石塚元章 ニュースマン!!

恩赦の謎。どんな犯罪者でも対象になるの?

『石塚元章 ニュースマン!!』、「石塚トレンドザ・ナンバー 今日の数字」のコーナーでは、今週起こったニュースにちなんだ数字をCBC論説室の特別解説委員・石塚元章が選んでいます。

10月21日の放送で石塚が選んだ数字は「55万人」。

一体この「55万人」は、どんなニュースに関連した数字なのでしょうか?

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内閣が決定、天皇が認定

まずはリスナーが予想した今週の数字を、石塚が読み上げます。

「今日の数字ですが、『27人』を選びました。京都アニメーション放火事件から3か月。ケガをされた33人の社員のうち、27人の方が復帰されたという記事からです」(Aさん)

「309。豚コレラで福井県の養豚場。309頭全部の豚を殺処分して、事業停止、自己破産の手続きに入るというニュースです」(Bさん)

どちらも重いニュースで、今週の数字にふさわしいものでした。

石塚が選んだ今週の数字は、「55万人」。

天皇陛下が即位を宣言する22日の「即位礼正殿の儀」に合わせ、政府はおよそ55万人の「恩赦」を正式に決定しました。

国立国会図書館の恩赦に関する調査レポートによると、日本では奈良時代から恩赦のようなものがあったと言われています。

その後、明治時代の大日本帝国憲法で規定が定められ、天皇陛下の権限で恩赦をするというルールが作られました。

現在の憲法では、内閣が決定した恩赦を天皇が認定するという流れになっています。

今回の恩赦は「復権」

しかし、そもそもなぜ恩赦が存在するのでしょうか。

この答えとして、「罪を犯した人も反省したり更生しようとしたりする。それをバックアップするために、裁判の効力を停止したり変更したりすることが、場合によってはいいのではないか、という発想だろう」と石塚。

恩赦には、大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除・復権の5つの種類があります。

大赦や特赦というのは、有罪判決や起訴そのものを、そもそもなかったことにするというものですが、今回の恩赦は「復権」のみ。

復権とは、罰金刑を受けた人の中で、その後の3年間犯罪を犯していない人に、資格制限を回復するというもの。

これは例えば、交通違反で免許停止となった人が再び免許を取り直すことが可能となったり、医師免許をはく奪された人が再び国家試験を受けられるようになったり、公職選挙法違反で処罰された人が、失った公民権を取り戻せるようになるというものです。

強盗や殺人といった重大犯罪は、今回の恩赦の対象になりません。

このような犯罪を犯した人が恩赦の対象になるケースもありますが、恩赦という仕組みそのものに疑問を呈する世論もあるため、今回は復権のみということになりました。

恩赦の課題とこれから

今回のように一律に行う恩赦は目立ちますが、実は重病などで刑の執行が停止されている人などからの申請があるたびに、個別の恩赦は実施されています。

55万人という数字の大きさに驚く方は多いと思われますが、1989年の昭和天皇の崩御、1990年の天皇即位の礼では、トータル1,250万人に恩赦が実施されました。

しかし、恩赦は「三権分立」という概念に反するのではないか、という課題も存在しています。

裁判で決定した刑罰を、内閣が変えてしまう恩赦。

内閣が政治的に、あるいは恣意的にこの恩赦を利用しようとした時に、「これは本当に公平なの?変なことをやってない?」とチェックするシステムがないのです。

実際、選挙違反の人が多く恩赦されることになった時には、大きな問題に発展したこともあります。

現在の日本における恩赦のあり方については、改めて議論となるかもしれません。

22日、55万人に恩赦が実施されます。
(minto)
 
石塚元章 ニュースマン!!
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2019年10月19日08時37分~抜粋

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