北野誠のズバリ

逆に訴えられる?「パワハラの証拠集め」に隠れて録音する危険性

コンプライアンスが厳しくなり、昔と比べて減ってきたといわれる職場でのパワハラですが、完全に消えたわけではありません。
もしその証明のために、上司の暴言を隠れて録音した場合、裁判で証拠として採用されるのでしょうか?

『北野誠のズバリ』の「ズバリ法律相談室」コーナーでは、法律に関する疑問や相談に対し、オリンピア法律事務所の弁護士が回答。

5月19日の放送では、パワハラの証拠に暴言を録音する際の注意点について、原武之弁護士が解説しました。

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録音データは証拠として使える?

今回取りあげたリスナーからの質問は、以下のとおりです。

「私は今、パワハラを受けています。その証拠を掴んでおきたいと思い、レコーダーを買おうかと迷っています。

ただ、もし仮に証拠として裁判所に録音できたデータを使おうとした際、パワハラ上司が『そんなことは知らない』とシラを切った場合、効力を発揮するものでしょうか」(Aさん)

まず、裁判で使うかどうかの前に、そもそも隠し撮りした音声には、証拠能力があるのでしょうか。

原先生「民事裁判では基本的に証拠は自由なので、自分の会話を録音する限り、盗聴でなければ録音は許されてますね」

自分と上司の会話であれば、相手に録音のお伺いを立てなくても問題ないようですが、ここで北野が引っかかったのは、「民事裁判では」という点。

刑事裁判だと事情が変わるのでしょうか。

原先生「刑事裁判だと録音はあくまでも伝聞なので、伝聞証拠は基本出せないですね。

出してもいいよと同意をもらう時か、その人を証人尋問して弾劾証拠とするか、例外的な場合じゃなきゃ出せないですね」
 

証拠として提出するには

録音データは証拠として使えるということですが、パワハラに関する実際の裁判でも使われているのでしょうか。

原先生「よく使われてますね。録音テープをきちっと反訳(文字起こしをすること)して、録音テープと一緒に提出して、言ったかどうか答えろといって、追い詰めていくというのが訴訟戦術上よくやるんですけど。

でも、切り貼りとか一部だけとか、全部を出せないということになると、前後何を話してたのかなとか気になるので。

悪口を言って怒らせてその部分だけ出すとか、そうなると信用性が非常に低くなる」

音声の証拠は絶対的と思いがちですが、編集などをして悪用されるケースもあるので、撮る側は裁判で疑われないように、まるまる出す必要があるということですね。
 

録音すると逆に訴えられるケースも

ここでおたよりの話に戻りますが、もし上司が「知らない」と言ったらどうなるのでしょうか。

原先生「知らないといっても、ほとんどの場合は自分の声ですし、具体的な話の内容を聞けばその人しかあり得ないので、今まで否定されたことはほぼないですね。

その人の声と場所と固有名詞とか出てくると、その人しかないと」

音声データは動かぬ証拠といったところでしょうか。

昔のように普段からICレコーダーを持ち歩かなくても、今やスマホでもすぐに録音することもできます。

ただ、この風潮が広まると、パワハラではない普通の注意もしにくくなる可能性もありますし、パワハラする側から別の対策を打たれる可能性もあるそうです。

原先生「『この会話は録音禁止』とハッキリ言われた時には、証拠能力が争われる可能性がありますね。

だから3人も4人もいてパワハラの環境もなくて、秘密の話をしようと言っているのに、録音の内容を持ち出したら、それは最初に約束したじゃないですかっていう議論が最近巻き起こってるっていう」

録音する側もなんでも録音するのではなく内容を選ばないと、会社の機密事項をバラしたという理由で、逆に懲戒事項になる可能性もあるようです。
(岡本)
 
北野誠のズバリ
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2021年05月19日14時11分~抜粋

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