北野誠のズバリ

時速86kmオーバーでも「過失」運転致傷罪判決のナゼ

2018年(平成30年)12月末、三重県津市の国道23号で乗用車とタクシーが衝突し5人が死傷した事故で、6月16日に津地裁で裁判員裁判の判決公判が行われ、被告の元会社社長に対して懲役7年が言い渡されました。

制限速度が時速60kmの一般道にもかかわらず、146kmのスピードで運転していたことで、検察側は危険運転致死傷罪を求めていたのですが、実際にはそれよりも刑罰の軽い過失運転致死傷罪が適用されました。

6月20日放送『北野誠のズバリサタデー』では、ITジャーナリストの井上トシユキがこの判決結果を取りあげ、納得がいかないと激怒。

判決の理由は、どのようなものだったのでしょうか。

[この番組の画像一覧を見る]

事故は予見できなかった?

「危険運転致死傷罪」と「過失運転致死傷罪」の違いについて、井上は「ついうっかりミスしましたというのが過失なんですよね。こういうことが起きるかもしれないなって思ってたという未必の故意や、事故を起こそうという故意であれば危険運転致死傷罪」と解説しました。

今回裁判長が選択したのは「過失運転」ということ。
判決内容について新聞各紙は概要を報じているのに対し、井上は地元紙の伊勢新聞さんに、細かい内容が掲載されていることに注目しました。

あらためて「この判決理由は妥当なのか?」と感じたそうです。

裁判長は、スピード違反により制御が困難だったことは認めながらも、ファミレスや牛丼屋、コンビニなどの駐車場が立ち並ぶ道路の側面から、今回被害に遭われたタクシーが出てきて道路を横断しようとするとは具体的に想定できなかったと指摘。

井上「そらタクシーが12月29日夜10時ぐらいに横の駐車場から出てくる、ということは完璧に予測できへんかもしれんけど、まず(80km以上の)時速オーバーで駐車場があるところから車がひょっと出てこないかなということを想定できないというのはおかしい」

教習場や運転免許更新の教習などで、横から急にこどもが飛び出してくる「かもしれない」、前の車が突然停止する「かもしれない」など、いろんなことを想定しておく「かもしれない運転」を心がけましょうとよく言われますが、これを根底から覆す判決です。
 

運転の常識とかけ離れた判決か?

さらに裁判長は、「路外施設から道路に侵入する車両の存在に殊更注意を払いながら運転する者はまずいない」とも語っているそうです。

井上「これは、プロのドライバーさんにぜひご意見を伺いたいです。注意を払えという指導を公安委員会から受けたことはあるんですけれども、道路運転の関係者で(注意を払う人はいないという話を)聞いたことがないんですよ。

裁判長は免許を持ってないか、自分で車を運転したことがないんじゃないかと思われるわけですよ。裁判官って外で酒を飲まないし、車を運転しないって聞いたことがあります。

というのは、トラブルになったら困るし、事故を起こしたら裁判官が何やってんねんと言われるから。たぶん知らないんですよ。だとすれば、法の運用に関わる人がよく知りも知らないことを根拠なく私見に基づいて『注意を払う人はいない』と裁判員裁判でよく断定したなと」

二審に進むかどうかはまだ不明ですが、このまま判決結果が確定すると、「かもしれない運転は考えなくても良い(もちろん、安全運転のためには必要なことですが)」という考えが誤って広まってしまうかもしれません。

果たして判決結果は変わるのか、今後の行方が気になるところです。
(岡本)
 
北野誠のズバリ
この記事をで聴く

2020年06月20日09時04分~抜粋

関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報