北野誠のズバリ

世界的不況の懸念も…「中国恒大集団」の問題を解説

9月20日、中国不動産大手「中国恒大集団」が資金繰りの悪化で、社債の債務不履行を起こすのではないかという懸念が強まり、ダウ平均株価が大幅に値下がりしました。

翌21日の日経平均も大幅下落し、世界同時株安の様相を呈しましたが、22日に中国恒大集団のグループ会社が利払いを行うと発表したことで、株価は回復。
ただ、約33兆円の負債を抱えているといわれていて、今後の見通しは不透明です。

今回の騒動はなぜ起きたのか、そして今後、世界経済への影響はあるのでしょうか。

9月25日放送『北野誠のズバリサタデー』は、お休み中の北野にかわり、塩見啓一アナウンサーが担当。

中京大学経済学部客員教授でエコノミストの内田俊宏先生が解説しました。

[この番組の画像一覧を見る]

経営が悪化した原因

今回の問題で初めて中国恒大集団という名前を聞いた方も多いと思いますが、不動産に限らず多角経営を行っているグループ。

AFCチャンピオンズリーグで何度か優勝しているサッカーチームの広州FCを所有し、テーマパーク事業やEVの開発なども手がけています。

その中国恒大集団が、なぜ今経営危機に直面しているのでしょうか。

内田先生「不動産開発業者というのは、だいたいどこも借入金が多いんですけど、多角化をする段階で財務体質が急速に悪化して、社債を大量に発行したり、借り入れも増えていた。

それが今回、政府の人民銀行が不動産会社に対して基準を設けて、急に過剰負債を持つ不動産業者への圧力を強化したことが背景にありますね」

不動産バブルを抑制させるために借入ルールを厳しくした結果、急速に資金繰りが悪化したようです。

内田先生「いずれそういう問題は出るということはあったんですけど、やはり中国としては不動産バブルを何とかしたいということで、基準を大幅に変えて。

3つ指針があるんですけど、恒大集団は2つクリアできていないという状況ですね」
 

日本のバブル崩壊を参考に?

この話を受けて、大川興業の大川豊総裁が「バブル崩壊の時の日本の総量規制に近いんでしょうか?」と質問。

1990年(平成2年)、不動産投資が加熱しバブル経済の行き過ぎを懸念していた政府は、大蔵省から金融機関に対して、不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑えるよう制限。

加熱を抑えるどころか、バブル経済崩壊の一因となりました。

内田先生「総量規制という表現を見ると、日本のバブル崩壊をイメージすると思うんですけど、やはり中国政府も日本のような不動産バブルの崩壊、その後の失われた20年とか、かなり調整局面もありましたので、二の舞は避けたいということがあると思いますね」
 

世界経済への影響は?

ただ、中国恒大集団の巨額な負債はそのままで、今後も債務不履行が発生しないとも限りません。

内田先生「これは恒大集団だけではないんですけれども、資金繰りが悪化している業者は、不動産投資をしている中国国内の富裕層や欧米の投資家への利払いや元本の償還ができなくなる可能性があります。

すでに出ている影響としては、工事会社とか資材会社に恒大からの代金の支払いが滞っているということで、すでに購入済みの消費者にマンションが引き渡されない可能性も出てきます。

そういう意味では中国国内の消費や投資に影響が出てくる可能性が高いと思いますね」

さらに中国のみならず、世界経済に大きな影響はあるのでしょうか。

内田先生「リーマンショックのような世界経済への影響はおそらくないだろうと思うんですが、中国としては不動産バブルを沈静化させたい、いったんバブルを調整したい。

あと、習近平国家主席が打ち出している『共同富裕』という考え方があって、格差社会(の解消に向けて)富裕層にある程度ダメージを与えつつ、それを庶民に分配するという循環の過程に今入ってます。

当然ながら株式市場、金融市場への影響は避けられないと思いますね」
 

中国が掲げているスローガン

内田先生はさらに、「共同富裕」をスローガンに掲げているため、中国恒大集団への救済措置はないのではないかと推測しています。

大川「例えば国有化して、中途半端になった不動産を安く国民に支給するとかということとかないですかね」

内田先生「その可能性はありますね。やはり恒大集団そのものは清算する方向性は高いんですけど、一般庶民であったりマンションを購入している方への影響を軽減する方向への可能性はあります。

富裕層の個人消費が大きく低迷する可能性はあっても、庶民を含めた中国全体の個人消費が大きく落ちるということは、想定しなくても良いと思います」
 

日本の年金への影響は?

ただ、日本として心配なのは、年金の資金の中に中国恒大への投資が約100億円ほど含まれているということ。

これにより、将来、年金の支給額が減るなんてことはないのでしょうか。

内田先生「恒大集団以外の中国の不動産業者も債務不履行の可能性が出てきますし、恒大集団も今回は債務不履行を回避しましたけど、何度か利払いの日があります。

また、同じタイミングで、FRB(アメリカ連邦準備理事会)が段階的な金融緩和の縮小を年内にも開始すると発表しています。

そう意味ではマーケットとしては乱高下しながらも、水準を徐々に切り下げる可能性が高いのかなと思います。

年金も運用していますから、ある程度影響はあると思います」

内田先生は最後に、「リーマンショックの時は中国が支えるんだというレポートが出て、その間に売り抜けている人たちがいましたから。

『大丈夫です』って専門家が言う時は、ちょっと慎重にした方がいいと思います」と語りました。
(岡本)
 
北野誠のズバリ
この記事をで聴く

2021年09月25日09時23分~抜粋

関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報