北野誠のズバリ

本当に大丈夫?水道民営化は問題が山積み

本国会での成立が確実視されている法案の1つが、水道法改正案です。与党内でもこの成立に反発する議員もおり、新潟県議会では自民党も「水道民営化を推し進める水道法改正案に反対する意見書」に賛同する事態となっています。

改正内容には「上下水道施設は行政が所有し、運営権は民間に委ねるというコンセッション方式を取る」としていますが、事実上、水道事業を民間に丸投げする内容だという声もあがっています。

また、民営化には外国資本も注目しており、民営化されると水道料金が上がり、高価な水を買わされる懸念もあるそうです。
11月17日放送『北野誠のズバリサタデー』では、水道民営化の問題点について、『日本が売られる』(幻冬舎新書)の著者で、国際ジャーナリストの堤未果さんに北野誠が話を伺いました。

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なぜ今、民営化なのか?

そもそも、なぜ今、水道に民営化の話が出てきたのでしょうか。

堤さんはまず今回の法改正の内容について、「今までも浄水場の管理や検診サービスは日本で一部委託していましたが、運営の最終決定権は自治体が持ってたんです。ところが今回の改正案では、運営の最終決定権はまとめて民間が握れるようにしましょうと」と説明。

そして、民営化の背景については、「政府のロジックは、高度成長期に作った水道管が耐用年数を超えて劣化してきて、直さなきゃいけないけど、自治体によっては財源がないと。
民営化にして効率を上げればコストが下がるし、民間のノウハウを使ってサービスも上がるだろうというロジックで、民営化を進めようと改正案を出してきたんです」と解説しました。

日本で民営化といえば、JRやNTTなどの前例で「経営の効率化が図られる」「サービスが向上する」といった良いイメージが強く、それなら水道も民営化していけば良いのではないかと思いそうですが、堤さんは民営化の良くない点について指摘します。
 

日本の水道は世界トップクラス

北野「水は大事なものじゃないですか。自治体に財源がないとかじゃなくて、国をあげて守らなければならないものじゃないですか」

堤さん「そうなんです。民営化して例えばハイテクになってサービスも良くなるというところはあるんですけど、民営化を "ビジネス化"という言葉に置き換えると、利益を出さなきゃいけないということですよね。
水はライフラインで命にかかわるので、採算を度外視しても安定供給するとか、水質を安全なままにしてきれいに維持するとか、そっちの方が優先されなきゃいけないものなんですね。
なので、安易にビジネスにしたらいけないんです」

いつでも蛇口をひねれば安定的に高品質の水が提供される日本の水道は、世界でもトップレベルと言えます。

ただ、これは今まで日本では水道が公共資産の位置づけだったから実現できていたことであって、民営化が進むと今までのようには行かない可能性があるそうです。
 

海外でも水道民営化に問題が

世界各国でも自治体にお金がないという理由で水道の民営化は行われてきましたが、さまざまな問題が発生しているそうです。

イギリスでは当初、利益を水道管の補修に回すと言っていた企業が、利益が出ていないように見せかけるために、利益をタックスヘイブン(租税回避地)に移して表向き赤字にすることで、「水道管は直せないし、法人税も払えない」と主張していたそうです。

しかし、その企業の決算に対して市民は文句が言えない上に、企業の経営実態を見せてくれと請求しても、企業秘密を理由に断わられてしまい、結局、水道料金は上がるが、経営の中身はわからないということになってしまいます。
 

外資が注目する理由は?

大阪市は今年の6月から市内の水道検針と料金の徴収業務をフランスの企業に委託しており、松山市は2012年からフランスの企業に委託していますが、これらはまだ運営権自体は渡していません。

なぜ外資が日本の水道事業に注目しているのでしょうか。

堤さんは「外資が入ってきているのは、世界全体で水が不足しており、水の奪い合いになっていますし、命にかかわることなので高く値段が付きやすい。しかも、日本の水道料金は徴収率が99%で注目されていたんです。
しかし、日本は自然災害が多すぎてしょっちゅう水道管が破裂するので、修理代まで請け負ってたらコストパフォーマンスが悪くて商売にならないということで、外資は入ってこなかった。
ところが、今回の改正案では災害が起きた時の責任は自治体が負担する、料金は届出さえあればいくらでも上げられます、運営権は全部企業にあげますと」と説明しました。

リスクがなくなった分、企業にとってはおいしい案件になったと言えますが、自治体や住民にとっては不利なようにも見えます。
私達の生活を脅かすかも知れない改正案なので、本来は日本国民全員が知るべきですが、あまり報道されていません。

今年の7月に衆議院で法案が通った時は、ちょうどオウム実行犯の死刑のニュースと重なり、あまり注目されなかったそうです。

民営化と言っても競争原理が働くわけではないので、サービス向上や料金の値下げは期待できないですし、今年の台風や地震の例を引くまでもなく、災害が発生した場合に、儲からないからという理由で対応が後回しになる可能性があります。

政府はこの改正案を今年中に成立させたいようですが、今からでも法案の内容や成立の行方に注目した方が良さそうです。
(岡本)
 
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2018年11月17日09時43分~抜粋

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