北野誠のズバリ

若者が特殊詐欺に加担してしまうのはなぜ?恐るべきその手口

最近、普通の若者が強盗などの凶悪犯罪に加担する事件が相次いで報道されていますが、なぜこのような犯罪に若者は手を染めてしまうのでしょうか。

5月20日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリサタデー』では、『ルポ 特殊詐欺』(ちくま新書)の著者で神奈川新聞報道部デスクの田崎基さんに話を伺いました。

田崎さんはSNSの闇バイト募集から簡単にリクルートされた若者たちが、オレオレ詐欺や預貯金詐欺などの犯罪に関わる様子を取材され、この本では犯罪組織側や実行犯からの視点で手口をリアルに描いています。

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特殊詐欺が増えている要因

特殊詐欺で一番有名な手口が、いわゆる「オレオレ詐欺」ですが、どのような犯罪組織でどのような人が関わっているのでしょうか?

田崎さん「上層部から末端までいろいろな階層に分かれているのが特徴で、数人でやってるようなグループよりももっと重層的で、ピラミッド構造が複数にわたって関連してる感じですね。

関与の仕方はいろいろなパターンがありますが、数年前から出てきている、正式な暴力団ではないが『半グレ』とされる方々とかを、警察では『暴力団等』と呼んでるんですけど、その暴力団等がなんらかの関与をしてるというのが、取材から明らかになっています」

そして特殊詐欺が広がったのは、暴力団を取り巻く環境が厳しくなっていることが関係しているようです。

田崎さん「暴力団に対する社会的なものもそうですけど、条例や暴対法がどんどん厳しくなっていって、シノギ(暴力団が収入を得るための手段)がやりにくくなってきた。

現在、シノギとして暴力団等の資金源となっているのが、大きく薬物と詐欺になっているというのが現実です」

暴力団対策法が効果を発揮したことで、暴力団員の数も収入も減っているようですが、皮肉にも詐欺が増える原因にもなっているようです。

特殊詐欺に入るきっかけ

警察で特殊詐欺を認知したのは約20年前と言われていますが、オレオレ詐欺や預貯金詐欺、架空請求詐欺など、手を替え品を替えいまだに続いています。

実行犯として若者がSNSで集められているという報道をよく見かけるようになりました。実際にはどのようにして集めているのでしょうか?

田崎さん「やはりTwitterが一番ユーザー数が多くて、調べやすいというところで入口になっているケースが多いです」

ただ、いきなり闇バイトで募集をかけても怪しまれますので、そこは巧妙な手口で人を集めているようです。

田崎さん「最初は『簡単に稼げる』とか『1日5万円、確約保証金なし』、『1日数時間で1万円が稼げます』といった、ちょっと割りの良いアルバイトといった売り文句から入ってくる形です。

やはり検索する時に『気軽に稼げる』といったキーワードで検索してしまうのが入口ですね」

関与に気づいた時にはもう遅い

実際にどのようなアルバイトを持ちかけられるのでしょうか?

田崎さん「例えば『あなたの持っているスマートフォンを3日間貸してください』『指示するコインロッカーに入れて、暗証番号を教えてください』と。

3日後にコインロッカーに行くと、3万円と自分のスマホが戻ってくるというアルバイトが最初にあったという犯人もいましたね」

自分のスマホが何に利用されるのかわからないものの、しっかりバイト代は支払われます。
このような依頼が何度か繰り返されていくうちに、指示の内容がエスカレートしていくそうです。

田崎さん「『言われた家に物を取りに行ってくれ』と言われたりして、だんだんこれはアレ(特殊詐欺の受け子)なんじゃないかと、普通気づき始めますよね。

気づいた時に辞めたいと言っても、『お前が今までやってたのは詐欺なんだ』という形で脅される」

また、免許証や学生証などの画像データを要求するケースもありますが、真っ当なバイトでも普通にあり得ることなので、若者も不自然に思うことなく提出してしまうようです。
こうして自分の身元を明かしてしまっているため、犯罪組織から脅迫されても断れなくなるのです。

特殊詐欺はなぜ減らない?

末端の若者にとって、特殊詐欺はリスクの大きさと比較して入ってくるお金が少ないのに、なぜなかなか減らないのでしょうか。

田崎さん「やはりリスクが大きすぎるという現実を、知識として持てていないところが非常に大きいと思います。

というのは、詐欺の上限は法定刑で懲役10年なんですけど、強盗になると5年以上になるので確実に執行猶予がつかないんですよ。

その時点でものすごく大きな壁がある犯罪に移行してしまうんですけど、すでに追い詰められていて詐欺を何個も重ねていて、お金がない。

例えば闇金に追い込みをかけられている方もおられましたけど、かなり精神的肉体的に追い詰められている状態になってる人に対して、『最後は一発タタキ(強盗)をやってチャラにしようよ』という形で踏み込んでこられる」

こうした場合、強盗で1億円得たとして「1人1,000万円の報酬」と言われても、現実に1億円を置いている家などあるはずもなく、数十万円程度にしかならない上に、結局逮捕されて処罰されることが多いようです。

特殊詐欺を根本からなくすには、指示している側を捕まえなければなりません。
しかし田崎さんによれば、犯罪組織の構造は重層化の上に複数のピラミッド構造となっていて、さらにやりとりをしている情報が嘘で固められているため、全容の解明は非常に困難だそうです。
(岡本)
 
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2023年05月20日10時29分~抜粋

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