北野誠のズバリ

運営会社が事業停止で騒然…学校給食が直面する課題

全国で給食調理業務を請け負ってきた会社が、この夏休み明けに突然給食の提供を停止し、学校関係者や保護者の間から批判や不安の声が集まりました。

請け負っていた会社は事業の継続が困難になった理由として、「食材費や光熱費、人件費が高騰する中で学校などに相談したが、思うように価格転嫁が進められなかった」と説明しています。

9月30日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリサタデー』では、『学校給食 食育の期待と食の不安のはざまで』(岩波書店)の著者で、学校給食ニュース編集責任者の牧下圭貴さんに、学校給食が直面する課題について解説していただきました。

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給食運営会社が直面する課題

今回事業を停止して問題になったのは、広島県広島市に本社を置く給食調理会社のホーユー。
9月25日に25日、広島地裁から破産手続きの開始決定を受けました。

小中学校の給食費は、学校給食法という法律で「食材費は保護者が負担し、給食を作る設備や運営などにかかる費用は区市町村が負担すること」と決められています。

つまり、給食を作るのにあたっては、保護者が払っている給食費だけで賄っているわけではないということです。

他の地域や会社でも同じようなことが起こりうるのでしょうか?

牧下さんによれば、「価格ありき、安さありきで事業者を決めている自治体が多く、そもそも事業者は厳しい経営環境にある」とのことです。

ここのところ人件費はもちろんのこと、食材費や光熱費も上がっている一方で、自治体から支払われる費用は抑えられているのが現状。

また、その費用を抑えるために民間に任せてきたのが、ここ30年の状況なのだそうです。

この30年で変わった環境

かつて学校給食と言えば、校内の給食室で直接調理していたイメージがありますが、民間企業に任せたのはいつ頃からなのでしょうか?

牧下さん「だいたい40年ぐらい前に、当時の文部省が委託やセンターにするとか、あるいは直営でもパートさんにするなど、合理化しなさいと言ったんですね。

それから徐々に調理の民間委託が始まったんですが、簡単には進まなかったんですね。
今から10年前に約5割の学校が調理を委託されているところのものを食べてます」

これだけ厳しい経営状況にもかかわらず、なぜ給食費を上げられないのでしょうか?
それには自治体特有の事情があるようです。

牧下さん「学校給食というのは、普通の外食に比べると国産の比率がすごく高いんですよ。
できるだけ良い食材を使おうと努力してきてるんです。

なぜかというと、学校給食はただの食事じゃなくて、教育としてやりましょうと。例えば地域や環境のことなどを勉強する教材になるんじゃないかと」

なぜ給食費が上げられない?

牧下さん「でも食材は保護者負担ですから、今の家計事情を考えると、上げますよと言って『はい』とはなかなかならないじゃないですか。

また、保護者負担だけではなくて、生活保護や就学援助を受けてるとか、生活が苦しいところに対しての給食費の公的負担があるんですね。
そうすると自治体の方も負担が増えるので、上げたくない。

結局、献立を立てて栄養を考えてる栄養教諭ぐらいしか『(給食費を)上げないと(給食の運営は)続けられないよ』と真剣に考えてる人たちはいないということになりかねないんですよ」

ただ、自治体でも補助金を出す動きがあり、例えば地元の特産品を利用する場合や、最近の物価高騰対策で補助金を出すケースもあるそうです。

新たに起こりうる問題

給食費は上げられない、でも栄養バランスは今まで通り維持しなければならないとなると、実は新たな問題が発生するそうです。

牧下さん「質の良い食材を使うのをあきらめて、安い食材を使いましょうと。
例えば調理に手間がかかるんだったら、もっと加工品を使うとか、実際に生鮮食品より加工品が安い場合もありますので、給食の教育力や質が下がると思います」

給食は単なる食事というだけではなく、健康や食育ということも含めて考慮しなければならず、税金の使い道をもっときちんと考える必要があるのではないでしょうか。
(岡本)
 
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2023年09月30日09時20分~抜粋

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