北野誠のズバリ

短い開発時間に死亡例…ワクチンへの不安に対し、科学的に解説

新型コロナ終息の切り札と期待されてきたワクチンですが、これはウイルス遺伝子の一部を使った、世界初の本格的なメッセンジャーRNAワクチン。

そして、開発期間や治験期間が短かったことや、従来のワクチンと比べて副反応の発生頻度が高かったことから、接種に対し不安の声を挙げる人が少なくありません。

接種者が増えている一方で、7月下旬以降、感染が判明した人数が激増している状況であることから、「ワクチンの効果がないのではないか」という意見も挙がっています。

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ワクチン接種のメリットは?

8月28日放送『北野誠のズバリサタデー』では、『新型コロナワクチン 本当の「真実」』(講談社)の著者で、大阪大学免疫学フロンティア研究センター招聘教授の宮坂昌之先生が、ワクチンの危険性や効果などについて、科学的なエビデンス(証拠・根拠)を元に説明しました。

まずはワクチンを摂取するメリットとデメリットについて、おさらいします。

メリットは、これまでのワクチンと比べて有効性が非常に高いことですが、最近のデルタ株ではやや有効性は落ちているそうです。

ただ、宮坂先生も当初はワクチンに対し、慎重論を唱えていました。

宮坂先生「最初の段階では副反応の程度があまりわかっていなかったので、慎重な態度をとっていました。

その後、2021年1月になってアメリカやイギリスの大規模接種の結果が公表されて、副反応はこれまでのワクチンと大きくは違わないとわかりましたので、私も2回のファイザー製ワクチンの接種を終えています」
 

今までのワクチンと何が違う?

冒頭に「世界初の」本格的なメッセンジャーRNAワクチンと紹介しましたが、インフルエンザなどの従来のワクチンとは、何が違うのでしょうか。

宮坂先生「ウイルス由来の遺伝子の一部を人の体内に注射して、ウイルスのタンパク質を作らせる。

そうすると私たちの免疫は、『ウイルス感染が起きているかもしれない』と勘違いして、免疫を起こす。

ウイルスを入れてるんじゃなくて、ウイルスの遺伝子の一部を入れただけで、良い方に勘違いしてくれる」

メリットの一方で、デメリットとして挙げられるのが、発熱や腕の腫れなどが話題となっている副反応で、特に女性の方によく現れるといわれています。

女性に強く出る原因は現時点では不明ですが、宮坂先生は新型コロナに対する免疫反応が起こる過程での反応であり、ある程度はやむを得ないそうです。
 

接種後の死亡例も

また、ワクチン接種で不安に感じるのは、接種後に死亡したという事例が報告されていることですが、実際に因果関係はあるのでしょうか。

宮坂先生「これを聞いた時は私も心配したんですが、その後調べてみますと、確かにワクチン接種後に亡くなった方がおられます。

でも亡くなった方の数を見ると、同時期にワクチンを受けなかった集団でもほぼ同じだけの数の方が亡くなっているんですね。

打っても打たなくても、だいたい同じ数の死亡者が出ている。

また、亡くなった方の多くが持病を元々持っていた。

隠れ糖尿病とか、隠れ動脈硬化とか。

そういうことが主な原因ですが、ワクチンはゼロリスクではないことは確かなので、非常に頻度は低い、例えば100万人に5人ぐらいアナフィラキシーショックが起きるとか。

なので、体調が悪い時は受けない、副反応がある程度あることを納得して、必要に応じて必要な人が受ける。

接種するかしないかは個人の自由ですので、そこをよく考えて受けることが大事だと思いますね」
 

開発期間が短いから危険?

ただ、この「世界初」、「遺伝子」というフレーズを元に、一部では不安をかき立てる論調も見受けられますが…。

宮坂先生「その方々に遺伝子への理解が十分及んでいなくて。
遺伝子の一部しか打っていませんし、入れた遺伝子は2日ほどで体内から消えてしまいます。

その産物が身体の中でずっと残ったら心配ですけれども、そういうことは起こらないので。
(一部の論調にある)ワクチンが遺伝子ワクチンだから流産するとか、奇形が起こるとか(とは考えていない)」

そのような意見が出る原因の1つに、ワクチンの開発期間が短かったということがあります。

宮坂先生「みなさんは1年ぐらいで開発したワクチンだから、5年、10年先のことはわからないっておっしゃるんですけど、実は10年ぐらいかかってこのワクチンが開発されてるんですよ。

コロナが出たのはわずか1年半前ですが、それより前にがんワクチン、アフリカの熱帯感染症に対するワクチンとして、メッセンジャーRNAワクチンが開発されていて。
その技術を今回使ったために、わずか1年でできたんです。

10年の間に安全性試験はたっぷりやられていて、打ったワクチンが体内に残らない、卵巣や子宮には行かない、行っても残らないということがわかってるんです。

厚労省はもっとハッキリ説明しないといけないと思うんですけどね」
 

ワクチンの効き目は短い?

また、最近のデルタ株に対して効果は落ちているというものの、全く効果がないというわけではありません。

和歌山県の最近のデータによりますと、ワクチンを2回接種した約35万人に対し、感染が判明したのがわずか25人。

もちろん、全員を毎日検査しているわけではないため、無症状で感染している人はいるかもしれませんが、それが10倍としても約1,000人に1人ほどの少なさです。

また、インフルエンザワクチンは半減期が4か月と短いのですが、同じように新型コロナワクチンも効いている期間は短いのでしょうか。

宮坂先生「このワクチンは年齢に依存していて、65歳までの人は6か月から10か月近く持ちます。

ところが65歳を超えて年代が上を行くと、免疫が落ちやすくなりますね。
特に85歳以上は反応がすごく悪いです。

今、3回目を打たなきゃいけないんじゃないかと心配される方がおられるんですけど、それが必要な方は元々免疫が低かった人とか、持病を持っている人が対象になります。

2回打った方は当面大丈夫だと思います」
 

いまだに感染者が増えている理由

現在、コロナ禍の終息が不透明な中、今後どうなっていくのでしょうか。

宮坂先生「日本は予想よりも早くワクチン接種が進んでいて、これが8割ぐらいになると感染者が大幅に減ると思います。

さらに今、抗体カクテルといって新しい治療法が使えると、重症化が7割ぐらい防げますから、ワクチンと抗体カクテルの両方が使えるようになると、感染者も重症者も死者も激減するはずです」

ただ、イスラエルやイギリスなど、すでにワクチンが行き渡っている国でも、まだ感染者が収まっていない状況ですが、これはどういうことでしょうか。

宮坂先生「イギリスやアメリカでも、3~4割ぐらいがまだワクチンをしてないですね。

ただ、気をつけないといけないのは、2回接種した人でもアメリカでは2割ぐらい感染が起きていて、日本の100倍ぐらい起きてるんですね。

それを見てみると、マスクをしてなかったり、野球場やサッカー場をいっぱいにして、そういうところでうつってるんですね。

ということは、ワクチンは完全ではなくて、(ウイルスを)いっぱい浴びれば感染する可能性がある。

でも、日本のようにしっかりマスクをしていたら可能性がグンと減るので、和歌山のように、良くて1,000人に1人ぐらいしか感染しない」

ワクチンを2回接種したら、何も対策をしなくて良い、大勢で騒いでも良いというわけではありません。

これまで通り、マスクや手洗いが必要というわけですね。
(岡本)
 
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2021年08月28日10時31分~抜粋

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