北野誠のズバリ

交通事故の裁判で無罪でも免許は取消のまま…現行法の問題点

2017年に福岡市で軽トラックを運転中に原付バイクと衝突し、男性に大けがを負わせた罪に問われたのち無罪判決が確定した女性が、「無罪判決の確定後も運転免許の取消処分が撤回されなかったことは不当」と民事裁判を起こしていました。

10月5日、福岡高裁は処分は無効との判決を言い渡し、福岡県側が上告しなかったため、女性は近く運転免許が取り戻せることになりました。

なぜ無罪にもかかわらず、運転免許が取り消されたままだったのでしょうか?そこには法の無整備な部分があるようです。

10月7日放送『北野誠のズバリサタデー』ではこの判決の内容について、オリンピア法律事務所の原武之弁護士が解説しました。

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裁判結果と免許取消処分は別!?

この交通では「軽トラックの女性の方が原付バイクの男性よりも過失が重い」と判断され、裁判が行われました。

しかし裁判を進めていくうちに、バイクの過失の方が重く、軽トラックは衝突が回避できなかったことがわかり、女性を刑事罰には問えないことから無罪判決となりました。

ところが警察では捜査を始めた段階で「軽トラックの方が過失が重い」との見解を出し、これに基づき都道府県の公安委員会が免許取消の行政処分を出しました。
裁判が無罪かどうかは別という考えのようです。

そこで女性は「運転免許を取り消した処分自体がおかしい」として、裁判を起こしたのです。

行政裁判に多額の費用

行政裁判には100万円単位でお金がかかる可能性があります。
また、この女性は免許無効の間、ずっとドライバーの仕事ができなかったため、裁判費用の用意も厳しかったのです。
そこで、担当弁護士がクラウドファンディングにより裁判費用を捻出したそうです。

そもそも交通事故の裁判で無罪でしたから、当然この訴えについても一審で勝訴しましたが、なんと福岡県側は控訴します。
そして、5日の二審でも勝ちましたが、再び福岡県は上告しようとしていたそうです。

ただ、さすが「裁判に時間をかけさせるのはひどい」という意見が多かったからか、県は上告を断念することになったようです。

法律の問題点

女性は勝訴によって免許を取り戻すことができましたが、無罪確定の段階で免許が有効になるべきです。
今までドライバーとして働けなかった間の損失はどうするのか、という別の問題も発生します。

今回の問題点について、原弁護士はこう指摘します。

「司法と行政が別組織なので、司法が決めたことでも行政をひっくり返すために手続きをしなければならない。本当は公安委員会の規則で『司法が決めたらそれに従う』とか決めといてくれれば簡単に取り消しできるのに、それがない」

運転免許に限らず、あらゆる免許には失格事由がありますが、事由が誤りだった場合はそれを取り消す仕組みがないのも問題です。

原弁護士は「そもそも無罪が少ないためではないか」と語り、そのようなケースへの対応が考えられていないと見ます。

北野誠は「そもそも推定無罪なので、裁判が有罪に確定してから免許は取りあげるべきではないか」と指摘しました。
(岡本)
 
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2023年10月07日10時52分~抜粋

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