日本経済新聞が1日に報じたところによりますと、認知症の代名詞であるアルツハイマー病と診断された患者の約4割に誤診の可能性があると、最近の研究でわかってきたそうです。
アルツハイマー病の検査は有効な技術が確立しておらず、ベテラン医師でも症状が似ている他の病気と見分けるのが難しいとのこと。
9月7日放送『北野誠のズバリサタデー』(CBCラジオ)では、本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が、アルツハイマー病の誤診について解説しました。
認知症の診断方法
吉田先生によれば、アルツハイマー病かどうかを調べるには、まず患者や家族に問診を行ない、アルツハイマー病を含む認知症に関するそれぞれの病気に見られる言動の特徴がないかチェックを行なうとのこと。
例えば「現実にないものが見えた」という症例に「とレビー小体型認知症の可能性が高い」と判断したり、何時何分と伝えてアナログ時計の針の位置を指し示してもらうなど、記憶力や計算力などに関する認知機能の検査を行なったりします。
また、MRI検査で脳が萎縮していないか、脳梗塞の痕跡がないかということを検査する方法もあります。
何の病気に間違えられる?
新潟大学脳研究所が発表した論文によれば、そのような検査をしても約4割に誤診の可能性があるとのこと。
精密なアルツハイマー病の診断ができる脳脊髄液の検査結果を、一般の診断結果と比較したところ、4割ほどが誤診の可能性があるとわかったそうです。
アルツハイマーと間違えられる病気としては、症状が似ている4大認知症の他、うつ病や甲状腺機能低下症など、認知症ではないものも含まれるそうです。
認知症の中でも区別できないものがあり、認知症の病気が混在するケースが多く診断が難しいと吉田先生。MRI診断でも簡単に判断できないそうです。
精密な検査は受けられないの?
新潟大学脳研究所にもある脳脊髄液による検査は、精度が高いものの簡単に受けられるものではないそうです。
まず脳脊髄液の採取は血液と比べて身体への負担が段違いに重いのが難点。場合によっては脊髄液が漏れることで頭痛に悩まされる可能性もあるという吉田先生。
もうひとつ有力な検査としてPET検査というものがあり、こちらは身体への負担が軽いものの、30万円ほどと非常に高額で、保険を適用しても一般的には7万円ほどかかるため、気軽に受けづらいものとなっています。
検査の必要性が高まっている理由
アルツハイマー病かどうかを診断するのに、お金をかけたり無理をする必要性はそこまで高くないというのが、これまでの実情でした。
しかし、昨年に初めてアルツハイマー病に効果のあるレカネマブという薬が承認されました。
これを使用するためにはアルツハイマー病かどうかを正確に診断する必要があるためです。
そのため各国で研究が盛んに行なわれるようになり、今よりも簡単な検査が実現できるかもしれません。
吉田先生は、将来のことは断言できないと前置きしつつ、「5~10年後くらいには、血液検査がかなり有力になると予測する専門家が多いですね」と語りました。
誤診を減らすためには
アルツハイマーの誤診を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。
吉田「ご家族の方に医者としてお勧めしたいのは、以前とは違う言動や行動、発言をした時に、何か異変があった場合はできるだけその都度、箇条書きで良いので簡単なメモを残しておいて、病院で診察を受ける時に持ってきてほしいんですよね。
例えば親指を繰り返し動かすとか、わずかな特徴であっても、これはアルツハイマー病ではなくレビー小体型認知症の可能性が出てくるとか、われわれは判断できるんですよ。
認知症は突然重い症状がドーンと出てくる病気じゃないですよね。
じわじわと浸透してくるので、気がついた時にメモをしておかないと、そのうち家族にとっても当たり前になっちゃって、異変だと思わなくなっちゃうんですよ」
記録がないと問診をしても診断の手掛かりが得られないということになってしまうため、簡単な記録でも良いので、それを元に情報を伝えてほしいとのことです。
(岡本)
北野誠のズバリ
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2024年09月07日09時19分~抜粋