「物価が上がっているから、もうデフレ脱却だよね?」
そう思っている方にこそ、一度立ち止まって考えてほしいテーマがあります。
今回は、日本銀行の黒田東彦前総裁のインタビュー発言をきっかけに、
今のインフレの正体と、これからの日本経済に潜むリスクについて解説します。
「インフレ」は夜明けか、それとも破滅の序曲か
1. 黒田前総裁が放った「一石」とは?
2026年4月、日銀の黒田前総裁がインタビューで興味深い発言をしました。
「デフレ脱却の目標は達成された。
だから、今政府が進めている積極的な財政政策は、
本当に必要なのか疑問だ」
・・・という趣旨の内容です。
これは現在、日銀の舵取りをしている植田和男総裁の
「異次元緩和からの出口戦略(金利を上げていく方向)」を
後押しする発言とも受け取れます。
2. そもそも「異次元緩和」で何が変わったのか
黒田前総裁の時代に行われたのは、
教科書的な常識を遥かに超えた「異次元の金融緩和」量的・質的緩和でした。
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マイナス金利導入: 金利をマイナスにするという驚きの政策。
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イールドカーブ・コントロール: 本来市場で決まるべき長期金利まで日銀がコントロール。
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ETF・リートの買い入れ: 国債だけでなく、株や不動産投資信託まで日銀が買いまくる。
これらはすべて、無理やりにでも「デフレ」を終わらせるため。
そして現在、植田総裁はこれらを一つずつ解除し、
「普通の金融政策」に戻そうとしています。
(金利を0.75%まで引き上げました。)
3. 今の物価高は「良いインフレ」なのか?
こうした政策ゆえに、
前黒田総裁は「デフレは終わった」という趣旨の発言を行ったと思われます。
確かに現在、物価は上がる傾向にはありますが、
その「上がり方」は果たして日銀の異次元緩和政策の結果ゆえ、なのでしょうか?
思い出してみてください。
今の日本の物価上昇の主因は、
以下のような「外的要因」が重なった結果と言えます。
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ロシア・ウクライナ紛争: エネルギー価格や小麦価格の高騰。
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中東情勢の緊迫: 原油価格のさらなる上昇。
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国内の特殊要因: 「令和の米不足」などによる食料品価格の上昇。
つまり、「景気が良くなって、みんながモノを買うから値段が上がった」のではなく、
「外の事情で勝手にコストが上がった」という側面が強いのです。
4. 金利を上げることのリスク:スタグフレーションの足音
物価が上がれば、中央銀行は金利を上げて物価を抑えようとします。
これが経済学のセオリーです。
しかし今、日銀が金利を上げたとして、今すぐ物価は下がるのか?
そんなことはありません。
プーチン大統領やトランプ大統領の考えを変えさせることはできませんし、
お米を急に増やすこともできません。
つまり、金利を上げても物価高が止まらない可能性があるのです。
一方で、金利を上げれば確実に以下の負担が増えます。
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住宅ローンの返済額アップ
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中小企業の借入金返済の負担増
物価は下がらないのに、景気だけが悪くなる——。
最悪のシナリオである「スタグフレーション」や、
反動による「デフレ回帰」の足音を、私たちは警戒しなければなりません。
まとめ:情報を鵜呑みにしない「自分の頭」を持つ
「物価高=利上げ=正しい」という単純な論調がメディアで増えていますが、
それが本当に日本経済にとって正解なのかは慎重に見極める必要があります。
ニュースを鵜呑みにせず、「本当にそうなの?」と一度立ち止まって考えてみること。
その姿勢こそが、これからの不透明な経済を生き抜くための最大の武器になります。
森永大学 政治経済学部
「難しい経済を、一人ひとりの生活に引き寄せて」
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本記事の内容は、2026年5月8日配信のポッドキャストの内容に基づいています。
