきみたいにやってるもんだから、将来的な構図が描けていない感じもあって、そこに宗教対立や世界的な批判も集まってきているので、これがどうなるのか」

最後に石塚は、エルドアン大統領がこのような行動をとる理由について、「コロナもあるし、経済があまり良くないので、そういう時は、支持層をつなぎ留めるのにちょっと強硬なことをやってみたりする」と推測。

そして、「こういう状況なので、アヤソフィアがどういう扱いを受けるのか、どういう場所になるのかというのが大変注目されている」とまとめました。
(岡本)
 
石塚元章 ニュースマン!!
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2020年07月25日07時26分~抜粋

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