北野誠のズバリ

古本に挟まった2通のラブレターが生んだ奇跡とは

古本に前の持ち主の痕跡が残っている本を「痕跡本」というそうです。
そんな痕跡本に残るドラマを求めて、痕跡本を集め続けている人がいます。

8月22日放送の『北野誠のズバリサタデー』では、工作太朗が痕跡本コレクターの古沢和宏さんが経営する古本屋「五っ葉文庫」に潜入取材を行いました。

古本の中でも「傷もの」と思われがちな痕跡本。そこから見えるドラマとは一体どのようなものなのでしょうか。

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造語「痕跡本」の生みの親

「五っ葉文庫」は、犬山城の城下町の大通り沿いにある古書店。
中に入ると、古民家独特の涼しさと黴臭さを感じます。
棚には、文庫や漫画本などの古本がぎっしり。

「痕跡本の定義は?」と尋ねる工作に、「痕跡本って、多分僕が言い出した」と古沢さん。

つまり痕跡本とは、古沢さんが生み出した造語だったのです。

前の持ち主の痕跡が残っている本は、古本の中でも“傷もの”として取り扱われていたもの。

古沢さんは、その痕跡から想像がかきたてられる古本を集めているということです。
 

穴だらけのホラー漫画

「これ見てもらえば一番わかる」と古沢さんが取り出したのは、一冊の漫画本。
ホラータッチの不気味な表紙のその漫画本は、日野日出志さんの「まだらの卵」でした。

「触るとわかる」と言われて工作が恐る恐る触ってみると、なぜか表面がざらざら。
なんと、表面に針をさしたような無数の穴が本の表面にあいているのです。
その穴は、10ページ分ほど貫通しています。

「人が嫌になるような描写が多い」というこの漫画。

「嫌なものを『汚してしまいたい、壊してしまいたい』という思いは本能的に働くもので、無意識にプツプツやったのではないか。もしくは怒りの感情をぶつけたのではないか」と古沢さん。

そんなネガティブな感情を想像しながらこの本を読むと、恐怖心が倍増すると言います。

この本が、古沢さんが痕跡本を集めるきっかけとなった本なんだそう。
 

ただ一冊の例外

痕跡本の中には、メモや、ガス代の領収証が挟まっているなど、個人情報丸出しのものもあります。

「ネットで調べたりしないんですか?」と工作が尋ねると、「調べるんですけど、僕の中でタブーにしてます」と古沢さん。

人となりがわかってしまうと、面白みが減ってしまうこともあります。

そして前の持ち主がわかったとしても、本をその人に返すという野暮なことはしないと言います。

ただ、一冊をのぞいて。

古沢さんが話してくれたのは、8年前に関東の古本屋さんから仕入れた「アンデルセン童話全集」について。

今にも崩れそうな劣化具合、さらに1巻と6巻がない状態のその全集に、ラブレターが2通挟まっていたといいます。

手紙の日付は1952年。

男性が、恋心を抱いていた女性に宛てた手紙でした。
 

本の持ち主現る!

1通目はケンカと仲直りの模様がくみ取れる内容。
10巻の最後に挟まっていた2通目には、「少しでも早く一緒になれることだけを考えてがんばろう」と書かれていました。

手紙には、一緒に本をプレゼントしたという内容も書かれていました。

この手紙を読んで、「このロマンチックな恋愛はうまくいったのか。本当に本をプレゼントしたのか?プレゼントせずにとどまったのかもしれないし、文学好きの男性の妄想かもしれない」と古沢さんの想像は膨らむ一方。

そして古沢さんは、この手紙の存在について人気のテレビ番組で語りました。

このことが話題となりSNSで考察が繰り広げられた結果、なんと本の持ち主だという方から連絡がきたというのです。

関東から犬山までやってきたその方は、手紙を書いた男性の息子さんでした。

年齢は50歳ぐらいの方です。
 

奇跡を引き起こす力

当時東京でサラリーマンをしていたお父さんは、京都の女学生と遠距離恋愛をしていました。
しかし貧乏なお父さんとの交際を、女性の両親は反対。しかしこういった困難を乗り越えて、2人は結婚したのです。

古沢さんが発見したラブレターが育んだ愛は、めでたく実っていました。

すでにお母さんはすでに他界され、お父さんは福祉施設に入居中で詳しい話を聞くことは叶いませんでしたが、思い出のアンデルセン童話全集は、息子さんに渡して喜んでもらったそうです。

「人の想いのこもった物は奇跡を引き起こす力がある」と古沢さん。

古沢さんの痕跡本のコレクションは、現在2,000~3,000冊ほど。

そんな痕跡本に興味のある方は、「五っ葉文庫」を訪れてみてください。
※現在は夏期休暇中、9月5日から営業再開予定です。
(minto)
 
北野誠のズバリ
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2020年08月22日11時07分~抜粋

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