中高年になると身体の悩みは増えるものですが、頑張りすぎるのは禁物。
7月13日の『北野誠のズバリ』には、57歳男性のAさんから「高血圧の人の筋トレ」について相談が寄せられました。
本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生に北野誠が尋ねます。
脳出血、脳梗塞の危険
「50歳ころから高血圧で、血圧を下げる薬を飲んでいます。私は23歳からベンチプレスを中心とした筋トレをしています。以前この番組で『重いのは止めた方がいい』といわれ、かなりトレーニングのウエイトを落としました。
もうこういうことは止めた方がいいのでしょうか?軽いウエイトで回数をこなすのはいいのでしょうか?」(Aさん)
高血圧の人が筋トレするのはあまりよくない、という話を聞いた北野、この相談について医学的にどうかを吉田先生に尋ねます。
吉田先生「もともと血圧の高い人が、筋肉に力を入れるとその瞬間にさらに血圧が上がって、一瞬でもそれが血管の限界を超えると、脳梗塞、脳出血を起こします。
ただし長い目で見ると、運動の効果で血圧は下がる方向になります。
頑張って運動すると体内で血液が激しく循環する。その刺激で血管の内側から一酸化窒素が分泌され、血管が柔らかくなり血圧が下がります。
つまり筋トレをしている時は血圧が上がって危険。やり終えたら血圧を下げるよい効果が出る、ということです」
血圧を上げないと重いものは持ち上がらない
筋トレも度を超すと、気づかないうちに無呼吸状態を生みます。
吉田先生「筋トレもいろいろありますが、中でも重いものを持ち上げる運動、たとえばベンチプレスのようなトレーニングは特に危険です。
重いものを持ち上げる瞬間、誰でも無意識のうちに息を止めます。それで血圧が上がって力がパワーアップしているんです。
逆にいうと、血圧を上げないと重いものは持ち上げられない、ということです」
特に高齢の方の場合、無理に重いものを持ち上げようとして、脳出血、脳梗塞を起こす方が増えているそうです。
例えば日常生活でも…
吉田先生「家庭で模様替えしている時、タンスや大型テレビを持ち上げようとして脳梗塞を起こすこともあります」
いったいどのようなトレーニングをすればいいんでしょうか?
息を止めないこと
吉田先生「大原則は息を止めないことです。ただ無意識のうちにみなさん息が止まってしまいます。
私がおすすめしているのは、『あ~~~』と声を出し続けて持ち上げる。声を出している限り、息は止まってないです。それが音で自分で確認できます。ちょっと恥ずかしいけど、小さい声でもいいです」
「ウエイトトレーニングを軽めにして、回数を増やすのはどうですか?」と尋ねる北野。
吉田先生「これはいいアイデアです。この場合も息を止めないで、吸ってはいて、吸ってはいてと意識しながら。軽いダンベルを上げたり下げたりは血圧を下げる効果もあります」
さらに北野の「音楽を口ずさみながら」という提案に、「ベストアイデアです!おすすめです」と太鼓判を押す吉田先生。
おすすめの運動は有酸素運動
高血圧の人にとっては、とにかく筋トレより有酸素運動を優先すべきだそうです。
ではおすすめの運動は何でしょう?
吉田先生「特にジョギング、ウォーキングです。この場合は、息が止まるということはないです。しかもゆるやかな運動ですので、血圧が上がりにくい」
しかも長い間、一酸化窒素が血管の内側から出るので、血圧を下げる効果も筋トレより大きいとのこと。
北野「高血圧の人に、これくらいならいいという筋トレは何がありますか?」
吉田先生「少し高血圧気味の方までですけど、スクワット運動がおすすめです。これは下半身の筋肉を鍛えることができます。ベンチプレスのような上半身の筋トレより血圧を下げる効果が大きいというデータが出ています。
全身の筋肉の3分の2が下半身に集中しているので、一酸化窒素をたくさん出てくれます。
小さな筋肉を思い切り使うのではなく、太い大きな筋肉をゆるやかに使うのがいいです」
スポーツドリンクより麦茶
北野「夏場に頑張りすぎる人が多いと思いますが、注意点はありますか?」
この質問に「高血圧の人に限って言うと、スポーツドリンクを飲み過ぎないようにしてください」と答える吉田先生。
多くの場合、スポーツドリンクは塩分と糖分の分子の数を揃えています。水分の多くは大腸までいかないと、十分に吸収されないのですが、スポーツドリンクは、胃を通り過ぎて十二指腸で吸収されるため、吸収がとても早いそうです。
吉田先生「熱中症になりかかっている時とか、運動した後で脱水状態になった時は、スポーツドリンクを飲んでいただきたいです。
しかし、高血圧の人は塩分で血圧をあげるので塩分の入ってない飲み物がいい。おすすめは麦茶です。
ただし、すぐに吸収されないから、運動する1~2時間前から、麦茶を小刻みに飲んでおくのがいいです」
うつ病の危険性も
北野「筋トレはやりすぎると危険、と言いますがなぜですか?」
吉田先生「最近ハーバード大学の研究で『筋トレに励んでいる人はうつ病になる危険性が高い』というデータが出ました。
心の奥底にボディを美しくしたいというナルシストの感情が隠れていて、それでやりすぎて心身とも疲弊してうつ病になってしまう。ほどほどが肝心です」
北野は「50歳を越えて筋トレをやり始める人は、重いウエイトは持たないで、1kgくらいのダンベルを持って歩くとかがいいと思いますね」と、まとめました。
(みず)
CBC
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2019年07月12日14時12分~抜粋