北野誠のズバリ

新型コロナ用の飲み薬「ゾコーバ」、かかりつけ医が処方できない理由

厚生労働省は11月22日、塩野義製薬が開発した国内初の新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」を緊急承認。迅速に審査するために、今年5月に新設された緊急承認制度が初めて適用されました。

11月26日放送の『北野誠のズバリサタデー』(CBCラジオ)では、北野誠がこのゾコーバについて、日本感染症学会理事 愛知医科大学病院 感染症科教授の三鴨廣繁先生にお話を伺いました。

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「緊急承認制度」で承認

ゾコーバが承認されたことについて、「良かったですね、これは朗報です」と三鴨先生。

身体の中に入ったウイルスは、生き残るために人間の身体の中で「RNAウイルス」を複製します。ゾコーバは、この“組み立て”を疎外し、新しいウイルスができるのを防ぐ薬です。

これまでの「特例承認」は、外国で販売されている日本未承認の新薬を、国内での臨床試験を行わずに認めるものでした。

今回適用された「緊急承認」は、本来は3回行う臨床試験を、2回目の「第Ⅱ相」試験までとする制度。2回目の段階で、臨床的に効果があり、安全性がほぼ確認された場合に適用されます。

ゾコーバは、この制度を利用して非常に短い期間で認められた新薬というわけです。

ウイルスによる5つの症状を改善

臨床試験の第Ⅱ相試験で、ウイルスが減ることに加えて、ウイルスによる症状(せき、喉の痛み、鼻水・鼻づまり、けん怠感、発熱・熱っぽさの)の5つの症状を改善することが確認されたため、緊急承認に至りました。

緊急承認制度で承認された薬は「安全性をしっかり確認すること」が求められるため、基本的には医師が必要と判断した患者に処方されます。

「日本の会社が作っている薬なので、供給がスムーズに行われることを期待しています」と三鴨先生。

近日中に、ゾコーバを処方できる病院が出てくるだろうとのことです。

「5類」引き下げへの動き

「発熱外来ではなくて、普通の耳鼻咽喉科でも処方されますか?」と尋ねる北野に、「そこが難しいところです」と三鴨先生。

新型コロナウイルス感染症はいまだ感染症法上の「2類相当」。これが「5類」にならなければ、かかりつけの病院で処方することはできません。

5類への引き下げを検討する動きが、ようやく始まったところです。

新型コロナウイルスでの重症患者の数は、減少傾向にあります。これは、新型コロナウイルスが「普通の風邪に近づいた」「病原性が低下した」ことを意味します。

問題は、次々と登場する「変異株」。変異株が出ると感染力は上がり、病原性は落ちることが一般的ですが、新型コロナウイルスもこのようになってきています。

第8波はピークアウト?

これまでの薬は、基礎疾患がありリスクの高い患者にのみ処方されていました。しかしゾコーバは、基礎疾患のない軽症の患者でも、医師の判断で処方できます。

処方の幅が広がることが、これまでの薬との大きな違いです。

新型コロナウイルス感染症を2類相当から5類へ引き下げるための懸念事項は、現在の「第8波」です。

感染拡大のスピードが鈍ってきているため、専門家からは「そろそろピークアウトを迎える」という指摘も出ています。

それでも「年末年始にかけて人の動きがあるため、ある程度広がる可能性は高い」と三鴨先生。

今後のワクチン接種

政府は感染状況を見ながら5類引き下げの議論を進めるため、第7波の時のように感染者数が多い場合は、簡単に引き下げることはできません。

「感染者がある程度抑制されながら、この薬が出る。『いいじゃないか!5類で』という議論になっていくんじゃないかと思います」と三鴨先生。

それでも5類への引き下げまでには、まだ少し時間がかかりそうということでした。

そしてワクチンについて、「ワクチンは3~4か月は感染予防効果も確実にあります」と三鴨先生。

ワクチンを打っても感染してしまう人はもちろんいるものの、全体で見ればその数は確実に減っているそうです。

「感染状況にもよりますが、これからリスクの高いお仕事の方は今後3~4か月ごとに打っていくことになる。これまでのように国費ではなく、ある程度自己負担があって打っていくことになると予想している」とのことでした。
(minto)
 
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2022年11月26日09時44分~抜粋

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