北野誠のズバリ

私立高校の実質無償化が「女性の社会進出」を妨害?

10年前に始まった高校の授業料無償化。
来年には、私立高校に通う学生がいる世帯に対する現行の所得制限の一部が撤廃され、支給額が増える世帯が多くなる一方、仕事をセーブしなければならないかもしれないといった矛盾もあるようです。

10月21日放送の『北野誠のズバリ』「ズバリマネー相談室」では、小宇佐・針田FP事務所のファイナンシャルプランナー・針田真吾さんに、「私立高校の実質無償化」について伺いました。

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高等学校等就学支援制度とは

「今月から始まった幼稚園と保育園の授業料無償化は、小さなこどもを持つ子育て世代が優遇される制度ですね。
一方、我が家のこどもは中学生と小学生ですので、この恩恵は受けられません。ウチのこどもたちでも受けられる制度はあるのでしょうか?
高校の授業料が無償化という話は聞いたことがありますが、よくわかりません、教えてください」(Aさん)

高校の授業料無償化は、「高校無償化法」が制定された2010年、民主党政権時にスタートしました。

これは、年間の財源4,000億円から、高校の授業料のうち原則として年間11万8,800円を国が負担するというものです。

その後の政権交代で当時の制度が問題視され、一部の学校を除外する、所得に制限を設けるなどと改定。

2014年度に「高等学校等就学支援制度」という名称に変更されています。

3段階の所得制限

無償化の対象となっているのは、保護者の市町村民税所得割額と道府県民税所得割額の合算額が50万7,000円未満。
世帯年収でいうと、910万円未満の世帯です。

この制度は、国立・公立・私立、全日・定時・通信、全て含めて、すべての高等学校に在学している人が対象です。

定時制や通信制の場合は、支給額そのものは異なりますが、基本的に学費が無償になる金額が設定されています。

公立の支給額は、月々9900円、年間で11万8800円。
私立は新制度に変わってから、3段階に補助金が分かれるようになっています。

世帯年収が250万未満の世帯には、年間29万7000円。
250万~350万未満の世帯には、年間23万7600円。
350~590万未満の世帯には、年間17万8000円が支給されています。

一般的に公立高校の3倍といわれている私立高校の学費。

所得制限はあるものの、所得に応じて11万8000円の1,5倍~2,5倍の支給を受けられるようになり、旧制度よりはかなり改善されました。

支給額は未決定

ところが、この私立高校に関する制度は、来年4月にさらに改定されることが決定しています。

現行の所得による3段階の区切りがなくなり、支給額が一律となるのです。

針田さんが文科省に問い合わせをしたところ、いまだ具体的な額は決まっておらず、来年1月の予算委員会にて、授業料が無償化になるような金額を設定するという回答がありました。

とはいえ、世帯年収が590万~910万未満の家庭では今までと何も変わらず、支給額は年間11万8800円のみ、910万を超える世帯は引き続き対象外です。

3段階の区切りがなくなるため、世帯年収が590万を下回る家庭にとっては、かなり有利な制度ですが、少しでも超えてしまうと支給額にかなり差が出てしまうため、無理やりにでも590万に抑える必要があります。

世知辛い「世帯年収」

「変だと思うのがね、『働き方改革』とか『副業してもええよ』とか、いろいろ言うてながら、『稼ぎすぎたら学校は支援せぇへんで』とか。なんやこれは?っていう風に思っちゃう」

ITジャーナリスト・井上トシユキは、この制度の矛盾点に納得がいきません。

さらに問題は「世帯年収」というところ。
私立高校の学費の高さを考えると、世帯年収ではなく、夫婦どちらかの年収が高い方で判断してもらいたいといいます。

高校生のいる家庭では、夫婦で働き方の調整が深刻な問題となりそうなこの新制度。

この所得制限が、「女性の社会進出」という謳い文句に逆行する形になってしまうかもしれません。
(minto)
 
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2019年10月21日14時11分~抜粋

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