厚生労働省の発表によると、7月の実質賃金は前年同月比で+2.4%となり、
これで7ヶ月連続のプラスを記録しました。
名目賃金(給与明細の金額)の伸びも高い水準が続いており、
統計上は「日本全体で賃上げが進んでいる」ことになります。
しかし、毎日の買い物で「高くなったな…」と感じるばかりで、
生活が楽になった実感がない人が多いのではないでしょうか?
今回は、データと実感の間に生じるギャップの裏側を分かりやすく解説します。
実質賃金が上がっても実感がない!
名目賃金と実質賃金の違いとは?
まず、ニュースでよく耳にする「名目賃金」と「実質賃金」の違いを整理しておきましょう。
-
名目賃金: 給与明細に書かれている金額そのもの(例:月給30万円)のことです。
-
実質賃金: 名目賃金から「物価の変動」を考慮した、実際の買物力(購買力)を示す指標です。
たとえば、給料が5%増えても、物価が3%上がっていれば、差し引きで「実質賃金は2%プラス」という計算になります。今回の7ヶ月連続プラスは、統計上「給料の伸びが物価の上昇を上回っている」ことを示しています。
なぜ実感とズレるのか?統計の「マジック」と手取りの壁
データ上は良好に見えるのに生活感が改善しない背景には、統計の仕組みや税制の壁が存在します。
1. 平均値の罠(一部の大企業や高所得者の影響)
統計で使われる数値は、大企業から中小企業、正社員からパートまで含めた「平均値」です。一部の大企業や高所得者が大幅な賃上げを行うと、全体の平均値が引き上げられます。日本で働く人の約7割を占める中小企業で働く人たちまで、その恩恵が行き届いていないのが現状です。
2. 「手取り(可処分所得)」の減少
名目賃金が上がっても、実際に口座に振り込まれる「手取り(可処分所得)」が増えているとは限りません。給与の上昇に伴って所得税や社会保険料の負担が増えたり、いわゆる「年収の壁」を超えて扶養から外れることで、かえって手取りが減ってしまうケースもあります。
3. ボーナス(賞与)支給月の影響
夏季ボーナスなどが支給される月は、全体の数字が一時的に大きく跳ね上がります。月々のベースとなる基本給(基本給与)がどれだけ上がっているかを見極めることが重要です。
数字に惑わされず「実質手取り」を意識する
政府やメディアが発表する「賃上げ」や「実質賃金プラス」という言葉だけに惑わされると、自分の経済状況を見誤ってしまいます。
ニュースを見る際は、以下の視点を持つことが大切です:
-
自分自身の手取りを確認する: 額面(名目賃金)ではなく、税金や社会保険料が引かれた後の「手取り額」がどう変化しているか。
-
身の回りの物価と照らし合わせる: 統計上の物価指数と、自分が日頃買う食品や生活用品の値上がり感を比べてみる。
制度や税制の仕組みに関心を持とう
今回のテーマのように、統計データと生活感のズレを理解することは、社会や税制の仕組みを知るきっかけになります。
年収の壁や社会保険料の負担など、自分の手取りに直結する制度について理解を深め、今後の働き方や資産防衛に活かしていきましょう。
森永大学 政治経済学部
「難しい経済を、一人ひとりの生活に引き寄せて」
毎週金曜 18時配信のポッドキャストをぜひチェックしてください!
本記事の内容は、2026年9月25日配信のポッドキャストの内容に基づいています。
