石塚元章 ニュースマン!!

ブランド米「龍の瞳」開発者は、米米ラブ

知恵と勇気で今世紀を生き抜く賢者たちをお招きして、次世代を占うコーナー『21世紀の賢者たち』。
7/1のゲストは、岐阜県下呂市のブランド米『龍の瞳』の開発&生産者、今井隆さんです。

その米との出会いはまさに奇跡でした。
2000年秋の昼下がり、下呂市で稲の生育を確認するため、コシヒカリの田んぼの見回りをしていた今井さんが発見した、飛び抜けて背の高い変わった稲。その籾(もみ)は通常の1.5倍ほどの大きさがありました。
のちに『いのちの壱』と命名される新品種、龍の瞳です。

(稲の品種名が「いのちの壱」、登録商標が「龍の瞳」)

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カモが泳いでいる田んぼは、NO薬


農林水産省に長らく勤め、自然環境を壊さない米作りに真摯に取り組んできた今井さん。約1年前にもお越し頂きましたが、今回もお米への愛を語って頂きます。

龍の瞳の田植え体験をしてもらうワークショップを、下呂市で定期的に行なっているという今井さん。その田んぼは、無農薬で作られています。そのおかげで、カモが泳いでいることもあるとか。

実はこれ、ありそうでなかなかない光景なんです。農薬が使われている田んぼだと、まずエサとなる虫がいません。それに、自らにも危害が及ぶので近寄らないのです。
でも、無農薬の環境で、お米を害虫からちゃんと守れるのでしょうか?それは大丈夫だと今井さんは話します。

害虫が増えれば、それを捕食するクモやトンボなども増えます。食物連鎖が働いて、害虫が増えないようになるのです。
逆に農薬を使えば、クモなどもやられ、そういう連鎖が断ち切られてしまいます。そんな時、農薬に耐性のあるウンカが現れた場合、大量発生してしまいかねません。

もちろん、自然に任せるだけでは良い米はできません。人の手による管理も必要です。
年によって気象条件が違うので、それに合った作り方をしなければなりません。

例えば、暑い年だと、稲の負担が激しくなってしまうので、少し肥料を余分にして、消耗に耐えられるようにするとか。
全く同じ田んぼで同じ米を作っていても、年によって違う作り方になり、違う出来になるということです。

農産物の安全性を示す国際基準


最近、「グローバルGAP(ギャップ)」という言葉をニュースでよく耳にしませんか?
GAPは「Good Agricultural Practice」の略で、直訳すれば「良い農業の実践」。
農産物の国際的な認証で、2000年にヨーロッパで生まれました。

外国から輸入された作物が、本当に安全なのかどうか。その不安を払しょくするため、生産過程をきっちり記録に付けて、安心して消費者に提供しようという、流通側の発想からできた制度です。
このグローバルGAPの認証がない商品は、到底ヨーロッパの小売店には並べられないとか。

こういう食の安全については、日本はかなり遅れていると言う今井さん。龍の瞳は、このグローバルGAP認証を、岐阜県下の農作物において初めて取得したのでした。

取得までには3年半以上かかったそうです。まず、本部審査の前に、内部監査をします。そこで、農家の皆さんを本部審査に耐えられるべく指導します。
いい加減な考え方では、本部からの質問にまともに答えられずその時点でアウトなので、しっかりと意識改革をしてもらうのです。なにせ農家の皆さんは審査を7時間くらい受けることになりますから、ごまかしはききません。

グローバルGAPを取得した理由


では、どんな審査を受けるのかというと、まず品質の審査ではありません。
ちゃんと休憩時間が取れているか。健康診断を受けているか。雇用形態がしっかりしているか。…など、働く人の安全性が関わる審査となります。

手洗い場がすぐ近くにあるか。作業場に救急箱が常備されているか。その中に包帯はあるか、ピンセットはあるか、消毒液はあるか…。
他にも、食品の安全確保、環境の保全などに関する、微に入り細に渡る約200個のチェック項目が用意されているのです。

ではなぜ、このグローバルGAPを取得しようと思ったのでしょうか。

まず一つめは、龍の瞳には農薬を使っていないということを明確にしたかったから。

二つめは、グローバルGAPというものは、「悪い所を無くして、いいものに直していこう」という考え方だったから。
いきなり高みを目指さなくても、やれることをやっていけば、そのうちたどりつける。そんな、人生にも通ずるようなやり方に、今井さんは感銘を受けたのだそう。

三つめは、東京オリンピックへの対応。グローバルGAP認証が無い食材は、選手村への提供がしづらくなってしまうのです。

米がいるだけで心が強くなれる


これほどのこだわりを持つ、龍の瞳。ただ単純にご飯として食べるだけでなく、加工食品としてもその威力を発揮します。

ポン菓子にすれば、粒が大きく見栄えが立派でフワッフワ、口に入れるとシュワシュワッと消えちゃうくらい、ふっくらと上品な味わいに。

そして、糖度が高く、菌との相性が良いので、発酵が早くなる特長を持つという龍の瞳。
日本酒を凝縮したような香りの米焼酎にも変身。玄米酵母液を作るのにも最適だとか。

この龍の瞳を通じて、今井さんが願っていること。それは、都市の人に下呂の農村に来てもらい、農業体験をやってもらったり、地元の温泉に泊まってもらったりなど、人と人との交流が深まること。

そんな素敵な夢を持つ今井さんには「いいね!」ボタンを押したくなりますね。稲だけに。
(岡戸孝宏)
石塚元章 ニュースマン!!
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2017年07月01日08時10分~抜粋

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