昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足などが大きな経営課題のひとつとなっています。承継する人がいない場合は廃業するしかないと考える経営者もいます。
CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学んでいます。
8月14日の放送では、関東にある婦人服卸業の承継事例を北野誠と松岡亜矢子が、三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。
利益が出ているのにM&A
今回藤原さんは、関東にある婦人服卸業の事例を紹介しました。
藤原「3店舗経営していたんですが、年商は15億円ほどで利益も数千万円出ているすごい優良企業でした。従業員さんは約30名程度」
利益も出ているのに、なぜM&Aをしたのでしょうか?
社長が病気になり、社内に親族はいたのですが「経営は荷が重い」という理由で継いでもらえなく、譲渡することを決断したそうです。
買い手はどのような会社だったのでしょう?
藤原「婦人服の企画製造部門を持っているIT会社。ちょっと珍しい会社」
この買い手会社はすぐに見つかったのでしょうか?
藤原「いいえ、1年以上相手が現れませんでした」
売り手の財務状況が良かったので、さまざまな会社が一瞬興味を持つのですが、社長の経験による「勘」に依存してる経営だったと知ってしまうと、社長の退任により業績が維持できるか判断がつきにくい状況だと思われ、なかなか買い手が見つかりませんでした。
北野「じゃ、わりとワンマン社長だった。創業者にありがちな、その方の才覚はいいんだけど周りにノウハウが行き渡っていないっていうね」
財務はよくても「勘」だよりの会社は信用されない?
扱っている商品は、商店街にある婦人服店の店先に吊るして売っている低価格商品のイメージという藤原さん。
北野「あれは難しいでしょうね」
藤原「はい。トレンドを読むのが難しいらしく、仕入れロットも見誤ると損失が膨らむ」
本来ならデータをもとに分析して、気候変動なども考慮して仕入れをおこなうのですが、中小企業なので、そのあたりを社長の「勘」で流行りそうな洋服やアイテム、ロットを決定していたそうです。
藤原「それが奇跡的に当たってた」
北野「勘(カン)ピューターやね」
どれだけ財務が良くても、社長のノウハウに依存してる場合は、買い手は再現性があるかを検証してM&Aしないと、買った後に失敗するので注意が必要だと藤原さんは指摘します。
売り時も奇跡的なタイミング
M&A成約後、買い手はどうなったのでしょうか?
藤原「同じ婦人服を扱っていたのでいけるだろうと思っていたんですが、商材や価格帯が違ったりしたこともあり最初は苦労しました」
ただ、業務管理システムに強い会社とのことで、数値管理を徹底し現在は安定した利益を出しているとのことです。「業務管理システムを持っていてよかった」と北野。
北野「タイミングがずれたらヤバかったかもしれない」
売り手が会社を売った直後に経済環境が悪化していたそうで、「もし半年売るのが遅ければ譲渡金額は半額になっていたかもしれない」と振り返る藤原さん。
売り手社長を「人生勘がいいというか、運がいいというか」と感心しました。
北野「服選びから売り時まで勘でやってきたっていうのはすごいな」
羨ましがる北野でした。
(野村)
北野誠のズバリ
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2024年08月14日14時48分~抜粋