石塚元章 ニュースマン!!

ジャーナリスト角谷浩一が激白「映画はジャーナリズムだ!」

CBCテレビ『ゴゴスマ』でもお馴染み、政治ジャーナリストの角谷浩一さんは、出版社、テレビ、ラジオなどで政治記者、コメンテーター日本中を飛び回っています。

政治が遠いものだと思われないよう、できるだけ分かりやすい解説を心がけている、という角谷さん、実は、映画評論家でもあるんです。

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邦画で観るべき映画はコレ


いま公開されている映画で4~5本、しびれる映画があるそうです。その中から、4本紹介してもらいました。
まずは邦画『彼女の人生は間違いじゃない』から。

福島第一原子力発電所事故から5年経った今。仮設住宅に住みながらいろんな手当が出てて農家に戻らなくていいダラダラしたお父さん、福島か週末ごとに上京しデリヘルのバイトをしている公務員、など、そんな人たちのドラマです。
監督は福島県出身で『ヴァイヴレータ』の廣木隆一さん。

「全体には一つの話なんだけど、それぞれの群像があるわけ。きつい中身がいっぱいあるけど、面白い」

あの人の奥さんが監督デビュー


次は『ゴッド・ファーザー』や『地獄の黙示録』で知られるフランシス・フォード・コッポラ監督の奥さんで、81歳になるエレノア・コッポラさんが初監督したロードムービー『ボンジュール、アン』。

「フランスを舞台にして、フランスのプロディーサーと、二人で旅をすることになっちゃった女の人が、どんなことに巻き込まれていくかっていう、これまた面白い話。これは大人の映画です」

娘のソフィアだけでなく奥さんも監督デビュー。しかも才能あり。どうなってるの?コッポラ家。

インド映画はボリウッドだけじゃない


次に紹介するのがインド映画『裁き』。
民謡歌手の歌が自殺を煽ったということで、その民謡歌手が逮捕されることから物語は始まります。

「人権派の弁護士とか、保守的な裁判官とか、検察官とかいろんな人が渦巻くんだけども、インドの社会だとか、カースト制の問題とか、インドが抱える矛盾が全部出てくるような感じで、これも面白い映画」

オムニバスだけど一本の映画のような話


角谷さんが、ぜひ紹介したいと言う映画がこちら。香港映画の『十年』。

30代の監督5人がオムニバスで、2025年の香港はどうなっているかを描いた映画です。全部、それぞれのイメージで未来の香港を撮ってるんですが、よく見ると一本の映画になってる不思議な映画。

「30代の若い人たちは、自分たちが、産まれた頃に香港が返還されて、これから、どうなってくのか?と不安の塊。その塊が、どういう風に形になるか、っていう、とても面白い映画です」

仮想未来を描いた香港映画


このオムニバスの一編に『地元産の卵』というタイトルのストーリーがあります。政府が『地元』という言葉を禁止します。理由は『地元』という言葉は、香港が独立してるように聞こえるから。

中国は一つなのだから、まして『地元産』のものなんてあってはならない、というわけです。言葉狩りみたいなことが始まって、香港の養鶏場が閉鎖に追い込まれてしまうというものです。

「卵という普遍的な、世界中どこにでもあるものなのに、ここ香港では地元産は使えなくて、『外国からとるしかないのかなあ』、なんていう話が出てくる。ところがね、お父さんがこどもにね、こう投げかけるセリフがあるんです。
『この状況に慣れてはいけない。僕らが慣れてきてしまったから、君たちに辛い思いをさせてしまった』と。つまり、ぼんやり生活してて『まさかそんなことはないだろ』とか、『まあまあ、このくらいは平気じゃないか』なんて思ってると、結局、最後は、養鶏場が追い込まれてしまうとか、『地元産の卵』なんて、使っちゃいけないような世の中になってしまうぞと」

次世代へのメッセージ


声を上げないでいると、とんでもないことになる。それを伝えられなかった父親が、こどもたちの世代に送るメッセージ。
角谷さんの言葉にも力がこもってきます。

「主義主張の対立ではなくて、いつのまにか、どこかで、ぼんやりしていたら、こうなっちゃった、っていうのが本当は一番、怖いことなんじゃないだろうか?という映画でもあります」

『十年』が撮られた背景を考える


香港はイギリス政府下にあった時に、とても自由を謳歌していました。中国返還後も、中国政府は、香港の独立性を保つと言っていました。しかしながら、2012年に愛国教育が始まります。(中国本土では、天安門事件をきっかけに、1994年から愛国教育が強化されました)

「国旗を見て感動しろと、強要する雰囲気が出てきた。そういうのは、やっぱり自由の生活をしていた人たちから、もの凄く反発が出るわけですね。それで、香港では雨傘運動と言うのがありました。結果的には鎮圧されたみたいな形になっちゃうんだけど」

雨傘運動とは香港で2014年に起きた反政府デモ。香港のトップを決める行政長官選挙は民主主義的な選挙になるはずでしたが、中国政府が、それを拒否。立候補者は中国政府の息のかかったものしか立候補できない方針を打ち出しました。それに反発した若者が、傘をシンボルにデモを起こしました。

「香港に対して、皆さんお買い物だとか美味しいものだとかっていう経験は、旅行であるかもしれないけど、香港に住んでる人たちが、いまどんなことを考えてるか、そういうのがわかる映画で面白いですね。日本の若い監督が、10年後の日本をどのくらい想像しているのか?それから、何が怖いと感じているか?これを問いかけると、日本はどんな映画が撮れるのか?って、ことまで考えちゃいますね」

賞を獲れば獲るほど危険な映画


一番のおススメは、とにかくこの『十年』だそうです。去年の大阪アジア映画祭で、グランプリを獲っています。

「しかし、賞を獲れば獲るほど、この映画が評価されればされるほど、中国政府から目をつけられる。監督は複雑だと発言してますね」

「ノーベル平和賞を獲った人に、ああいう仕打ちをしちゃう国だから」と石塚。
「テレビ画面が真っ暗になっちゃう国ですからね」と渡辺です。

映画はジャーナリズムだ


「(『十年』に中国政府が目を光らせる)そういうこともあるから。僕は、ジャーナリストなので、『映画はジャーナリズム』だと思ってるんです」

なんでもないシーンにも、監督や製作者たちの思いは必ず入ってるはずだと思う、と語る角谷さん。

「その場を伝えるニュースも大事です。でも、映画製作者は、それを、どう受け止め、どう消化して、映画の中に入れ込んだか。映画の、また別の楽しみ方も知ってもらうと楽しいと思いますね」

毎週、最低でも5~6本は観るという角谷さん。「映画はジャーナリズムだ」と名言がでました。
(尾関)
石塚元章 ニュースマン!!
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2017年07月22日08時09分~抜粋

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