北野誠のズバリ

赤い肉は危険!なぜ人は牛肉の加熱を避けるようになったのか

千葉日報が報じた記事によりますと、千葉県船橋市の飲食店「将泰庵DINER」で腸管出血性大腸菌O157による食中毒が発生した問題で、船橋市保健所は11日、下痢や血便の症状を訴える人が増加し、計34人になったと発表しました。

保健所によれば、患者はいずれも看板メニューの「飲めるハンバーグ」を食べ、13人からO157を検出したとのことです。
この店は営業停止処分後、市の保健所の指導を経て9日から営業を再開しています。

9月14日放送『北野誠のズバリサタデー』(CBCラジオ)では、本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が、食中毒について解説しました。
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赤い肉が危険な理由

牛肉による食中毒で思い起こされるのが、生ユッケによる集団食中毒事件。
なぜ今回も牛肉が原因で食中毒が起きたのか、吉田先生が解説します。

まず肉が赤いのは血液が赤いのと理由が似ていて、酸素を運搬するヘモグロビンにより血液は赤いのですが、筋肉の中にはこれに似たミオグロビンという赤い物質があります。

どちらもタンパク質で加熱すると固まって、分子の構造が崩れるため酸素の運搬機能が失われ、赤くなくなります。

一方、食中毒を起こす最近は人間の体内で繁殖するためにタンパク質を使っています。
ざっくりと言えば、ミオグロビンが壊れるぐらい加熱すると細菌のタンパク質も壊れて繁殖できなくなります。

加熱が不十分な部分がほんの少し残っていても細菌は生きられるため、肉の赤みが消えたから安全とは限らないのですが、少なくとも肉に赤みがあると食中毒の危険性はあるとのことです。

調理方法に問題?

食中毒が発生した店では、客に対して「赤い部分が残っているハンバークは、3分ほど待ってください」と伝えていましたが、これはどのような意味があったのでしょうか?

タンパク質が壊れる加熱の条件は75度で1分間、70度で3分間、63度であれば30分間必要。

吉田先生は「ハンバーグに赤い部分が残っているということは、内部が75度を超えるような加熱を行なっていなかった可能性がある」と指摘。

なぜ高い温度で加熱しなかったのかについては、「内部が70度になるように加熱を抑えておいて、3分待ったところで細菌の病原性がギリギリなくなるものの、タンパク質が加熱で固まることはなく、半熟の線をギリギリ狙った料理だったのではないか」と推測しました。

そして、今回発生した食中毒は「偶発的な事故ではなく必然の結果」と結論づけました。

O157以外のリスク

悪者扱いされる大腸菌ですが、実は私たちの腸内には大量に存在しています。
食べ物の消化を助けたり、ビタミンKやビタミンB群の合成に寄与したり、病原菌の繁殖を抑える役割を果たしたりと、健康の維持に重要な役割を果たすことが最近の研究でわかっているそうです。

ところが「腸管出血性大腸菌」となると、話は変わります。
ベロ毒素という強力な毒素を作り、下痢や血便、腹痛を起こすだけではなく、重症化すると溶血性尿毒症症候群というものを引き起こし、最悪命を落とすことになりかねません。

O157は生肉や生レバーだけではなく、加熱していない野菜にも付着することがあり、注意が必要。
また、生の牛肉にはO157以外にもサルモネラ菌やカンピロバクターのリスクがあり、こちらも75度以上で1分間の加熱が大事です。

特に土に含まれているセレウス菌は厄介で、熱への耐性が強いため、75度で5分以上、100度で2分以上の加熱が必要です。

本来人牛肉に十分な加熱が必要なことは知られていたはずなのに、加熱しなくなったことについて、吉田先生は「物を噛まなくなったことでアゴが退化し、硬いものを好まなくなってしまった」と指摘し、あらためてそのリスクを警告しました。
(岡本)
 
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2024年09月14日09時20分~抜粋

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